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解放者たち  作者: habibinskii
第七章
51/81

9

 湿った匂いのする避難壕から外へ出た途端、新鮮な空気に包まれる。午前中の空は透き通るように青く、林に降り注ぐ日差しは澄んで清らかだ。葉のひとつひとつに輝く光、枝に止まる小鳥の鮮やかな羽の色、こんこんと湧き出る泉の冴えた色、その周りに自生する花々の色…………リュイは泉の縁に佇み、漫然と周囲を眺めていた。

 涼しい風が吹き抜ける。耳際の黒髪と、襟もとに巻いた薄布の裾をそよがせて、林の奥へ去っていく。風さえも色がある…………リュイは胸の奥に言い表しようのない奇妙なものを感じていた。

 泉の脇にある大きな石へ腰かけて、咲き乱れる花を見る。白色、あるいは紫がかった薄紅色の花びらは細く線状に広がっている。背が高く、茎は細い。秋になるとよく目にする花であるけれど、リュイはその名前をまだ知らない。ゆらゆらと風に揺れる様子は、まるで花たちが声のない会話を楽しんでいるようだった。

 幾度となく目にしてきた花にも拘わらず、リュイはその色合いに初めて気づいたように感じていた。この花はこんな色だったろうか、こんなにもきれいなものだったろうか…………不審にすら思うのだ。

 腰かけたまま、空を仰ぐ。鳥のさえずりが響き渡る青い空――――空の青はこんな色だったろうか、まぶしいだけではない、胸に染みるなにかを覚えさせる色だったろうか……。

 色褪せて久しいリュイの視界が、色を持ち始めていた。いきいきと迫って見え始めていた。リュイはときおり、その色の鮮やかさ美しさに囚われて、ぼんやりせずにはいられなかった。


 木漏れ日が水面(みなも)にきらめくのを眺めているうちに、「俺の旅だからね」と笑んだティセの瞳のきらめきを思い出す。

 再会してから、ティセは少しだけ変わったように、リュイは感じていた。どこがと問われれば、相変わらずうまく説明はできない。が、以前にも増して、より積極的、能動的になったような気がしていた。旅に対しても、自分に対してもだ。

 旅の仲間だとはっきり認め、約束をしたからかもしれない。それだけでなく、離れていた間に、なにか心境の変化があったのだろう。ティセは、なおいっそう意欲に満ちた強い瞳をしている。

 どことなく大人びたようにも感じられる。具体的なことはひとつも言えないが、いまのティセなら信頼がおけると、リュイは確かに思えるのだ。

 …………俺の旅…………

 ひどくまぶしい瞳だった。あんなふうに信念を持って、僕の旅だと言えるだろうか…………リュイには決して言えやしない。羨望を込めて、強い瞳を思い浮かべるだけなのだ。


 その瞳が、見る影もなく曇ってしまった。今朝がたのティセを思い出すと、胸の奥にかすかな痛みが走った気がした。泣いていたようだ、リュイは深く溜め息をつく。

 ティセがあそこまで取り乱す理由が、リュイにはよく分からなかった。正当な行為だ、撃たなければ二発目を受けたかもしれない。致命傷ではないだろうし、相手が先に攻撃をしかけたのだから、気に病む必要などどこにもない。

 それとも、ティセは自ら発した言葉を裏切るような真似をしたことに、衝撃を受けているのだろうか。

 ひとの血を流すことは完全に悪だ――――……非難めいた眼差しを向けて言った、あの言葉を。

 リュイはそう思えない。世のなかには、血を流すべきひともいる。どころか、殺されて当然のひとさえ――――――いる。けれど、揺るぎないものに貫かれ自信に満ちたティセが、思いがけず自らを裏切った、裏腹な行為をしてしまった――――そこに激しく動揺しているのだと考えれば、少しは納得がいった。

 何故責めないのかと、ティセは睨んだ。その瞳を、声音を、思い出す。あのとき、リュイは言葉を失うほど、胸を突かれていた。疎ましげな目つき、蔑みの滲む声…………あれは間違いなく、自分自身を憎み嫌うときにするものだ。ティセを支配し興奮させているのは、自身を嫌悪する心だった。ひとの胸中を推し量るのが苦手なリュイではあるが、それだけははっきりと分かった。

 何故ならそれと同じものを、途方もなくなるほどに、自分のなかに抱えているからだ。

 ティセを見ているのが、ひどく苦しかった。見たくもない自分の内側を垣間見てしまったように思えた。目の前から消えてほしいとさえ感じていた。かけられる言葉などあるはずがない、自分にかける言葉がひとつもないように――――――……。

