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甘え嬢ズ  作者: あさまる
10/88

3ー5

「なら、失礼しますね。」

こうなれば自棄だ。

やってやる。


優香がドカッと座る。

勢い良く行ってしまった為、隣に座る雨乃の肩とぶつかりそうになってしまう。


大丈夫。

いくら相手がもし、噂通りの極悪非道な不良少女だとしても、年下のこんなちんちくりんな女子を殴るはずがない。

せいぜい怒鳴られるだけだ。

根拠のない自信のもと、優香は行動に移したのだった。


心臓の音がうるさい。

当たり前だ。

隣にいるのが雨乃なのだ。

無理もない。

そう、仕方のないことなのだ。


「良い匂い……。」

ボソボソッと言った。


「え?」

聞き返す優香。


「あ、いやその……。」

何か言いずらそうな雨乃。


「食べます?……はい、あーん。」

そんな食いしん坊のキャラなわけがない。

まさかと思いながらも優香が言う。


箸で玉子焼きをつかむ。

口元が恐怖でヒクヒクと動いていないか心配であった優香。


差し出された卵焼き。

雨乃がゆっくりと口を広げる。

そして、遠慮ぎみにそれを口内へ入れた。


優香は、その様子に、胸がときめいてしまった。

まるで、美姫を甘やかして居るときのような感覚があった。


「お、美味しい。」

目を大きくし、驚く。

彼女の瞳はキラキラと輝いていた。


「ふふ、良かったです。」

今度は自然に溢れた頬笑みであった。



初対面で、こんな短時間で人の全てを分かるわけではない。

しかし、優香には、目の前にいる雨乃が、噂のような冷酷無慈悲な不良少女には思えなかった。



少し安心し始めた優香は、弁当を食べだした。

明日になれば、美姫は登校してくるだろうか。

そうであれば嬉しいことだ。

そんなことを思っていた。



数分後、全て食べ終えた優香。


「じゃあ、私行きますね。」

長居は無用だ。

教室に戻ろう。


この経験は自信になるだろう。

なにせ、何人も病院送りにした少女と初対面で昼食をともにしたのだ。

優香は、胸を張り、その場を後にしようとする。



「あ、あのっ!」

不意に、雨乃が口を開いた。


急に呼び止められた優香の心臓の音がうるさい。

なにかしでかしてしまったのだろうか。

何を言われるのだろうか。



数秒の無音。



「……今日は楽しかったです。ありがとうございました。」

何も言わない雨乃。

彼女が何か言い出す前にそう言った。


「う、うん。」

雨乃が言う。

何か言いたそうであったが、優香には予想も出来なかった。



「……気疲れした。……授業サボっちゃおうかな?」

再び廊下へ歩を進めた優香が独り言を言った。


もちろんそんな気は毛頭ない。

しかし、優香には、授業に出席しない生徒の気持ちが分かった気がした。



一方その頃、美姫はというと、自室で母に看病されていた。


「はぁ……優香ちゃんに会いたいな。」


「ほら、美姫口開けて。お粥溢しちゃうでしょ。」


差し出されたスプーンの上には湯気の漂う粥。

美姫は二回ほどふうふうと息を吹き掛け、冷ます。

そして、それをそのまま口へ運んだ。


「熱ちっ!……もー優香ちゃんにあーんってしてもらいたいよー!」

次章4ー1

2018年 10月 6日

投稿予定。

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