ドッペルゲンガーとは
テレパシー
思った事を伝える力
瞬間移動
一瞬のうちに移動する力
翌日の早朝、空は小野の家の玄関を遠くから見張っていた。空の目で、2人目の小野 小町を確認した。
一度携帯電話の画面を見て、陣の指令をチェックする。
学校内で、小野の肩についたゴミを取る振りをして、質量がある事を確かめた。
その時、物凄い目で睨まれた為、この日の調査を終了した。
陣の家
フランと小町、2人は打ち解けている様子で、ソファに寝転びながらテレビゲームをしていた。
「ただいまー。」
「おかえりー。」
フランと小町はテレビから目を離さなかった。
ゲームに混じりながら、空は学校での出来事を話した。
しかし、陣から話を聞いていた2人の反応はイマイチだった。
罰ゲーム有りの勝負で、フランと空は容赦なく小町を葬った。
「普通ゲームの持ち主って、手を抜かない?」小町の主張。
「手を抜いて良い勝負なんて、この世界にはないね。」空の言い分。
「いや、あるでしょ。この鬼!」小町の雑言。
「なんと呼ばれても、構わないね。さぁ早く罰ゲームを実行しろぉ!!」空の悪望。
「流石に、本物の鬼が言うと一味違うね。」フランのどうでも良い感想。
しかし、空の鬼畜っぷりにフランもご満悦。
「小町ちゃん。」
フランが呼びかける。
「まさか、ゴネれば罰ゲームしなくて済むとか思ってないよね?さぁ、早くお着替えしておいでよ。」
フランは冷たく笑う。
ちなみに、陣はお料理中である。
異罪の特定には、2日を必要とした。
細かい方法や詳細な状況説明は省くとして、フランの協力無くしては、上手くいかなかっただろう。
もちろん、出来る限りの事は、空が行なった。
出来なかった部分、失敗した部分だけをフランが行なったのだから。
1...遺伝子が同じである事を確認する為、髪の毛を採取。
2...深夜0時、姿を確認。
3...記憶の欠落ないか確認。
4...身体能力は高くないか。
5...痛覚は、オリジナルともう1人の小野で、共有していないか、
などなど。
空達の調査により、小町の異罪は『ドッペルゲンガー』と判明した。
正しくは、ほぼ特定した。
一応は、DNAの結果を待つそうだ。
それでもって勉強会が開かれた。
「ドッペルゲンガーとは、もう1人の自分が現れる現象の一種だ。主な発現原因は『心の否定』。
『自分の嫌な部分を切り離したいと暗に考えた場合に発現する可能性がある』
ドッペルゲンガーは、自分の体から抜き出るように現れる。
現れた瞬間は半透明で質量を持たないが、半日から1日ほどで、実体を持つようになる。
特徴は、
・オリジナルとドッペルゲンガーの外見に違いはない。
・身体能力がオリジナルの数倍ある。
・ドッペルゲンガーは記憶の一部が欠落している。
・ドッペルゲンガーはオリジナルの心が生み出している。
・ドッペルゲンガーがオリジナルの身体から出現する度、心の一部がオリジナルから欠落する。
・ドッペルゲンガーが出現してから、動き始めるまで、数時間を必要とする。
・その間、半透明状態で、触れる事はできない。
・ドッペルゲンガーをオリジナルが完璧にコントロールする事は出来ない。
・ドッペルゲンガーは、発現した瞬間から、別の人格を有し、記憶、痛覚、感情等の一切をオリジナルと共有していない。
・オリジナルが死ぬと、ドッペルゲンガーも消失する。
・ドッペルゲンガーがオリジナルに殺される以外の死に方をすると、オリジナルも死亡する。
・ドッペルゲンガーが4人まで増えると、オリジナルは衰弱し始め、死亡する。
・ドッペルゲンガーがドッペルゲンガーに殺された場合、オリジナルに影響はない。」
などなど。
「小野くんを救済する方法は3つある。
1つ目、ドッペルゲンガーを放置し、瞑想する。
小野君が正しくドッペルゲンガーを理解した時、ドッペルゲンガーは姿を消すと言われている。
成功例の報告数は、多くはない。
ただ、時間が必要になるけど、ドッペルに近づく必要がない分、小野くんのように暴力的なドッペル相手ならば有効な手段ではある。
リスクもある。
この手段は、時間が必要になる。
その間、ドッペルゲンガーが死亡した場合、オリジナルも死んでしまう。
さらにドッペルゲンガーは、その後も増える可能性がある。
増えたドッペルゲンガーが今回のように危険かは、分からない。
だけど問題はそこではない。
ドッペルゲンガーが4人になると、オリジナルも死ぬ。」
「2つ目、オリジナルがドッペルゲンガーを殺す。
矛盾しているように思えるかもしれないが、オリジナルがドッペルゲンガーを殺した場合、オリジナルが死ぬ事はない。嘘か誠かドッペルゲンガーになった心の一部は永遠に消滅すると言われてる。
リスクは当然、反撃される事。」
「3つ目、ドッペルゲンガーと会話をする。
お互いに打ち解け合う事で、ドッペルゲンガーはオリジナルに戻るとされている。」
「どれがいいんでしょうか?」
「小野君の好きな方法を選択すると良い。どれでも、対応は出来るよ。例え、対話を選んだとしても、小野君が殺される事はないと保証するよ。僕とフラン、空くんが小野くんの盾になるからね。
瞑想は、失敗例も多い。ドッペルゲンガーの数が増え、焦る気持ちだけが、先行してしまう様子が文献の中に見られる。でも、解決方法としては、正しい。そう思う。
殺す事も、難しくはない。僕がドッペルゲンガーを押さえつけるから、最後のとどめを刺すだけで良い。小野くんの心の持ちよう次第だけどね。」