助けてあげるから
従姉妹の沙紀は母親の連れてきた新しい男の義父に嫌われている。
こいつの義父とはあまり会ったことがないがこいつの母親と再婚する前は普通に見えた。
沙紀は母親の連れ子、だから気にくわなかったのだろう。
こいつの義父だけが悪い奴ならまだ救いがあったが母親は快楽至上主義者だ。
義父と結婚する前にはいつも違う男が家に居たらしい。
こいつのことを邪魔だと思っているに違いない。
「また殴られたのか?」
沙紀は着の身着のまま逃げてきたらしく顔にアザを作っていた。
義父が来る前はまだ明るかった沙紀が虚ろな目をしている。
そうか、こいつは俺が守ってやらないとだめなんだ。
「俺、お前となら一緒に逝けるきがする」
何気無くそういった。
しかし本心だ。
もし引き裂かれるときが来るなら
沙紀がまた不幸になるなら。
死にたいと言うなら一緒に死んでやれる。
「大好きだよ」
なんでこいつはこんな綺麗に笑ってるんだろう。
こいつも同じように思っているのか、だったら幸せだ。
同時に不安が過る虚ろな目をしている沙紀は、俺が好きなんじゃない
助けてくれる人間が好きなだけなのだと。
そんなもの、餌を与えてくれる飼い主を慕う動物と変わらないのではないか。
どうしたらいい。
沙紀は俺が好きだといっているのか、助けるやつなら俺でなくてもいいのか
言ってくれよ。