26ー2
「……確かに。」
その場にいた野次馬はそんなことを言っていた。
幸か不幸か。
この時のことが後日拡散され、雨乃は実は良い人なのではないかと噂されるようになった。
ずるずるずる……。
雨乃に引きずられながら移動する美姫。
「……ど、どこまで行く気ですか?」
「……人がいないとこまで。」
「そうですか。」
以前なら雨乃のその言葉は恐怖でしかなかっただろう。
しかし、本当の彼女を知った今、美姫の心は穏やかであった。
体育館裏。
ジメジメとしたそこは、生徒達が寄りつかない。
落ち着いて話をするには絶好の場所だろう。
そこに雨乃と美姫はいた。
「えーっと、そのこんなとこにまで来ちゃいましたね、あはは……。」
苦笑いの美姫。
今日は引きずったり引きずられたりと散々な一日だった。
それに、件の美姫はこの様子。
雨乃の口からため息が漏れる。
そこで、ふと思い出す。
「……そういえば天江さん、雨井さんとどうなりたいの?」
優香のことを特別に思っている。
以前美姫がそう言っていたのを思い出した。
建前などない直球の質問である。
「……そ、それは……。」
「それは?」
「最初は優しい小柄な子だなって思ってて……段々仲良くなってって……。」
一つ一つ、紡ぐように呟く。
「……それで?」
雨乃が優しく促す。
「……仲良くなってったらエッチなことも言ったりしたけど……。」
「お、おう……。」
それはどうなんだろう。
なんとも言えない。
「……でも、やっぱ……。」
結論はもう出ているのだろう。
ならばもう言うことはない。