 どのみち、ティセの激昂は、リュイの許容範囲をはるかに超えていた。



 草を踏むかすかな音がする。フェネがゆっくりとこちらへ近づいてくる。その足取りは子供がするものとは思えないくらい重たげだ。ティセと一緒に避難壕にいるのが、つらいのかもしれない。自分を狙っている男に、本来関わりのないティセが撃たれたのだから、当然だろう。

 近くまで来て、フェネは立ち止まった。声を発しない代わりに、普段は顔や目の表情が豊かであるのに、すっかりと活き活きしさを失っている。大きな黒い瞳を沈ませて、リュイをじっと見つめている。リュイは瞬きで返事をする。と、その横にちょこんと腰かけた。

 フェネはひたすら目線を落とし、小さく小さくなって消えてしまいたいかのように、肩をすぼめている。ティセのように、フェネと器用に会話はできない。とにかく怪我を心配しているのだろう、聞こえないのは承知のうえで、

「ティセの怪我はすぐに治る。心配ない。傷跡が残っても、男なんだから問題ないよ」

 うつむいた横顔を見下ろして言った。黒々とした睫毛の下で、瞳が思いつめていた。


 今日何度目かも分からない深い溜め息をつく。澄み切った冷水を湛える泉をぼんやり眺めているうちに、昨日から幾度となく去来するわだかまりが、ふたたび心を過ぎった。

 義務や価値をザハラに問われ、思うまま辿々しく口にした――――――


 ――――僕が、守ろうと思う。


 友人のひとりも守れない、自分の無力さ、不甲斐なさを、リュイは痛切に感じていた。ほとほと厭になるほど自分に失望していた。いままで身につけたものは、なんだったのか。なんの役にも立ちはしないのだと――――否、立てられないのだと、ティセの怪我がその事実を突き付けている。

 そんな言葉が自然に零れることに呆然としながら、守ろうと言った――――その後間もない昨日の件である。自分の情けなさに、リュイは打ちひしがれていた。

 消沈するリュイの胸の奥からは、より深く、硬く凝結したわだかまりが連想的に浮かび上がった。真っ暗な沼の底に沈んでいる大きな不可解の塊が、にわかに浮力をつけて、その喉元を塞ぐように迫り来る。息苦しさを覚えずにはいられない。

 こんなにも情けない自分だから、旅に出なければならなくなったのだろうか…………そして何故、そうなってしまったのか――――――……自分だけが何故、周囲とは違っていたのだろう――――――……。

 旅に出た日から、もう数え切れないほど考えた。隣に眠る者のいないひとりの夜を、悶々とくり返した。飽きるほど考えたところで、リュイにはどうしても分からなかった。


 鼻をすする音で気づく。いつまにか、フェネが静かに涙を流していた。ふっくらとした両頬に涙の筋をひとつずつ付けている。

 …………困った……

 ……ティセならどうするだろう、リュイは暫し思案した。だいぶたってから、鼻をすするごと、わずかに上下する右肩へ、そっと右手を置いた。フェネは少しだけリュイへ寄り添った。その肩の信じられない小ささに、リュイははっとしていた。



 避難壕の上の丘を少し登ると、林の向こうに小さな集落が見えた。太陽の方角からすれば、尼僧たちの寺院のある村とは丘を挟んで反対側だと分かる。この古い避難壕は村びとしか知らないと尼僧は言っていたし、穴道の距離は長かった、祭祀遺跡の丘からはだいぶ離れていると思われる。男たちがここを見つけることは、おそらくない。村の周辺を探して見つからなければ、先を探してみるはずだ。

 リュイは避難壕へ戻った。ティセは敷いた毛布のうえで、顔をあちらへ向け、死んだようにうつぶせになっている。眠りに逃避したいのだろう、けれど、きっと目は覚めている。

「二・三日ここにいよう。彼らは先を探すだろう。これから少し買いものに出る。すぐに戻るよ」

 ティセは微動だにせず、返事もしない。重たい空気に押し潰されるように横たわったままだ。リュイは静かに溜め息をついた。

「……ティセ」

「…………」

「……フェネが……」

 力なく投げ出されたティセの右腕、その指先がぴくりと動く。

「フェネが泣いている」

 それだけ告げて、リュイは近くの集落へ向かった。



 泉の脇でフェネと昼食を取る。鳥のさえずりだけが聞こえていた。

 フェネの祖父母が住むというシュウ南部のクマラニは、海に面したそこそこ大きな村だ。訪れたことはないが、やや近いところを二年ほど前に歩いていた。リュイは平パンを口にしながら、当時を思い出す。

