22ー3
「ま、魔法少女アップルガールって知ってる?」
今にもかき消されそうな小さな声。
それは、林檎のような真っ赤な顔の雨乃から発せられたものであった。
「……んぇ?まほーしょーじょ……?」
雨乃の思わぬ一言に、素っ頓狂な声を出す紅葉。
魔法少女アップルガール。
紅葉は知っているかどうかと言えば、知ってる。
それは、日曜日の朝に放送している小学生の女子向けのアニメだ。
紅葉が、日曜日に早く起きた朝に、たまにザッピングで目に映ることがある。
しかし、まじまじと見たことはなかった。
つまり、名前と、放送日時を知っている程度であった。
「……あ、えーっとこの前映画にもなった放送中のアニメなんだけどね……。」
呆気に取られる紅葉。
そんな彼女を見て、それについて何も知らないと思ったのだろう。
雨乃が説明を始めた。
要は、こういうことである。
アニメの登場人物に、今の雨乃のように、制服を着崩した女性キャラクターがいる。
雨乃は、彼女が好きで、彼女の真似をして制服を着崩していた。
そこを、生徒指導の教師に目をつけられていた。
こういうことだ。
「……なるほど。つまり、アニメのキャラの真似をしてたんですね……。」
どんな表情をしていいか分からない紅葉。
思わず苦笑いをしてしまった。
くだらない。
それが、彼女の正直な感想だった。
自然とため息が溢れる。
そんなことが広まっていき、学校一の不良と呼ばれるようになっていったのか。
特段、期待はしていなかった。
しかし、いざ事の真相を聞いて、紅葉はがっかりしていた。
「……ま、まぁ事情は分かりましたけど……。制服ちゃんと着るつもりはないんですか?」
「ない。」
即答。
それほどまでにそのキャラクターのことが好きなのだろう。
紅葉には一切理解が出来なかった。
「それだとずっと誤解されたままになっちゃいますけど良いんですか?」




