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異罪との遭遇。

異罪百科事典

異罪の種類や救済方法の記載がある。

併せて読みたい本としては、『異罪レポート』、『異罪伝記』。

今は電子化されている為、紙での発行がされていない。


上田 一/28歳 救済者

異罪『麻痺』の救済者。対テロリストの任務を主にしている。

麻痺を上手く使いこなしており、痛覚、疲労を麻痺させる事で、

長期の任務もミスなく実行する。


空はビルの合間を走り抜ける。

ビルが乱雑に建ち並んでおり、見通しの良くない路地の先に、小野の姿は見えない。

出遅れた時間は1分程度。小野 小町との距離は200mと考えるのが妥当だろうか。

本来なら見失ってしまう距離ではあるが、今回ばかりは問題なさそうである。

小野の足から出血した血が、所々に落ちている。

『氷鬼』の異罪は、身体能力を向上させる。視力、聴力、筋力の全てが常人とは比較にならない。

100m15秒のペースで後を追っていた。1分後、血の跡は袋小路で、途切れていた。

路地裏を壁まで進むと、血の跡が途切れている。

一箇所に血が数滴落ちている事から、立ち止まったのだと推察する。


《行き止まりで、止血した?》


止血するメリットは、たくさんある。が当然デメリットもある。

小野は、ここでどうするべきか悩んだのだろう。

ついでに言うと、空も小町を追い掛ける手段を失ったので悩んでいる。

「思春期だから、悩むのが仕事。」

ツッコミがいないと虚しいだけだった。

小町を保護する為に、黙々と行き先を思案する。


ビルの裏口。鍵が閉まっている。


横に割れた窓ガラス。中には女学生のローファーが二足ある。

偽装の為に窓ガラスを割って、ローファーを投げ入れたのだろう。

《窓ガラスの割れている面積が小さい。》

目の前にある窓ガラスの割れた大きさだと、穴から手を突っ込んでも、ドアノブに触れる事も出来ない。

鍵を閉める事も出来ないだろう。

気が動転すれば無駄な偽装をする事もある。

空は周囲を見渡す。


『隠れようと思えば数人が入れるようなゴミ置き場。』、

『潰していない洗濯機の段ボール』、

『人1人が入れそうな業務用冷凍庫』、


ゴミ置き場の蓋をあける。


次に段ボールの中を確認する。


残るは冷凍庫。



誰も入っていなかった。空はもう一度考える。



『マンホール』人が簡単に持ち上げられる重量ではない。

周囲は高いビルの壁、『人が壁をすり抜けたり』『空を飛んだり』が出来ない限り、他に逃走経路は出来ないだろう。


割れた窓ガラスの横にある扉に手をかける。先程確認したが、鍵が掛かっている。


空は、深呼吸して息を吐いた。

「ずさんな偽装と侮った事は、訂正しなきゃいけないかな。」

限られた時間内で、最大の偽装であったと思う。


人は可能性の選択肢から、一度除外してしまうと、中々再考しない。


《もしも、この扉の鍵が掛かっておらず、最初は開いていたとしたら?》


彼女がビルの中に入り、鍵を内側から閉める事で、『今』と同じ状態になるのではないか。


空はドアノブを握りしめると、ゆっくりと力を込めて鍵が閉まったままの扉を開けた。

扉が開いた瞬間に、少し音がして鍵が壊れた事がわかった。住居不法侵入とかお堅い事は、捨ておこう。



ビルの中。剥がれた壁紙。さらに奥へと進む。インフォメーション、エレベーター、ソファやテレビ、ロビーに出た。侵入した入り口は、裏口だったようだ。目の前にある自動ドアは、シャッターが閉まっているが、正面玄関なのだろう。雰囲気から察するに、元々はホテルだった様だ。


