20ー2
「……なるほど、大体のことは分かったよ。」
雨乃の呟き。
入学式に新入生代表挨拶をした美姫が美しかった。
どうにか仲良くなりたかったが、あと一歩を踏み出せなかったとのことであった。
始めに彼女の写真を撮ったのは、最初に席替えをした時であった。
目の前の席にいた美姫。
甘酸っぱい柑橘系の香り。
鼻を通り、侵入する美姫という甘美な誘惑。
初めは、彼女の甘く脳が痺れるような香りをどのように持ち帰ろうかと悩んだものであった。
ビニール袋一杯に彼女の香りを詰め込もうか。
彼女の使用している香水や、シャンプー、ボディーソープなどを聞いて、自身も使用しようか。
そんなことばかりが紅葉の脳の稼働率の大半を占めていた。
しかし、どれもこれも一度使い、楽しんでしまえば消えてしまう。
「匂いを楽しむって……あ、いや、ごめん、続けて……。」
紅葉の言葉に割り込んでしまったが、すぐさま後悔した。
少し間が空いてしまったが、紅葉が再び口を開き、話し始めた。
匂いは持って帰れない。
持って帰ったとしても微量だ。
ではどのようにして美姫を楽しもうか。
答えは、考えるまでもなかった。
匂いが駄目なら、姿を見れれば良いのだ。
なら、写真だ。
「……あ、それで盗撮したんだ……。」
納得した雨乃。
いや、納得などしていない。
理解も出来ない。
しかし、そう言うしかなかった。
そう口にしなれば脳がパンクしそうだったのだ。
口から言葉として逃さなければ破裂してしまう。
雨乃は、そんな気がしたのだった。
このようにして、紅葉の、美姫に対するドキドキわくわく盗撮ライフが始まった。




