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言えるようなことならば、初めから言っているだろう。
しかし、そのような様子はない。
何か事情があるのだろう。
美姫はそう思った。
優香を盗んでいく可能性があるような先輩。
しかし、困っているなら手助けしなくてはならないだろう。
こうも思っていた。
「まぁ、いいや。何か言えない理由があるんだよね?」
「……。」
無言の肯定。
「でも私だけじゃどうしようもないから助っ人呼ばない?」
美姫の言葉。
そんなことを言う美姫の顔は、心なしか嬉しそうだった。
助っ人。
美姫のその言葉に、心当たりがないわけではない紅葉。
しかし、彼女に頼るのは、癪だった。
美姫が頼ろうとした人物。
それは、優香だった。
そもそも、雨乃関連で頼ることが出来るのは、彼女しかいなかった。
「うっ……でも……あいつ……。うぅ……。」
抵抗しようとする紅葉。
しかし、言葉が何も出てこなかった。
「じゃあ、優香にも相談しよう。それで良いでしょ?」
美姫の言葉。
その彼女の穏やかな口調とは裏腹に、不思議な強制力があった。
「分かったよ、分かった。」
むすっ。
言葉と表情が真逆な紅葉。
「よしっ!ありがとう。」
にこっ。
美しい微笑み。
この笑顔が見れただけでも良しとしよう。
紅葉はため息をついた。
「……と、言うことなんだけど……。優香ちゃんも一緒に考えてほしいんだけど……。」
「は、はぁ……。」
困惑する優香。
美姫の頼みなら、力になりたい。
そして、雨乃が困っているのならば、助けたい。
しかし、どうすれば良いのだろう。
今まで不良で、過去に何人も病院送りしたと思われていた。
しかし、それは全て偽りで、根も葉もない噂が独り歩きしたということなのだろう。
「うーん、噂……ねぇ。」
とは言え、雨乃の見た目からは仕方がないことだろう。
どうしろというのだ。
流石に無理難題ではないだろうか。




