19ー3
「先輩お待たせしましたー。」
紅葉の声。
リビングに戻ってきた雨乃。
彼女は、玄関から聞こえたその声を聞くと、ドクンと心臓が跳ねた。
「お待たせしてすみません。姫川先輩が何味が食べたかったのか分かんなかったので、目についたの何個か買って来ましたー。」
ガチャリ。
リビングの扉を開け、紅葉が入ってきた。
「う、うん……。あ、ありがとう。」
紅葉と目を合わすことの出来ない雨乃。
「……姫川先輩……?どうしました?」
ビニール袋を机に置く。
ガサッとビニールの音が部屋に響く。
その中には、様々なポテトチップスが入っていた。
「……先輩?」
紅葉の声。
それは、先ほどまでのものと違った。
冷たく鋭い感覚。
まるで雨乃の首筋に、何らかの刃物を突きつけられているようであった。
「……な、なに?」
紅葉が、雨乃へとゆっくりと近づいてくる。
ゆっくりと来るはずなのに、雨乃は逃げれなかった。
恐怖で足がすくんでしまったのだ。
「……な、なに?」
再度の問い。
その雨乃の言葉が聞こえていないのだろうか。
紅葉の顔は、能面のような無表情であった。
「……リビングから出ました?」
「……その……。」
「……そう……そうですか、分かりました。」
雨乃の反応から全てを察した紅葉の言葉。
「あの……。」
「……引きましたよね……?」
「うっ……。」
肯定も否定も出来ない。
部屋中に隙間無く貼られた写真。
それらの全てに美姫が写っていた。
雨乃は、それらを一瞬しか見ていない。
その為、断言することは出来ない。
しかし、横を見ていたり、目線が外れているものばかりだった気がする。
美姫の姿を撮った盗撮写真。
恐らくそれで合ってるだろう。




