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甘え嬢ズ  作者: あさまる
40/88

13ー2

放課後。

雨乃達の教室。

続々と教室を出て、部活や自宅へ向かう者が多い中、雨乃は教室に残っていた。


今日の自分の行いは正しかったのだろうか。

そんなことを思い、立ち上がる。

しかし、このまま帰宅するわけではない。

雨乃は、ふと窓を見た。


「あれ……?」

見間違いだろうか。

あり得ない二人組が歩いているのが目に入った。


「……どうしたの、お姫?」

クラスメイトの声。


「あ、いや……見間違いかな?……え?お、お姫?」


「そうだよー、姫川さんだからお姫!……駄目?」

上目遣い。


愛くるしいその姿に、今や懐かしくなった優香の照れ顔が一瞬重なる。

どうやら可愛らしいもの、例えば小動物のようなそれに弱いらしい。


「駄目……じゃない……よ?」

内心でろんでろんな雨乃であった。


あるわけがない。

先ほどの昼休み、掴み合いの喧嘩になる寸前であった二人。

優香と紅葉が二人きりで人気のない所へ向かっていた。


そんなもの、空目だ。

そうに決まっている。


「いや、そんなわけないか……まずいよなぁ。」



場所は変わり、体育館裏。

もちろん、雨乃の空目というわけはなかった。

優香と紅葉がそこにいた。


「……で?まぁ、何のことかは分かるけどさ……。早くしてもらえる?美姫と二人でカフェ行く予定だからさ。」

ギロリ。

優香を睨み付ける紅葉。

その目つきは鋭いが、口元が緩んでいる。


挑発なのだろうな。

そう思っていても、美姫の名前を出された。

彼女の名前を出された以上、優香も引き下がることは出来ない。


「奇遇だね。私も美姫と遊びに行こうと思ってたんだよね、もちろん二人きりで。」


どちらもそんな予定などない。

もちろん、美姫には無許可だ。


美姫なら拒否しないだろう。

そんな考えの元での二人の言動であった。

どちらも自分こそが彼女の唯一無二な親友だと思い、そう信じて疑わなかった。


「なら勝負しない?」


「……勝負?」

優香が、紅葉の言葉に疑問を投げる。


「そう。私とあんた、二人で美姫に今から会いに行ってどちらが美姫と遊べるか。」


くだらない。

実にくだらない。

こんな結果の見えているもの、勝負とは言わない。

呆れて言葉も出ない優香であった。


美姫が自分の提案よりも、紅葉を優先するとは到底考えられない。

現実の見えないことがいかに哀れで悲しいことか。

それまで紅葉のことを憎んでいた優香であった。

しかし、今では彼女のことも、愛らしくも見える。


「どうしたの?もしかして怖じけずいた?」


あぁ、可哀相に。

「いや、いいよ。やろう。」

心の中でにやりとほくそ笑む優香であった。



この後起こる衝撃的な事実を、優香はまだ知る由もなかった。

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