正面玄関から出ようとすると、音を立てることになる。つまり、正面玄関から出て行った様子はない。


ならば、《上の階に移動したのだろうか。》


可能性は十分にある。


ホテルの廊下に血の跡がないことから、やはりあの路地で止血をしたと考えられる。


小野が上の階に逃げていた場合:空が一階の捜索に時間を掛けると、見失う可能性がある。壁を伝って降りる事や、隣接するビルに移ることがあるかも。


小野が一階に隠れている場:空が上の階を捜索している間、その隙に裏口ビルから逃げてしまうかもしれない。


小野を保護する事が目的なのに、変に追い詰めてしまい怪我をされても困る。

空は小野の無茶をするリスクを考慮しなければならなかった。


『氷の壁で裏口への通路を塞ぐ。』


呼びかければ、答えてくれるだろうか。

それとも余計に逃げられてしまうだろうか。


三階に上り、扉を開ける。

部屋にあったロッカーを倒し、大きな音を立てる。

ついでにもう一つ倒すと、空は急いで廊下に飛び出した。

そのまま手すりを飛び越えて、吹き抜けから落ちて、一階に着地した。


本来なら花瓶を置くスペースなどに使われる壁を凹ませた場所に小野は、隠れていたようだ。

凹みはポスターによって上手く隠されていた。

凹みが最初からあると知らなければ、探すのは困難だろうと思う。


突然小町の目の前に人が現れた。

「だれ?」

小町は人がいる事に、一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに平静を装い、質問をした。

「久田 空。小野さんと同じ学校で、隣のクラス。怪我してる様子だったから心配でさ。」

足の傷には布が巻かれている。血は染みているが、適切に止血はされているようだった。


疑いの目を向けられる。学生証は制服のポケットに収まっているので持ち合わせてはいない。

証明出来る物がないので、生徒でなければ知らない事を彼女に伝える事にした。

「お昼の購買で売ってるパンを楽々ゲットする方法は、職員用下駄箱の中にお金と欲しいパンをメモに書いて置いておくとおばちゃんがパンを入れてくれる。右下は、自分が使ってるから、左上なら空いてる。矢澤先生は、実はカツラ。佐野先生は、隠れて屋上でタバコを吸っている。1週間前に校長室の窓ガラスを割ったのは野球部。」小町の信頼を勝ち取る事が出来た空は、ようやく安堵した。

と同時に彼女は、そわそわし始めた。

誰かに追われているのなら、少しでも遠くに行きたいはず。当然の仕草。

だから問う。「誰から逃げてるの?」

「変な奴に襲われたの。」

嘘ではないが、真実を話そうとしていない。そんな風に思えた。

小野は裏口へ向かう事に抵抗があるのか、正面玄関のシャッターを開けようとする。

「家まで送るよ?」そう言いながら、手伝う。

「必要ないです。」優しさに対して、冷たい言葉で返答される。

「震えてる人を放ってはおけないよ。」ここは適当だ。

「震えてないですし、弱そうな貴方では、頼りになりません。」


ぞろぞろと廊下から、不良少年、、、否!成人した方達ヤクザさんが姿を現した。

驚くべき程に、良いタイミングで現れる者達である。

「あの人達?」

極めて、スタンダードな質問をする。

「違います。」

キッパリと否定される。

《実力を見せるには、良いデモンストレーションになりそうだ。》「私を置いて、逃げて!とかはないの?」だが小野の返事は物足りない。「?」不良達は廊下から出てきた。

逃げる方向、誰もいない裏口方向へと、小町は逃げない。

彼女を追っている人物は、目の前の脅威より上なのだと分かる。震える彼女の手を握る勇気はないから、せめて目の前にある原因を取り除こう。



二歩前に進む。

負ける気は、全くしない。相手が異罪を使用する可能性はゼロではない。予想外の事態も起こるかもしれない。フランなら、『それは、宝くじで4等が当たる確率と同じ』とテキトーな事を言うだろう。

《フランの理屈が正しければ、5等しか当たった事ない俺は異罪に出会う事はない。つまり負ける事はない!》

怖い輩の中に、異罪使いが混じっている事もなかった。不良達は地面に寝転んでいる。

「あなた何者?」小野 小町は、驚きの表情で現実を見る。

「用心棒としての価値はあるだろ?」空は力強くボディビルのポーズを取るが、小野にスルーされる。

小町は数秒考え込んだ。「いいわ。話すから、場所を変えましょう。」

外に出ようとする小野の腕を掴む。「病院に行かないと。」

「刃キズは、警察行きでしょ?警察行ったら、死ぬかもよ?」

小野は半笑いで、空の腕を振り解く。怖い。。

「あのぉ、小野さん、もしよろしければ、その辺りだけでも、説明してもらえると。」

「よくありがちなやつね。追ってきているやつの知り合いに警察官がいる。」

、、、確かに良くあるけど、それは小説の中でしか聞かないフレーズです。

しかしまぁ、「まぁ、その辺りなら問題ないよ。」

知人に警察官がいる程度、問題にはならない。


絶対に情報が漏れない病院がある事を空は知っている。

『異罪管理本部直下の病院』

そこでは、いちいち警察に話をしたりはしない。

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