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1-3

「ゴメンナサイ」を貫く彼は可愛いと思う。

 何故か頑なに父親を名乗ることを否定する空。


 正気に戻った巧牙に、今度はお前が黙る番だと言わんばかりに頰を摘まれ(つねられ?)ていた。手首の件の仕返しの意図もあるのかもしれない。

 心底嫌そうに顔を顰める少年に、自称おにーさんはからからと乾いた笑い声をあげている。


「お父さんのこと嫌いなのか?」

「……キライジャナイ……」

「ハハ、ですってよ。良かったですねえ。じゃあ通ってどうぞ」


 それに驚いたのは絶賛つままれ中の彼だ。

「名前だけで良いんですか、わざわざこんな大規模な関門があるのに」

 それにニヤリと、おにーさんは笑う。

 さっきから笑ってばかりの愉快な人だ、最初の草臥れはどこへ行ったのだろう。

 巧牙は息子のほっぺからようやく手を離し、とにかく不思議そうにしている。


「うちには早描きの奴が何人かいるんだ。ほら、ボクもご覧」

 そう言って後ろから受け取ったのは、紙が一枚。

 それをひらりと空の前に突き出した。


「……!」

 そこには確かに、不満そうな空の顔がそっくりそのまま描かれている!

 まるで景色を切り取ったような、写し取ったような。そんな現実と見間違えるほどの高度な絵が、ものの数分で描かれていた。


 絶句する空。

 緑髪と、何かを察した赤髪は互いに顔を見合わせニヤニヤと笑う。


「これがあれば、名前と街に入った日時だけでも十分だろう?」

「は、はい……」

「ハハハ、そこまで驚いてくれておにーさん嬉しいなぁ! はいオマケ」

「何ですか、これ?」

「お菓子だよ、じゃあまたいつか会おうね! ハイ次の方〜」


 様々な色に溢れる人の波に流されながら、二人は塀で囲まれた城下町へと押しこまれていく。


 流され続けたまま、赤髪の自称父親はそれはそれは楽しそうにネタばらしを始めた。


「おい空、お前騙されたんだぞ?」

「……?」

「早描きって下りな、あれ本当に描いてるわけじゃないんだよ」

「……え?」

「世界の色をそのまま写し取る魔法があってだな、それを使えばあんなのチョチョイのチョイよ!」

「へ、え……」

 少し残念そうにする空の頭を、優しくぽんぽんと叩く巧牙。


「お前、意外と知らないこと多そうだな? 安心しなさい、それは俺が教えますから! ……あ、あと知ってるだろうけど嘘は良くないぞ! 人の手首をうっ血するほど強く掴むのもだ!」

 まるで怪談に出てくるような、手の形がはっきりとわかるほど真っ赤になっている手首を見せつけ叱る巧牙。


「……私はあなたの息子じゃない。ゴメンナサイ」

 それに淡々と反撃する空。


「……うん。それは嘘ついてごめんなさい。……あんな森がどうとかくだらない事で熱くならなきゃもっと早く入れたかなー」

「うーん、それはどうだろうね」

 そう言いながら、手の中で先程カラフルな包み紙のお菓子を転がす空。


「きっと何かの理由で止められたと思うよ」

「……? 何で? あとそれ、人混みの中で落とす前に食っちまえよ?」

 その「食っちまえ」の言葉を聞いた瞬間。わざとらしく広げられた手から、お菓子が地面に落ちる。


「あ、落としちゃった」

「いや拾いな?」

「いや」

 微塵も惜しいとは思っていない顔で、少年は人の流れのままに包み紙ごとお菓子を踏みつけた。軽い音を立てて潰れ、土に汚れる包装。


「屈んで止まると歩く人の邪魔になるから……惜しいけど諦めるね」


 三度目の困惑に、今度こそ無言になってしまった巧牙。

 なんなんだ? 目の前の少年の行動が、全く理解できない。


「そう言えば、ボウケンシャなる職業があるらしいね。身元不明で出来るなんて雑で良いなあ。私はそれになろうかと思ってるんだけど、コーガはどう?」

 話をそらす様に、やけに明るく張った声で空が口にする。


「え、あ、うん。良いんじゃないか? ん? お、俺達実質一文無しだし。着の身着のまま、今がいつなのかもよくわからん。俺達の事を知っている人も居ないだろうし……子供でもなれるのか?」

「さあ。あそこから見えたから取り敢えずこの街に来ちゃったけど……こんな怪しすぎる人間二人を、顔を描き留めておくだけで街に入れちゃって良いのかな」


「え、さあ……? あの、何でお菓子……」

「さあ? 何でだと思う?」


空はハイライト無しの瞳イメージなんですよね。ハイライトのない無気力「そう」な顔をした少年ってカッコよくて可愛いと思います。

対して巧牙さんは全体的にキラキラしてる。生きてるの楽し「そう」な顔してれば良いなあ。


出てくる男どもが軒並み長髪で泣けてきますね。と言うか今は男しか出てませんね。……ハハ……おかしいな……。

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