12ー2
「さて……。」
仁王立ちする雨乃。
地面に正座する優香と紅葉。
ベンチに腰かけおろおろする美姫。
この場を収めたは良い。
それは良いのだが、この後どうすべきなのだろうか。
雨乃は困っていた。
本来ならば、美姫と優香がきちんと話し合えば済むことなのだ。
それなのに、なぜこのような修羅場になってしまったのだろう。
「なんでこんなことになったのか分かる人、挙手!」
雨乃の声。
彼女の声に、三人とも反応するが、全員手を挙げない。
一人ずついくか。
「はい、雨井さん!」
「は、はい!?」
急に名前を呼ばれた優香。
ビクッと震える。
「最近の苛つきの原因を言って!」
「……その、美姫が……。」
「わ、私っ!?」
「そこ!天江さん、茶々いれない!」
雨乃が、声を張り上げ美姫を制止する。
「ご、ごめんなさい。」
決して邪魔しようとしていなかった美姫。
しかし、雨乃の勢いについ謝ってしまう。
「その、続けるね。……美姫が最近私をその……避けてるというか……その……。」
「はい、雨井さんありがとう。それについて天江さんは?」
「その……避けてたというかその……言っても怒りませんか?」
「んへぇ?」
美姫の言葉に素頓狂な声を上げる雨乃。
美姫が彼女を避けている理由。
優香と雨乃が仲が良いことが原因だ。
雨乃は、優香の話からそうであると考えていた。
所謂嫉妬からくる行為。
美姫が優香の一番の友達だと思っていた。
しかし、急に現れた雨乃がその地位を脅かさんとしている。
感情のぶつけどころが分からなかった美姫。
そんな彼女が、優香に八つ当たりしてしまったのだろう。
しかし、美姫が発した言葉は雨乃が予想していたものと違った。
「その、姫川先輩と優香ちゃんが仲が良いのが嫌なんです……。」
ここまでは雨乃が予想していたものであった。
そう、ここまでは、だ。
「優香ちゃんが可愛いから先輩が脅して一緒にいるんでしょ!?」
脅している?
「え、え、え、え、ど、どういうこと!?」
先ほどの雨乃の大声に負けず劣らずの美姫の声。
その勢いと意味に、動揺してしまう雨乃であった。
「とぼっ、惚けないで下さいよっ!」
何かを決意したように立ち上がる美姫であった。