 北部を出て、不毛な中部を抜け南部へ入ると、さまざまなことが異なっていた。どこか荒涼とした北部に比べれば、南部はずっと緑が濃く、景色が瑞々しい。町の多くはどことなく自由な空気が流れ、活気があった。そこに住むひとびとは開放的に見え、北部のひととは違い明るさを感じた。シュウの首都は北部にあるが、経済の中心は南部にあり、最大都市はクマラニよりさらに南にある港湾都市バンダルバードなのだった。

 南部へ赴いたことは、それまでにも幾度かあった。けれど、自由に歩いたのはそのときが初めてだ。当時、リュイはひどく驚いていた。自分が抱いていた南部の印象とは、まるで違っていたからだ。北と南に、これほどの違いがあるとはそれまで感じていなかった。これがシュウという国なのだと、初めて知った。そして、これがひとつの国であるという事実を、とても奇妙に思った。

 北部の空気はうっすらともの哀しさを漂わせ、晴れ渡る空の下は静けさに満ちていた。いつも誰かに視られているような、小声で話さなければ叱られてしまいそうな、そんな緊張感が町や村には漂っていたと、リュイは記憶している。

 しかし、それも本当は違っていたのかもしれない。南部に抱いていた印象が違っていたのと同じように。故郷の真実の姿を、なにひとつ知らないのではないだろうか――――……旅に出てから、リュイはそう思うのだ。

 実際、反政府勢力やイブリアの過激派が存在することも、彼らがときおり静けさを掻き乱すことも、旅に出てから初めて知ったのだ。


 歩き始めて、本当にたくさんのことを知った。それが真実であるかは分からない。が、少なくとも、自分が当然のように思っていたさまざまなものごとが、真実ではなかったのだと、極めて偏ったものであったのだと、気がついた。真実を――――常識を、知らなければならない。だから、リュイは本を読む。

 疑いもなく信じていたことを、持っていた常識を、リュイはなにもかも覆さなければならなかった。そうして――――――……自分が分からなくなった。というよりは、自分自身が分からないという事実を、心の底深くから認識したのだ。

 帰属すべきものが――――自分を揺るぎなく貫くものが――――……なにもない。

 緑鮮やかな南部の地を歩みながら、リュイは身体中が虚ろで満たされていくように感じていた。

 急速に、視界が色褪せていった。やがて、シュウを出国すると、いよいよ視界は墨色に沈んだ。シュウを出てしまえば、興味を引くところなどひとつもない。旅は完全に苦痛と化した。


 食事が終わると、フェネはふいに立ち上がった。こんこんと湧き出る泉の水を、湯呑みに掬って運んでくれる。

「ありがとう」

 どういたしまして、というふうにフェネは小首を傾ける。「次は微笑え」とティセに言われていたのに、すっかり忘れてしまった。

 フェネは両手で湯呑みを包んでこくこくと水を飲む。その姿をなんとなく眺めているうちに、夢に現れる妹セレイは、決まっていまのフェネと同じくらいの歳であると、にわかに思い至る。両親が亡くなり、養女に迎えられることが決まったころだ。生家の脇にある沙羅の大木の下で、イブリアの誓いの儀式を教わった、あのころの妹なのだ。


 また、会える――?

 妹は消え入りそうな声で言った。

 誓いは果たされ、養女へ行ったあとも、幾度か会っている。それでも、夢に現れるのは最後に生家で会った妹なのだった。旅に出る前の晩、ほんの束の間対面したのが、最後――――……。ひどく急いでいたため、誓いは樹の下では立てられなかった。誓う対象のない誓いは無効だろう。妹との再会を、リュイはすでにあきらめている。

 生家のある村から首都へ向かって一両日ほど歩いた町に、いまも妹は養父母とともに暮らしているはずだ。北部を――――とりわけ、首都や村の近辺を訪れることは、もう生涯ありえない。あの貧しい村の寂れた景色を目にすることも、生家の脇に立つ大樹を仰ぐことも、妹を静かに眺め見ることも、叶いはしない。たとえどんなに望んだところで決して叶いはしないのだから、無意識にもそんな想いを頭に上らせないようにしていたのだと、リュイは先日気がついた。

 ――――――本当は妹にとても会いたいんだろう………?

