13ー4
美姫と雨乃は、目的に到着した。
屋上前の階段だ。
ここならば、一人を除き、誰も寄りつかないだろう。
そう、優香以外は来るわけがないのだ。
よっこいしょ。
二人が階段に座る。
「えっと、それで……何かな?」
「あ、その……。」
言いずらそうな美姫。
もじもじと身体を揺すり、俯いている。
そんな彼女の姿は雨乃の加虐心を煽った。
今の彼女をもっと困らせたい、虐めたい。
雨乃の頭には、そんなことばかりが浮かんでいた。
ごくり。
生唾を飲み込む。
「その、ごめんなさい。」
「……え?」
美姫の謝罪に、わけが分からず聞き返す雨乃。
「さっき失礼なこと言っちゃったんで……ごめんなさい。」
「あ、いや……まぁ、その……別に良いよ。」
傷ついていない。
そう言えば、嘘になる。
しかし、雨乃は彼女自身が不良と言われているのは知っていた。
また、それが理由で周りから避けられているのも知っていたのだ。
「凄い図々しいお願いなんですけど……謝罪ついでに相談しても良いですか……?」
「え?まぁ、良いよ。」
何だろう。
この際だ、彼女とも仲良くなってやろう。
「私の本当の気持ちが分からないんです……。」
「……え?」
雨乃は、軽い気持ちで美姫の相談を聞こうとしていた。
しかし、そんな甘い考えで踏み込んでしまったことを、後悔することになる。
「えっと……本当の気持ち?」
「はい……。」
もじもじ。
可愛い。
違う。
可愛いが、相談を聞かなくてはならない。
雨乃の心中は、忙しかった。
「うーん、いまいち要領を得ないんだけど何に対しての気持ちなの?」
「えっと……引きませんか?」
「え?引く……?」
「はい、気持ち悪がりませんか?」
なるほど。
雨乃は理解した。
引くとは、ドン引きなどに使われる意味か。
しかし、引くなら、気持ち悪がるやらどんな爆弾を爆発させるつもりだろうか。
「どうだろう。正直聞いてみないと分からないかな。」
雨乃が、至極真っ当なことを言う。
数秒の沈黙。
美姫が深呼吸し始める。
その顔は赤く、瞳は涙で潤んでいる。
その扇情的な姿に、雨乃は再び生唾を飲んでしまった。
「私……優香ちゃんのことが……す、好き……みたいなんです……。」
美姫が精一杯の勇気を出して発した、振り絞るような声。