表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
甘え嬢ズ  作者: あさまる
26/88

8ー1

「すみません、今少しお話良いですか?」


「ごめんなさい。今急いでるので……。」


ある日の休日。

美姫は電車を乗り継ぎ、街中へ遊びに来ていた。


今日何人目だろうか。

数えることすら億劫になってしまうほど多くの声かけ。

それら全てを躱しながら、美姫はある場所を目指していた。



「やっぱ公開初日に来ないとネタバレが恐くてネットも見れないよ。」


映画館であった。

館内へ入る。

ポップコーンの独特な甘い匂いに腹が刺激される。

しかし、学生である美姫の小遣いには限りがある。

その少ない中でやりくりする為、ここは我慢することにした。


交換した前売り券を手に、入場口付近のベンチに腰かける。

その券には、劇場版魔法少女アップルガールと記載されている。



日曜日の朝にやっている女子小学生を対象としたアニメだ。


以前、美姫は親戚の集まりがあった際、小学生の従姉妹の面倒を見たことがあった。

その時に彼女と見たのが、この魔法少女アップルガールだ。


初めこそ、従姉妹の世話をしつつ横目で見ていただけであった。

しかし、気がつくと、彼女を自身の膝に座らせ美姫自身も座り込んで見入っていた。


そこからは早かった。

近所のレンタルDVD店へ駆け込んでいた。

そして、今日までに他シリーズも含め、全ての話を視聴したのであった。


美姫は、携帯電話をバッグから取り出して一言呟くSNSを開いた。

最近アカウントを作った為、フォローもフォロワーも少ない。


アイコンは、変え方が分からず初期のままであった。

すぐさま映画館に到着したことを呟いた。

すると、すぐに反応が来た。


「あっ、レインさんだ。」

ポツリと呟く。


彼女のフォロワーの一人で、美姫自身もフォローしている人物だ。

美姫同様に初期のアイコンのままで、美姫以上にフォロワーが少ない。

しかし、美姫と趣味が合うことから意気投合し、お互いの投稿に反応する仲になっていた。


反応内容を確認する美姫。

そこには、レイン自身も今映画館に来ているという旨が記載されていた。


趣味が合う。

それは、今回上映されるアニメ映画についても言えることであった。

レインは、美姫よりも前からこのアニメを知っていて、リアルタイムで見ていた人物であったのだ。


映画がやるというのは、レインから教わったことだ。

美姫は、急いで前売り券を買い、今日に備えた。


「……うん?」

美姫が、携帯電話の画面をスクロールさせていると、ある画像が彼女の目に飛び込んで来た。


レインの投稿である。

それは、とある映画館に来ているという内容と、画像がセットになっているものだ。


美姫は、画像を指で触り、拡大する。

レイン本人の顔は写っていないが、前売り券を写したそれには、指が写りこんでいる。


爪にはマニキュアが塗られており、アニメ本編に出てきたキャラクターが描かれたものだった。

器用だな。

そう思うと同時に、今まで男性だと思っていたレインは、もしかしたら女性ではないかと思い始めていた。


「お、女の人……?」

自身のことを棚にあげ、驚きを隠せない美姫であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