24ー1
啖呵を切ったものの、美姫はたった一人で上級生の教室に向かうのを躊躇っていた。
歳上ばかりだと萎縮してしまう。
それに、これから会いに行くのは苦手な雨乃だ。
しかし、そうも言ってられない。
今日、この時を逃せばズルズルと後へ延びていくだろう。
そうなれば、余計に切り出せなくなる。
美姫は気合いを入れるのであった。
階段を上っていく。
自分が緊張しているのが美姫にはすぐに分かった。
周囲の視線が痛い。
自意識過剰なのかもしれない。
しかし、皆が美姫自身を見ているように思えて仕方がなかった。
そして、何かを呟いているようにも思えた。
生意気な下級生だ。
何の用だ。
そんなことを言っているのかもしれない。
後悔する美姫であった。
もちろん彼女に対する反応は、彼女自身が思い描いているようなものではなかった。
歳下ながらに溢れ出る色気に、皆釘付けであった。
スカートの中からスラリと伸びたカモシカのような足、大き過ぎず、小さくもない胸、服の上からでも分かるくびれ。
そして極めつけはその整った顔であった。
そこは、芸能人が来たと錯覚するほどに騒がしくなっていた。
その騒がしさ、異変は雨乃の耳にも届いた。
クラスに馴染んでいるわけではない。
しかし、クラス内に友達が出来た雨乃。
今は彼女らと教室内で昼食を食べていた。
その友達というのは、以前一緒にカラオケに行った者達だ。
「……なんか廊下が騒がしいね。」
雨乃とともに昼食をとっていたクラスメイトの言葉。
「そうだね。不良の喧嘩とかだったら嫌だなぁ……。」
雨乃の呟き。
「いや、不良って……あんたがそれ言うかね。」
ビシッ。
鋭いツッコミが雨乃へ浴びせられる。
「え、そ、そうかな?」
ションボリ。
「いや、嘘!嘘だよ!ごめんね!」
「そうだよ!姫川さんは不良じゃないよ!」
すぐさま雨乃を慰めた。
彼女らは、他の生徒達と同様に、彼女のことを見た目や雰囲気だけで判断していた。
しかし、そんな雨乃と話すようになってから、なぜこんな可愛らしい子を、今まで自分達は恐がっていたのだろう。
そう思うのであった。




