11ー1
唖然とする優香。
それは、美姫が紅葉に半ば強引に連れていかれた後のことであった。
どうすべきだろう。
昼休みに強引にでも一緒に過ごし、様子がおかしい原因を聞き出そう。
優香はそう考えていたのだった。
しかし、もう美姫がいない。
紅葉にどこに連れていかれたか分からない為、どうすることも出来ない。
チクリ。
胸が痛む。
自慢ではないが、優香は友達が少ない。
彼女自身の内気な性格もあるだろう。
中学の頃の友人は、三人で、高校生になってから友人と呼べる存在は美姫だけだ。
優香友人四天王。
その中に雨乃が入れば名前が変わる。
優香友人五人衆。
五人衆にすべく、優香は教室を出た。
「……ってことなんだけど……。」
雨乃に現状を報告する。
困惑する雨乃。
要は、嫉妬しているのだ。
自分だけが甘えられる存在である優香。
そんな彼女を取られたと思い、不機嫌になっているのだ。
「あー……そのー……。」
さて、何と言おうか。
正直に言ってしまおうか。
しかし、それで良いのだろうか。
人付き合いをあまりしたことのない雨乃。
そんな彼女は、現状をどうすべきなのか決めかねていた。
はっきり言ってしまえば、厄介なことに巻き込まれたくなかった。
しかし、優香は可愛い後輩である。
そして、初めて出来た高校の友人だ。
なんとかしてあげたいとも思っていた。
「……雨井さんはどうしたいの?」
絞り出した結果、彼女自身に答えを委ねた。
雨乃は、我ながら良い返しが出来たと思っていた。
むふー。
内心どや顔を決めている。
「……分かんない……です。」
「そ、そっか。」
さて困った。
彼女の出した答えに全面的に乗っかろうとしたのだ。
しかし、優香自身が、自分が今後どうすべきか、どうしたいのかが分からない。
その為、雨乃にはお手上げであった。
「うーん、そうだなぁ……。」
雨乃の独り言。
何気なく立ち上がる。
そして、窓の外を見る。
そこからは、校舎に囲まれた中庭が見える。
いつもなら、閑散としている。
しかし、今日は違った。
がさがさ。
動きが見られるのだった。
女子生徒が二人。
彼女らが、動きのなかった中庭にいることで、余計に際立つ。
つい目でおってしまう。
「……あれ?」
「どうしたんですか?」
スッと立ち上がる優香。
「あ、天江さんいるじゃん。」
雨乃の口から出た言葉であった。




