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甘え嬢ズ  作者: あさまる
27/88

8ー2

早く入場時間にならないだろうか。

スクリーンに映し出されている近日公開予定の映画予告を見ている美姫。



それを見ていると、いくつか観てみたいものがあった。

また来よう。

美姫がそう思っていると、入場のアナウンスが鳴った。


早歩きで入場口へ向かう美姫。

周りは親子連れが大半で、他は何人かの男性がいるだけであった。

同年代の女子は周りに見受けられなかった。


そんなわけないか。

よく考えれば、同年代の女子が観るようなものではない。

シアター内へ向かう廊下で、入場口で貰った入場特典をバッグの中にしまう。

そして、自身の購入した座席に腰かける美姫。


本編前に、今後上映予定の映画の広告が流れる。

先ほど観たものなので、美姫はあまり真剣に観ていなかった。

周りはやはり親子連れと少数の男性のみだ。


「……あっ。」

斜め前に一人で座っている人を見つけ、美姫は思わず声を上げてしまった。


後姿しか見えない。

しかし、そのシルエットの雰囲気から、その人は女性ではないかと思えた。


どこかで見たような後姿。

しかし、本編が始まると、そんなことどうでもよくなったのだった。



「良かった……本当に良かった。」

目にうっすら涙を浮かべている美姫。

スタッフロールが終わり、余韻に浸っていた彼女が最初に発した言葉であった。


彼女以外はシアター内に残っていなかった。

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