13ー2
放課後。
雨乃達の教室。
続々と教室を出て、部活や自宅へ向かう者が多い中、雨乃は教室に残っていた。
今日の自分の行いは正しかったのだろうか。
そんなことを思い、立ち上がる。
しかし、このまま帰宅するわけではない。
雨乃は、ふと窓を見た。
「あれ……?」
見間違いだろうか。
あり得ない二人組が歩いているのが目に入った。
「……どうしたの、お姫?」
クラスメイトの声。
「あ、いや……見間違いかな?……え?お、お姫?」
「そうだよー、姫川さんだからお姫!……駄目?」
上目遣い。
愛くるしいその姿に、今や懐かしくなった優香の照れ顔が一瞬重なる。
どうやら可愛らしいもの、例えば小動物のようなそれに弱いらしい。
「駄目……じゃない……よ?」
内心でろんでろんな雨乃であった。
あるわけがない。
先ほどの昼休み、掴み合いの喧嘩になる寸前であった二人。
優香と紅葉が二人きりで人気のない所へ向かっていた。
そんなもの、空目だ。
そうに決まっている。
「いや、そんなわけないか……まずいよなぁ。」
場所は変わり、体育館裏。
もちろん、雨乃の空目というわけはなかった。
優香と紅葉がそこにいた。
「……で?まぁ、何のことかは分かるけどさ……。早くしてもらえる?美姫と二人でカフェ行く予定だからさ。」
ギロリ。
優香を睨み付ける紅葉。
その目つきは鋭いが、口元が緩んでいる。
挑発なのだろうな。
そう思っていても、美姫の名前を出された。
彼女の名前を出された以上、優香も引き下がることは出来ない。
「奇遇だね。私も美姫と遊びに行こうと思ってたんだよね、もちろん二人きりで。」
どちらもそんな予定などない。
もちろん、美姫には無許可だ。
美姫なら拒否しないだろう。
そんな考えの元での二人の言動であった。
どちらも自分こそが彼女の唯一無二な親友だと思い、そう信じて疑わなかった。
「なら勝負しない?」
「……勝負?」
優香が、紅葉の言葉に疑問を投げる。
「そう。私とあんた、二人で美姫に今から会いに行ってどちらが美姫と遊べるか。」
くだらない。
実にくだらない。
こんな結果の見えているもの、勝負とは言わない。
呆れて言葉も出ない優香であった。
美姫が自分の提案よりも、紅葉を優先するとは到底考えられない。
現実の見えないことがいかに哀れで悲しいことか。
それまで紅葉のことを憎んでいた優香であった。
しかし、今では彼女のことも、愛らしくも見える。
「どうしたの?もしかして怖じけずいた?」
あぁ、可哀相に。
「いや、いいよ。やろう。」
心の中でにやりとほくそ笑む優香であった。
この後起こる衝撃的な事実を、優香はまだ知る由もなかった。




