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女騎士「そもそも原付とは何だ?」

 さて、前回の翌日のことです。


 道雄は仕事を終え、コンビニで購入したビール、それにタバコなどが入ったビニール袋を傍らに、カップラーメンのお湯を沸かしています。2日続いてカップラーメンなんて、健康状態が心配ですね。


 道雄の前には、現代のラフな格好をしたレヴィが正座をし、道雄をまっすぐ向いています。


「今更と言うか、そもそもの話、原付とはなんだ」


「初っ端から説明しにくそうな質問だな」


 現代の人ならば、原付と言われれば、少し足の遅いバイクとイメージが付くでしょう。


 しかし、レヴィは異世界からやって来た女騎士です。移動と言えば馬車くらいしか知らないでしょう。


「原付とは、原動付自転車の略。まぁ、排気量が50cc以下の乗り物で、元は自転車にエンジンを搭載したものだったが、改良を重ねることで、今の姿になった」


「??」


 まぁ、これは道雄君の説明が悪いですね。


 そもそも、レヴィは『排気量』とか『自転車』とか『エンジン』という言葉を知らないようです。


 仕方ないので、道雄はマンションの駐輪場に停めてある自転車や原付などをレヴィに紹介します。


「なるほど。自転車というのはペダルに力を加えた直線運動をギヤによって回転運動に変換する乗り物。そして、原付は力を加えることなく、乗り物自身が自動でタイヤを回転させる乗り物なのか。ふむふむ。まるで魔法のようだ」


「物分かりが良いな」


 見学を終え、部屋に戻った道雄は感心をします。  


レヴィ、わりと呑み込みが良いらしい。


「ちなみに、この原付を運転するには、免許を習得する必要がある」


「免許……。つまり、試験を経て、操作するに実力が充足かを見極めるのだな。……なるほど、この原付という乗り物、なかなかにじゃじゃ馬と見える」


「いや、原付自体はそこまで難しい操作は要求されないよ。というか、試験も筆記だけで、原付に乗らないし」


「なんと!? それでは、何をテストするんだ!?」


「道路交通法と言って、道路を原付で走るときのルールがちゃんとわかっているかをテストされる」


 道雄君は原付の試験がないと言いましたが、しかし筆記の試験がクリアしたからと言って、そのまま道路には出れません。


 試験ではありませんが、試験合格後に1時間程度の教習を受ける必要があります。


 ちなみに、筆者が初めて原付の試験を受けたとき、アクセルを大きく引きすぎて、教官をひき殺しかけたことがあります。あの時の、教官がギョッと驚いた顔がおかしくて忘れられませんね。


「なるほど、確かに、国民が1人1台の原付が持てる世界ならば、秩序のためにさまざまなルールがあっても不思議でない。では、そのルールさえ頭に入れれば、私は原付を運転できるんだな?」


「まぁ、視力と色彩、それに運動能力を簡単に検査されることになる」


「視力に……色彩? 運動能力なら自信があるぞ!」


「うん。じゃあ、テストしようか」


 道雄はレヴィから少し離れ、片手の指を3本立てます。


「何本に見える?」


「3本に決まっている」


 道雄は適当に拾ったいくつかのクリアファイルをレヴィに見せます。


「じゃあ、これは何色?」


「赤色」


「これは?」


「青」


「これは?」


「黄色」


「うん。よろしい。次は、手を出して、グーパーグーパーと指を動かして」


「こうか?」


 レヴィは戸惑いつつも、道雄の指示通りに手を動かしました。


「よし、適性検査終わり」


「こ、これだけか!? 呆気なさすぎるわ!」


「原付の免許なんて、普通の人なら一週間も勉強すれば取れるコンパクトな試験だからな」

 

 ここで1つ、補足させていただきます。


 一般人が免許を取る場合はそうなのですが、この女騎士レヴィには戸籍がありません。なので、受験に必要な書類が揃えられない、という大きな問題があります。


 受験に必要な書類などがどのようなものか、は後々に詳しい説明をするつもりですが、簡単に言えば以下のものになります。



①住民票と本人と確認できる書類(パスポートや学生証で大丈夫です)

②証明写真。縦30mm×横24mmで、まぁ試験場にカメラが設置してあるので、それを使っても構いません。

③運転免許申請書。運転免許試験場で受け取ります。金取られます。

④受験料や印鑑など


 だいたい、これらで十分だと思います。この場面では軽く触れただけなので、受験料の合計や当日の流れはまた後日に。そして、ここだけの情報をうのみにせず、試験場のホームページなどで確認してください。


 そして、レヴィは戸籍がなんとかなったと仮定します。


 見た目は外人のようですが、日本人として、本名は山田良子とします。年齢も21歳として、受験資格を持っていることになります。


「わかった。それならば、残すは試験だけとなるな」


「うん。とりあえず、明日にでも参考書来るから、勉強は明日からだ。ていうか、信号機の概念すら知らない奴が、一から道路交通法を勉強して、免許を習得するのって、どれくらい大変なんだろ」


「知らないことばかりだが、どうかご教授をお願いしたい。メグリ姫から直接渡された命、いくらの苦難があろうと、血を燃やしてでも達成せなければならない」


「うん。まぁどうせキミ、しばらくニートするだろうし、時間だけは有り余っているよな」


 悲しいですね。


 いくら威勢が良くても、今のレヴィはただのごく潰し。一応は、勉強をするという建前があるので、正確に言えばニートではありませんが、しかしそれでもかつて戦場を走り抜けた人間軍の第一隊長にして高潔だと思っているフィット=レヴィは無職の厄介者なわけです。


「ちなみに、あの原付という乗りものは、どんな魔法で動いているのだ?」


「うん。魔法と言うか、簡単な原理なら説明ができる。お前にでもイメージしやすい言葉から言わせてもらえば、爆発によって動いているんだ」


「ば、爆発だと!?」


 レヴィは目を丸くして驚きます。


 まぁ、戦馬鹿のレヴィにとって、爆発と言えば建物を破壊する規模と思うでしょう。


「シリンダ、という筒の中に燃料と空気を混ぜた気体を注入する。そして筒にあるピストンで混合気を圧縮し、プラグで発火する。すると、爆発によってピストンが押し出され、それが直線運動となる。その直線運動を、クランクという部分で回転運動にする。それが軸を伝っていき、最後にはタイヤの回転になる。というのが、一般的なエンジンを搭載した自動車の仕組みだ」


「うーむ。少々難解な言葉が出たが、つまり、『爆発によって強い力が出る→それを回転運動に→それをタイヤまで伝える』だな」


「うん。それくらいの感覚で十分だな。ちなみに、メーグに説明したときは、早口で言うんじゃねーよオタクって言われたな」


「ふむ。つまり、オタクとは前の世界でいう賢者や魔法使いみたいなものか」


「まったくもって間違っていない。メタ的にも」


「しかし、爆発で動力を得ているということは、つまり、シリンダという部分は傷つかないのか?」


「良い質問をするなぁ。実際、爆発は1秒間に10~100はすることになるかな。シリンダの数を増やせば、もっとしていることになる。それにより、エンジン部分は、1000度以上の高熱に」


「せ、1000度……」


「ま、それでもシリンダ内の金属に層を作ったりして、いろいろ工夫しつつ、熱を外に出さないようにしている。エンジンオイルも潤滑だけじゃなくて冷却を助けているって聞いたな。この辺はあんまり詳しくないんだけど」


「と、とにかく、高度な魔法技術が発達した世界なのだな……」


「うん。面倒くさいからそう思ってて良いよ」




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