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※この作品は、フィクションであり、記載されている物は実在する団体や個人等とは、一切関係ありません。
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2018年 7月7日連載開始
あぁ、美しい。
この世全ての芸術品が霞んで見える。
この高校に進学して良かった。
目の前にいる、まだ着なれていない制服を着る女子生徒を見つめて思う。
それは、邪な感情であった。
それの持ち主も、彼女と同じく真新しい制服に身を包んだ女子生徒だ。
余談だが、彼女は芸術品と言えば、モナリザとムンクの叫びくらいしか知らない。
天江美姫。
容姿端麗、仙姿玉質、高嶺の花……。
様々な言葉がこの世にあるが、どれも彼女の美しさを表現するにはあまりにも陳腐であった。
街を歩けばいくつかの芸能事務所のスカウトを受ける。
そして、彼女の美貌に男女問わず多くの人々が振り返るのだ。
彼女はそれほどの美の持ち主であったのだ。
しかし、そんな美貌をもっていても、当の本人は気づいていない。
今までのスカウトの声かけも、自分のみでなく、同世代に片っ端から声をかけているのだと自己解決してきた。
自身へ向けられた好意に対して、彼女はあまりにも鈍感であったのだ。
そんな鈍感な彼女の視線は、斜め後ろの席に釘付けであった。
そこに、周囲から美の擬人化とすら思われている美姫が思う、この世の最高の美が存在したのだった。
雨井優香だ。
性格は、とても大人しく、小柄で目立たない。
休み時間には、教室の自分の席から一歩も動かず読書をしている女子生徒だ。
彼女の声を聞くことが出来るのは、精々授業で教科書を読むように言われた時だけだろう。
美姫はクラスの、更に言えば大抵のことで中心となるような人物であった。
一方、優香は常に誰かの後ろでひっそりと隠れているような少女であった。
真逆の存在なのだ。
「はぁ、雨井さん今日も綺麗……。」
ため息とともに思わずこぼれる言葉。
視線の先の優香にうっとりとする美姫にうっとりとする周囲。
優香はそんなおかしな状況に気がつかず、いつも通り読書に励んでいた。
次章1ー2
2018年 7月14日
投稿予定。