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甘え嬢ズ  作者: あさまる
23/88

7ー1

「……。」


なぜだ。

なぜ勝てなかった。

校内の廊下。

目の前の定期テストの順位の記された張り紙を見ながら空宮紅葉が絶句していた。


彼女の順位は二位。

決して悪いわけではない。

むしろ良い。

しかし、紅葉は納得していなかった。


視線の先には一位の生徒の名前。


「雨井……優香っ……!」



中学生の頃はそんなことはなかった。

紅葉は、どんな教科も、座学では負けたことはなかった。

全て学年一位の成績と、点数であったのだ。

その為、教師達は彼女に期待し、より難関な高校への進学を進めた。


彼女自身その期待は重荷になることはなかった。

また、自身が期待されて当然だと自覚していた。


しかし、結果は散々なものであった。

入学試験当日、彼女は風邪を引いてしまったのだ。

薬を飲み、なんとか誤魔化し誤魔化して家を出た。

文字通り、足を引きずりながら、試験会場である高校へ到着することは出来た。


酷い頭痛と喉の痛み、一瞬でも気を抜けば倒れてしまいそうな怠さ、空を浮いているようなふわふわした奇妙な感覚が彼女を襲う。

それでも、ボーッとする頭で必死に問題を説く。


その時のことは、彼女はあまり覚えていない。

彼女が明確に覚えているのは、その後に自室のベッドの上で目が覚めたところからだった。

つまり、試験中の記憶がほとんどなかったのだ。


大丈夫だ。

自分なら問題ないはずだ。

ずっと一位だったのだ。

落ちるはずない。

自分なら大丈夫だ。


そう思いながらも、何日間かは食事が喉を通らなかった。

所謂滑り止めも合ったが、それでも彼女のプライドがそこへ進学することを許さなかった。


卒業式も、上の空で主席してしまった。

それでも卒業生代表の挨拶等は滞りなく進めることは出来た。



合格発表当日。

大丈夫、大丈夫。

そう何度も自分に言い聞かせ、紅葉は掲示板の元へと歩いて行った。


何人かに一緒に行こうと誘われていた。

しかし、それら全てを断り紅葉は一人で行ったのだった。


万が一にも醜態を晒すわけにはいかなかった。

常に完璧を期待され、求められていた紅葉にとって、志望校に受からないという挫折を周囲に見せるわけにはいかなかったのだ。



「良かった……あった……。」

安心し、緊張が途切れたからか、涙が溢れ出す紅葉。

掲示板には、確かに自身の受験番号が記されていた。


良かった。

心底安心した紅葉は、そのまま真っ直ぐ帰宅した。


家で待っていた両親に報告した。

すると、二人は、当然だろう、と言われた。

普段の実力では当たり前であるが、死ぬ気で努力したものであった為、紅葉の心にもやもやとした不快なものが残った。



制服を購入したり、電車の定期券の購入などをしているうちに、時は進んでいった。


入学式。

新しい制服に身を包んだ紅葉が校門に立っていた。


今年から三年間通う高校をじっと見ている。

大丈夫だ。

また学年一位になってやれば良い。


そうすれば、入学試験の時の汚名返上をすることが出きる。

また頑張れば良いだけだ。



しかし、それは、冒頭にあった通り優香の手によって阻害されてしまうことになる。

そんなこと、この時の紅葉には知る由もなかった。

次章

7ー2

2019年1月12日

投稿予定。

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