14ー4
ここに居なければ大人しく帰ろう。
優香は屋上前の階段へ向かうべく歩いていた。
後ろには紅葉。
後頭部に伝わる彼女の視線。
言いふらすとでも思っているのだろうか。
「言わないから大丈夫だって。それより着いてこないでよ。」
「あ、いや……ほ、本当?美姫に言わない……ですか?」
先ほどまでとは打って変わり、優香に対して下手に出ている。
「……言わないって、そんな気持ち悪いこと。美姫の精神状態が悪くなるでしょ?」
言える訳がない。
最近仲良くなった子が、自分のストーカーなどと知ってしまったら、美姫の心が折れてしまう。
そうなったら彼女は誰を頼るだろうか?
そう考えると思わず思考が口から溢れた。
「私に甘えるよなぁ……。悪くない……いや、良い……。」
ニヤニヤ。
デレデレ。
取らぬ狸の皮算用。
そうこうしている内に、二人は目的地にたどり着いた。
屋上前の階段だ。
声がする。
二人いるようだった。
一人は美姫だと分かった。
しかし、もう一人が美姫の声に対して小さな声の為、分からない。
「えっと……引きませんか?」
美姫の声。
それに対し、もう一人が何かを返す。
引くとはどういうことだろうか。
隠れて聞いている優香と紅葉。
二人が目を瞑り、耳に神経を集中させる。
「はい、気持ち悪がりませんか?」
なるほど。
二人は理解した。
引くとは、ドン引きなどに使われる意味か。
どんなことを暴露するのだろうか。
なぜ私に秘密を言ってくれないのだろう。
盗み聞きをしている二人がヤキモキしながら聞いている。
「どうだろう。正直聞いてみないと分からないかな。」
もう一人の声が聞こえた。
雨乃の声だ。
数秒の沈黙。
「私……優香ちゃんのことが……す、好き……みたいなんです……。」
頭が真っ白になる優香と紅葉。
しかし、二人の状況は真逆であった。
その後のことは分からない。
しかし、気がつくと、優香は自室のベッドの上に寝転がっていた。
「あっやば……着替えよ……。」




