21ー3
「というか、なんで雨井さんのこと嫌いなの?」
雨乃が紅葉と会ってからずっと思っていた疑問。
なかなか聞けなかったが、この際聞いてしまおう。
雨乃が、そんなことを思い口にしたものであった。
「……また長い話になりますが良いですか?」
「うーん……。」
「ありがとうございます。では話しますね。」
悩んでいたつもりの唸り声を、肯定の声と勘違いされてしまった。
紅葉は中学の頃、成績は常に一位であった。
教師や両親、友人達からも県内でも有数な進学校に入学するだろうと期待されていた。
しかし、実際には紅葉本人としても、周りの人間にとっても予想していなかった結果となったのだった。
入学試験当日。
紅葉は風邪を引き、散々な結果となった。
第一志望である高校には合格しなかった。
そして、合格したここへ進学したのであった。
悔しい思いと、周囲の目に耐えていた紅葉。
それでも彼女は登校するのが苦だけではなかった。
入学式に見た輝き。
彼女はクラスメイトになった。
そして、彼女と話すことが出来た。
それだけで、進学した価値があった。
紅葉はそう思っていた。
定期テスト。
今まで彼女は全て、点数は一位以外取ったことがなかった。
入学試験は良い結果ではなかった。
しかし、彼女の実力ならば、この学校でも一位を十分に狙える。
結果は総合二位。
そして、全ての教科が二位であった。
彼女を差し置いて、総合一位になった生徒が同じクラスにいた。
そして、それと同時に全ての教科の点数が、一位であった。
その生徒の正体こそ、優香であった。
プライドを傷つけられた紅葉。
その負の感情は、一方的な矢印が向けられていた。
つまり、紅葉は優香の眼中になかったということである。
学年一位になること。
それを叶えられなかった紅葉。
それは、彼女にとって屈辱的なことであった。
しかし、美姫と同じクラスでともに勉強することが出来る。
その事実が、彼女の心の支えとなっていた。




