6ー3
一曲と言いつつ、周りのアンコールにより何曲も歌わされた雨乃。
「凄い楽しいね。」
ガサガサな声に、満面の笑み。
喉の痛さに咳き込みながらも雨乃の心は楽しさで満たされていた。
「誰か荷物番してて。私ジュース取ってくるよ。」
「あ、なら私も行く。」
「私ちょっとトイレ行って来よっかな。」
「あ、なら私荷物見てるよ。」
雨乃が荷物番を買って出た。
「ありがとう、何か飲みたいものある?」
「オレンジジュース……あ、喉ヒリヒリしちゃうからやっぱお茶……いや、やっぱリンゴジュースで!」
少しの葛藤をした雨乃が自身の希望を言った。
部屋を出て言った三人。
一人部屋の中に残った雨乃。
「よしっ!」
電子目次を自身の前に持ってきて、曲を探し始めた。
目当ての曲をいくつか見つけると、予約した。
皆が帰ってきたら中断すれば良い。
雨乃は再びマイクを握り、歌い始めた。
「……遅いなぁ……。」
一人残され歌っていた雨乃。
三曲ほど歌っていたが、飽きてしまった。
足をパタパタと動かして皆の帰りを待つ雨乃。
ドリンクを持ってくるのに十分以上かかるだろうか。
「ちょっとだけ……ちょっとだけなら大丈夫だよね?」
自身に言い聞かせるように呟くと、雨乃は部屋を出た。
雨乃が廊下を真っ直ぐ歩くと、クラスメイト達の姿がすぐに見えた。
なんだ、こんな近くにいたのか。
雨乃が安心していると、彼女らが男性数人と何かを言い合っているのが見えた。
「だから止めてって言ってるじゃないですか!?」
「は、離して下さい!」
クラスメイト達の声がする。
中には腕を掴まれている者もいる。
良くない雰囲気だ。
雨乃にもそれは分かった。
しかし、彼らを恐いと感じた雨乃は、その場に立ちつくしてしまった。
「ちょっとくらい良いじゃん。」
「なぁ、俺らと遊ぼうぜ。」
にやにやと笑う男達。
体格が良く、彼女らの精一杯の抵抗などものともしないようだった。
「警察呼びますよ!?」
その一言が駄目だったのか。
それとも、今までの彼女らの抵抗が原因か。
男達の雰囲気が変化した。
今までのヘラヘラとした笑みがなくなり、彼女らを睨み付け始めた。
そして、より一層乱暴な、力任せな行動に出た。
掴んでいる腕を引っ張り、部屋へと連れ込もうとしたのだ。
「ほら来いよ!」
「やめて!」
自身の保身を考えている暇はなかった。
雨乃は、男達をキッと睨む。
そして、息を思いきり吸った。
「止めろっ!」
雨乃の声がその場に響いた。
次章
6ー4
2018年12月22日
投稿予定。