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甘え嬢ズ  作者: あさまる
3/88

1ー3

「席替えをします。」


朝、いつものように登校した美姫。

彼女は、今日も雪を見れた幸運に感謝していた。

そして、今日はどのような手段で彼女を見ようか考えていた。

そんな彼女の耳に、担任教諭の言葉が届いた。


なんということだろう。

いずれは来るであろうと思っていた。

しかし、まさかこのタイミングで来るとは美姫は想定していなかった。

その自信は、美姫自身にもどこから来るものか分からなかった。



「もう一度言います。席替えをします。」

夢ではない、現実だ。

本当に席替えをすると言っている。


美姫は何度も頬をつねった。

痛かった。

少し涙が出た。

それと同時に、もう少し優しくすれば良かったと後悔した。



担任の言葉に、美姫の近くの席の生徒達はブーイングの嵐。

彼女から遠い席の生徒達は大喝采。

教室の中が、混沌渦巻いている。


そんな中でも優香は物静かに本を読んでいる。

正確には、机の下で本を隠している。

担任に見つからないように彼女なりに工夫しているようだ。

そんな優香を見つめ、今日も素敵でお茶目な一面もあるものなのだと思う美姫であった。


首だけ彼女の方へ向けている為、少し痛い。


いや、駄目だ。

呑気なことを思っている場合ではない。

現在美姫の斜め後ろの席に、優香が座っている。

教室の端と端になってしまっては、美姫にとって登校する意味が皆無となってしまう。


「まぁ、皆の気持ちも良く分かる。席が離れるのは悲しいよな。」

担任が生徒達を宥める。



なるほどこの担任教師、生徒達のことを良く理解出来ている。

素晴らしい人だ。

うんうん、と小さく頷く美姫。


「天江さんと離れたくないんだろ?分かる、先生にも分かるぞ。」


「……は?」

何を言っているのか理解出来ない美姫。

思わず間抜けな声が出てしまった。


それとは真逆の反応をする周囲。

うんうん、と大きく頷いている。


「……。」

天江という生徒は、この教室に美姫しかいない。

つまり自分自身のことを指しているということだ。

美姫の脳内に、無数のクエスチョンマークが噴き出す。


優香の近くの生徒達が彼女と離れたくないというなら納得出来るし、美姫自身も何らかの抵抗をするだろう。

しかし、美姫には、どうして自分の周りの生徒達が自分から離れたくないのか分からなかった。


自惚れでなければ、美姫自身も、顔が整っている方ではあると思っている。

しかし、そんなもの、優香と比較すれば霞んでしまう。

むしろ、比較すること自体おこがましいとさえ思えてしまった。



「まぁ、ちょっと離れてる子は隣の席になれるかもしれないからさ、今年の運試しだと思って。」

裏紙で作られた手作り感満載のくじを持つ担任。


「さぁ!ごちゃごちゃ言わずにとっとと引けぇ!」

続けて言う。

その言葉に、生徒達のボルテージは最高潮になった。


美姫の隣になりたい。

優香と近づきたい。

美姫を、後ろから見ていたい。

優香の後頭部を見たい。

美姫の前の席になり、プリントを渡したい。

優香の気配と視線を背後に感じたい。

様々な、主に美姫と、美姫のファンの願望が溢れていた。


こうして、各々の思惑が入り乱れ、席替えが行われた。

次章2ー1

2018年 8月 4日

投稿予定。

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