その後1
ビリビリビリ……ビリビリビリ……。
紙を破る音。
この日、何度これを聞いただろう。
いい加減嫌気が差してきた。
ため息をつく。
その目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「いい加減元気になりなって……。」
雨乃がため息をつく。
その顔と声は、呆れているようだった。
「無理ですよぉ……。せっかく……せっかく人生でこんなに一生懸命にやれることを見つけたのに……。」
しょんぼり。
目に見えて落ち込んでいる紅葉。
「こんなこと一生懸命にならなくても良いから……。ね?」
ぐうの音もでない正論。
「……。」
無言の紅葉であった。
「……でも嬉しいよ。」
「え、先輩……。後輩が悲しんでるのを見て喜ぶような人だったんですか……。」
依然涙目ではあった。
しかしそれはジトッとしたものに変わり、話し相手である人物に視線が向けられた。
「違うよ!そんな悪趣味じゃないもん!……ほら、天江さんのこと諦めれたんでしょ?」
「諦めれた……?そんなわけないじゃないですか!」
立ち上がる。
声を荒らげ興奮気味な様子。
「え!?」
思ってもいなかった返答に驚く雨乃。
「隙があればいつでも奪ってやりますよ!」
恐らく無理だ。
それは雨乃だけでなく、口にした本人もそう思っているだろう。
しかし、そう言うしかなかった。
そうでなければこの空気を打開できないそう考えたのだ。
「ま、まぁ……頑張って……。」
「何言ってるんですか!」
「えっ?」
ぽん。
雨乃の肩を叩く。
そして、にっこりと微笑んだ。
これはまずい。
嫌な予感のする雨乃。
しかし、そう感じ取った時にはもう遅かった。
「……姫川先輩も一緒に二人の邪魔するんですよ。」
やはりか。
悪魔の誘い。
「はいはい、分かったよ。」
苦笑いの雨乃。
もちろん、そんなことはしない。
それに、恐らく今さら二人の間を邪魔したところで無意味だろう。
彼女はただ心の拠り所が欲しいだけなのだろう。
ならば、こう言うしかない。
友達なのだ。
そう簡単には見放せない。
「全くしょうがないなぁ……。」
ぽつり。
苦笑いで呟く雨乃であった。




