27ー1
数ヶ月後。
どんより。
一際ネガティブな空気が漂っている場所があった。
皆、そこには近づきたくないのか、空間が出来ていた。
今日、何度目か分からないため息をつく紅葉。
そこの中心にいたのはそんな彼女であった。
「……まぁまぁ。」
彼女のことを宥めるような言葉。
それは、近くに立っている唯一の人物である雨乃のものであった。
週末の午前。
二人は今、ショッピングモールに来ていた。
四人で遊ぶ予定だったのだ。
その為、彼女らは残りの二人を待っている。
「でも先輩も予想してました?」
「い、いやぁ……。」
苦笑い。
事の発端は、自分だ。
美姫に発破をかけてしまった。
しかし、今の彼女にはそんなこと言えない。
言えば何をされるか分かったものじゃない。
「ほら、噂をすれば……。」
「あぁー良い匂い……柔らかいなぁ……気持ち良い……。」
「やめっ、止めてって……もうっ!」
言葉は強いが顔は嫌がっていない。
むしろ笑みが見える。
そちらが彼女の本心なのだろう。
美姫の腕に絡まる優香。
彼女の顔にも笑みが浮かんでいた。
「……嫌なの?」
か細い声。
上目使いで美姫を見つめる。
「……い、嫌なら最初から触らせないよ……。」
「ありがとう。」
美姫の答えなど分かっていた。
それなのに、優香はわざとこのような質問をした。
「そ、その代わり……。」
震える美姫の声。
「……うん?」
「今日は帰ったらいっぱい甘やかしてね……。」
あらぬ方向を見ている。
その顔は、恥ずかしさから真っ赤になっていた。
「なんかもう既に胃もたれしそう……。」
「奇遇ですね、私もです……。」
二人のやりとりを見ていた雨乃と紅葉。
そして、紅葉はため息をつき、携帯電話を見た。
何をするのだろう。
つい、興味本意でそんな彼女を見る雨乃。
壁紙は、当然カメラに視線の合っていない美姫であった。




