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「と、とにかく一度、もと来た道を戻りましょう。」
紅葉の言葉。
当たり前といえば、当たり前な提案だ。
「うっ……そ、そうなんだけど……そうなんだけどね……?その……。」
雨乃が、言いずらそうに渋る。
雨乃が何を言おうとしているのか。
紅葉は、分かった。
いや、分かってしまった。
「それも分かんなくなって……迷子……なんですよね?」
雨乃への言葉を、ですか、ではなく、ですよね、と断定した。
それだけ自信があったからだ。
数秒の沈黙。
見つめ合う二人。
「あはは……正解。」
だろうな。
雨乃に対し、思わずため息が溢れる紅葉。
「どうしよう……。」
泣きそうな雨乃。
どうもこうもない。
紅葉が、自身の携帯電話を取り出す。
そして、地図アプリを起動する。
現在二人がいる場所。
それは、知らない場所であったものの、少し歩けば分かる場所へ行ける。
「ど、どうしよぉ……。」
震える声。
涙目で、上目使い。
愛くるしい噂とのギャップ。
先ほどまで、なぜこんな可愛い少女に恐がっていたのだろう。
ごくり。
生唾を飲む紅葉。
「地図見ると私の家が近いんですけど良かったら来ませんか?」
「い、良いの!?行く行く!行きたい!」
紅葉の言葉に対し、雨乃がぴょんぴょんと跳ねて反応する。
この選択を、酷く後悔することとなる。
そんなことなど、この時の二人はまだ知る由もなかった。




