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なるほど。
そういうことか。
雨乃は理解した。
紅葉の、美姫に対する感情は全く理解することが出来なかった。
人間関係が希薄な雨乃でも分かった。
彼女のその感情は、異常であった。
しかし、今話された紅葉の、優香に対する気持ちは理解することが出来た。
彼女に対して、苛立ちがあるのだろう。
要するに、嫉妬だ。
彼女が欲したものの全てを奪っていった優香。
彼女には、優香が自身を嘲笑っているようにでも見えたのだろう。
そんな彼女に嫉妬しているのだ。
「それで、このままで良いの?」
雨乃の言葉。
「このまま……ですか。」
「うん。だってこのままだと雨井さんと会う度に喧嘩するんでしょ?」
「……まぁ、そうですね。」
「毎回そんなのだと二人も大変だと思うけど、天江さん疲れちゃうよ?」
優しい声。
それは、まるで母や姉が、彼女のことを諭しているようであった。
「……。」
無言。
黙りこんでしまった紅葉。
「そうなったら天江さん二人のことどう思うと思う?」
「面倒だなーって……思います。」
「でしょ?なら……。」
「でもっ!」
雨乃の言葉を遮る紅葉の声。
「でも美姫は私の友達です。あいつと仲違いしても美姫は私の友達のままいてくれます!美姫はあいつのこと嫌いなはずです!」
滅茶苦茶なことを言っている。
しかし、紅葉は自身の言ったその発言が支離滅裂なことに気がついていない。
「落ち着いて、落ち着いてよ!言ってること滅茶苦茶だよ!?」
「落ち着いてます!美姫は私のだもん!私がこんなに美姫のこと好きなんだもん!美姫だって私のことを好きに決まってるよっ!だって私が話しかけると笑ってくれるもん!」
これは自分では手がつけられない。
雨乃は困っていた。
彼女の親が帰ってくる気配はない。
つまり、雨乃がたった一人でこの発狂した紅葉の相手をしないといけないのであった。
どうすれば良いだろう。
困った雨乃は、彼女自身も予想外な行動に出るのであった。




