21ー1
美姫を盗撮し始めた理由。
それを紅葉は話し始めた。
「……というのが、美姫の写真を集め始めたきっかけです。」
話し終えた紅葉。
絶句。
雨乃は、なにも言えなかった。
何を言っていいのか分からなかったのだ。
「ひ、姫川先輩……?」
「なに?」
「聞いてましたか?」
「うんきいてるきいてるだいじょうぶ。」
大丈夫じゃなかった。
脳のキャパシティを越えてしまった。
雨乃の手には負えない。
理解できると思っていた。
理解しようと努力した。
しかし、こんなこと、雨乃にはどうすることも出来ない。
「おもいきってあまえさんとはなしあったらどう?」
雨乃の適当な一言。
脳がろくに動いていない。
「え、それって嫌われませんか……?」
自覚はあったのか。
たらり。
雨乃の背中を伝う冷や汗。
「だいじょうぶじゃない?だいじょうぶだよ、だいじょうぶ。うんうん、だいじょうぶだよ。もうなんだったらいっしゅうまわってだいじょうぶだよ。」
こうなれば自棄だ。
友達の多い美姫に任せよう。
元々彼女が原因なのだ。
彼女に投げよう、そうしよう。
雨乃は正常な判断をすることが出来なかった。
「分かりました、明日美姫に打ち明けます。」
今さらながら、雨乃は自分がとんでもないことをしてしまったのではないかと危惧していた。
しかし、すぐに脳内がぐちゃぐちゃになり、思考が止まった。
紅葉が与えた情報量が多すぎたのだ。
「姫川先輩に話してすっきりしました。ありがとうございます。」
こっちはもやもやしてるよ。
そんなことを言いかけて、すぐに、引っ込めた。
「あ、あはは……どうも。」
「すっきりついでに一個聞いて良いですか?」
ニコニコとしている紅葉。
一気に遠慮がなくなったな。
そんなことを思う雨乃であった。
「あ、あぁ、うん。いいよ。」
しかし、もうこの際何を言われても驚かないだろう。
雨乃は了承した。




