14ー2
「まぁ、言いたいことは分かったよ。……とにかく今日は帰んな?で、一回ゆっくり考えて。」
美姫の背中を撫でる雨乃。
苦笑いで言う彼女は、どうすれば良いか分からずにこう言うしかなかった。
「はい、お騒がせしました。」
美姫は、そう言うと一礼をした。
とぼとぼと帰る美姫。
その後ろ姿には、哀愁が漂っていた。
現状を打開できるかもしれない。
そう思い、雨乃へ相談したが、結果は芳しくなかった。
「ちょっと強く言い過ぎちゃったかな……?」
その場に一人残った雨乃。
美姫の姿が見えなくなると、そう呟いた。
「ただいまー……。」
帰宅するなり自室に籠る美姫。
制服のまま、ベッドに寝転がる。
目を瞑るが、眠気は来ない。
一人でゆっくり考えてみるべきだ。
美姫が、雨乃の言葉を反芻する。
自分の好きとは、どういう意味なんだろう。
友達としての友愛?
人間としての情愛?
「そんなの……。」
分からなかった。
もう一度考えろ。
雨乃の言葉は、そういうことなのだろうな。
一時の迷い。
そんな言葉がある。
もしかしたら、美姫が優香に抱いている気持ちもそれなのかもしれない。
始めて抱いた訳の分からない感情。
優香といると、楽しい。
優香の声を聞くと落ち着く。
優香を見ていると、胸の奥が苦しくなる。
「よく分かんないよ……。」
気がつくと、朝になっていた。
一睡も出来なかった為、頭が痛む。
寝不足なだけか、それとも他の要因も含まれるのかは分からなかった。
「眩しい……。朝だぁ……。」
カーテンを開ける。
美姫は、目を細め、嫌そうに太陽が登っているのを確認した。
「そう言えば……また寝れなかったなぁ……。」
美姫は、この前のことを思い出していた。
その時も、優香のことで悩んだ結果寝れなかったのだ。
「優香ちゃんは私から睡眠時間を奪う小悪魔だなぁ……。」
自嘲気味な笑い。
ここに来て、眠気が戻って来た。
それでも今日は平日。
登校しなければならないだろう。
欠席理由。
友達に恋愛感情を抱いているのか分からずに悶々としていたら徹夜してしまった。
その為、体調不良となった。
こんな理由で彼女の親も、学校も理解も納得もしてくれないだろう。
フラフラな足取りで部屋を出た。
普段徹夜をしていない美姫にとって、負担が大きかった。
その証拠に、リビングに向かう道中何度も額を壁にぶつけていたのだ。
そのせいで、真っ赤に腫れている。
痛みと引き換えに、眠気は飛んでいった。