21ー2
「姫川先輩、先生タコ殴りにして病院送りにしたって本当なんですか?」
「は、はぁっ!?」
「ちょ、ちょっとそれ、どういうこと!?」
声を荒らげる雨乃。
思わず立ち上がってしまった。
タコ殴り。
病院送り。
どちらも雨乃には、心当たりがないものであった。
本気で驚く雨乃に対し、驚く紅葉。
その声に思わず座りながらにして、両手で後ずさりしてしまった。
「え、え?違うんですか?物理的に黙らせたとかもないんですか?」
「そんなのないよぉ!そもそも人を殴ったこともないしっ!」
「っ!?」
声にならない驚愕の声。
目を見開き、口をあんぐりと開いている。
間抜け面を晒していた。
「ま、待ってよぉ!じゃあ空宮さんは渡しのことそんな暴力女だと思ってたの!?」
「ま、まぁ……そうなりますよね、あはは。」
目を背ける紅葉。
「まぁ、じゃないよっ!?そうだったの!?」
その上で話しかけていたのか。
なかなか肝が座っているな。
雨乃は、そんなことを思っていた。
「まぁ、美姫の友達が仲良かったので大丈夫かなと思いまして……。」
とうとう優香の名前を出さなくなった紅葉。
そこまで優香のことを嫌っているのか。
暴力を振るう不良娘として認識している自分よりも嫌っているのではないだろうか。
「で、でも誤解だよっ!さっきも言ったけど私人を殴ったことないし、そもそも喧嘩も……。」
雨乃が言いかけて、止まった。
以前のカラオケでのやりとりを思い出したのだ。
何人かの男達と言い争いになった。
雨乃の認識はそうだった。
しかし、実のところ、彼らは雨乃だと分かると逃げ出したので、一方的な勝利だ。
「ま、まぁ……そのぉ……ちょっとだけ喧嘩はするけど……。」
言いずらそうに続ける雨乃。
思わず苦笑いになる。
「ほ、ほら!喧嘩!喧嘩するんじゃないですか!」
「でも空宮さんだって雨井さんと喧嘩してるんでしょ!?一緒だよ!」
「た、確かにっ!確かにそうだっ!?」




