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甘え嬢ズ  作者: あさまる
21/88

6ー4

震える身体で睨み付け、ズンズンと歩を進める雨乃。

恐怖と怒りでごちゃごちゃな感情になってしまっている。


「手を離して下さい。」

恐い。

それでも引くわけにはいかない。



「……お、君も可愛いじゃ……ん……。」

雨乃を見た男の一人。

初めは雨乃の端正な顔に再びへらへらしていた。

しかし、彼女の顔をよく見ねいると、次第に顔が真っ青になった。


「あ?どうした?」

明らかに様子がおかしくなった男に対し、もう一人が言う。


「ひっ、姫川だっ!」

そう言うと、男はもう一人を置いて逃げ出した。


「ちょ、お前!待てって!」

置いていかれた男の言葉。

一人になってしまった為、その場から逃げ出した。


なぜ逃げ出した男達。

ポカンと呆気に取られる雨乃。

彼らが逃げて行った理由が分からなかったのは、雨乃本人だけであった。


「はぁ、助かった……のかな?」


「姫川さん!」


「うわぁー、恐かったよぉ。」


「ありがとおお!」


三人が一斉に雨乃にタックルするように抱きついた。

ぐへっ、と間抜けな短い悲鳴を漏らす雨乃。

倒れそうになるのを必死に堪える。


「ごめんね、皆が来ないから留守番任されてたのに来ちゃった。」


「ありがとう、ありがとう……。」

雨乃の胸元で震えている。



騒ぎを聞き付けたのか、店員がやって来た。

彼女らは、事務室で事情を聴かれた。


残念なことに、男達は既に店を出た後であった為、捕まえることは出来なかった。

あまり大きな騒ぎにしたくない。

そう思った雨乃達は、説明だけし、荷物を部屋から持って来て、そのまま店を出た。



「え、えっとこの後ってどうしようね。」

クラスメイトの一人の言葉。


とぼとぼと歩いていた雨乃達。

ジメジメした雰囲気を壊したいが為のこの言葉だったのだろう。

しかし、誰もこの後どこかで遊ぼうという気分にはなれない。


恐らくもうお開きだろう。

雨乃はそう思っていた。

初めてクラスメイト達と遊びに来たが、後味の悪い結果になってしまった。



「い、いや、遊ぼうよ!」


雨乃は、耳を疑った。

それは、他のクラスメイト達も同様で、皆ポカンとしていた。


「だ、だって今日せっかく姫川さんと遊びに来てさ、仲良くなれたのにあんな奴らのせいで台無しにしたくないじゃん!」


「そ、そうだよ!」


「うん!そうだよ、そうだよ!……姫川さんもそう思うよね!?」


雨乃は困っていた。

確かに、彼女達とまだ遊んでいたいと思っている。

しかし、こんな雰囲気で一緒にいて楽しめるだろうか。

もしかしたら、また先ほどのような事態にもなりかねない。


優香ならどうしただろうか。

ふと、雨乃の脳裏に優香の姿が浮かんだ。

今まで誰一人として近づいて来なかった。

それなのに、彼女は初対面でいきなり距離を詰めてきた。


そんな彼女ならどうするだろうか。

彼女達とも仲良くすることが出来るだろうか。

彼女達と遊び、楽しませることが出来るだろうか。

彼女達と遊び、自身も楽しむことが出来るだろうか。



彼女達とも友達になれるだろうか。



「……うん、まだ遊ぼう。」

雨乃が気がつくと、自身の口から言葉が出ていた。

6ー5

2018年12月29日

投稿予定。

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