7ー3
館内が騒然とする。
無理もない。
紅葉が目を丸くする。
後ろ姿しか見えない。
しかし、見間違えるわけが ない。
先ほどの彼女だ。
「嘘……。」
紅葉の口からぽつりと出た。
階段を昇りきり、壇上に立つ。
紅葉の目には、彼女の周りだけ光輝いて見えた。
美姫が新入生代表挨拶を始めた。
緊張した様子などまるで見なかった。
その振るまいは、最早新入生のそれではない。
全生徒の代表と言われてもおかしくない堂々と、そして凛とした姿。
透き通り、耳心地の良い声。
美姫が一年生であるということに驚いた。
しかし、それ以上に紅葉には喜びがあった。
彼女と同じクラスになれるかもしれない。
それどころか、運が良ければ隣の席に座れるかもしれない。
美姫は二つ前の椅子に腰かけていた。
どのような順番で指定されているのか分からない。
しかし、ここまで近いのだ。
同じクラスである可能性は十分にある。
そこからは、時間があっという間に過ぎていった。
式が終わり、新入生達は一度教室へ向かった。
紅葉が教室へ着いた頃、既に何人かが席に座っていた。
あの人はいるだろうか。
紅葉は、教室を見渡した。
残念なことに、美姫の姿は見えなかった。
なんだいないのか。
仕方がない。
紅葉はそうは思った。
しかし、やはりがっかりしてしまう。
紅葉は、席に座り、大人しく担任教師が来るのを待っていた。
周りは未だに席に座らず、同じ中学出身の者達らしき集団で固まっている。
同じ中学出身のクラスメイトのいない紅葉は、早く担任が来ないかと思っていた。
少しすると、教室の外が騒がしくなった。
紅葉が、何事かチラッと廊下を見るとそこには、彼女がいた。
紅葉がまた会いたいと思っていたその人だ。
「あっ、さっきの方ですね。あの時はありがとうございました。」
「あ、あっと……その……。」
紅葉は言葉が出てこなかった。
彼女の目の前に、美姫がいた。
周りを、何人もの生徒達に囲まれながら、紅葉の元へ近づいてくるその姿を直視するのが難しかった。
紅葉の隣の席。
空いているとこに、美姫が座る。
「あ!隣ですね、よろしくお願いします。」
「は、は……い。」
信じられなかった。
先ほどはあまり見れなかったが、近くで見るとより実感する。
美しい。
いや、美し過ぎる。
実は美姫は人間ではなく、ロボットであるとか、その美貌で人を誑かし、血を啜って生きている吸血鬼と言われも紅葉は恐らく信じるだろう。
彼女の美しさは、それほど浮き世離れしたものであった。
そんな彼女は、別の女子生徒に見惚れていた。
次章
8ー1
2019年1月26日
投稿予定。