 ティセがそれを口にしてしまったからだ。

 無用な望みを抱いて失望することのないよう、我知らず自衛していたのだ。それなのに、なにも知らないはずのティセが無自覚に禁句を破る。ティセのひと言は無意識の防御をあえなく破ってしまった。…………何故、それを口にするのか…………胸の内に、灰色の靄が立ち込めたように感じていた。ティセは相変わらず、リュイを追い詰めるのだった。


 妹とはあまり話をしたことがなかった。ひとり遊びする様子を、あるいは家事の手伝いをする姿を、ただ無言で眺めていた。目が合えば、妹は必ず恥ずかしそうに口をつぐんだ。そして、同じ暗緑の瞳で、リュイをそっと見つめ返した。

 周りにいたひとびととはもちろん、父母とも違う、特別な存在のように感じていた。何故そう感じていたのかは分からない。けれど、妹を眺めていると、すべてを忘れてしまったかのような無心の時間が訪れた。とても安らかなひとときだった、妹に会うのが唯一の愉しみであったように、いまは思う。

 泉のほとりに咲き乱れる秋の花をぼんやりと眺めつつ、改めて考える。

 セレイは、本当はどんな子だったんだろう……

 その姿をいくら思い浮かべても、はにかみながら自分を見つめ返す姿しか、リュイは思い出せないのだった。



 草を踏む音が耳に届く。ちらり一瞥すると、隣に座るフェネもやや遅れて振り返った。足音の主を見て、フェネはぱっと立ち上がる。泉の縁をぐるりと回って、向こう側へ行ってしまった。

 薄暗い穴倉からようやく這い出たティセは、フェネに避けられたのを気にしてか、暫し後ろで立ちつくしていた。やがて、花々に漫然と目を向けるリュイへ、

秋桜(コスモス)が、そんなにめずらしい?」

 普段の口調に戻っていた。リュイは心で安堵の息をつく。

「……これは、秋桜というの?」

「……おまえ、秋桜も知らないのか……」

 呆れ声でそう言って、リュイの横へ腰を下ろす。

「ほんと、誰でも知ってることほど、おまえは知らないんだな」

 ティセは血に染まった上衣を着替え、脱いだ衣服をくしゃくしゃに丸めて握っていた。

「……痛みは?」

「うん……大丈夫」

「そう」

 ふたりはしばらく無言でいた。秋風にさざ波を立てて光る水面(みなも)や、会釈しあうように揺れる秋桜、泉の向こう側でこちらに背を向けて座るフェネの姿を眺めていた。

 ひどく素直な声で、ティセは静かに言う。

「リュイ……朝は……ごめんね」

「いや……」

 前を見たままのリュイに顔を向け、

「さっきのひと言…………めちゃめちゃ効いたよ」

 ティセは恥ずかしげに薄く笑む。そして、同じように前を向き、心の内を語り始めた。

「フェネを…………守りたいって思うんだ。泣いたり悲しんだりすることないように……つらいこと全部追い払ってやりたい。それなのに、俺が泣かしてどうすんだって、思った」

 守りたい……リュイは胸のなかでくり返した。

「……それで、気持ちが治まったの?」

「治めたんだ、無理にでも。思っていたことと逆のこと、したくないからな」

 激昂したティセがこだわっていたのはやはりそこだったかと、得心した。

 「したくない」と声を強めたティセは、眼差しにも力強さを滲ませている。朝方のティセとは別人だった。気概に満ちた黒い瞳は引力に似たなにかを放ち、リュイを否応なく惹きつける。ティセは強い……リュイは心から思うのだ。

「俺、たいした力ないけど、フェネを守れるような自分になりたいと思うんだ……笑ってもいいぞ」

 冗談めかしてから、一転、ティセは心をそっと撫でるようなひたむきさに溢れる声で、

「……おまえが俺を守ってくれてるみたいに、なれたらいいと思うんだ……」

 一瞬置いて、リュイは大きく瞬いた。それから、先ほどまで赤く染まっていたティセの左袖辺りを見つめて、

「……僕は、おまえを守っていない……」

「そんなことない!」

 ティセは即答した。まっすぐにリュイの瞳を見つめ、

「……そうじゃないよ。おまえはいま、そこにそうしているだけで、俺を守ってる」

 紛れもない事実であるように、ティセは言う。言わんとしている意味が、リュイには少しも分からなかった。わずかに小首を傾げてみせたが、ティセは答えない。なにやら意味深げににやりと笑んで、

「さてとっ! 泣いちゃったお姫さまにお許しをもらわなきゃ。そんで、洗濯洗濯!」

 フェネッ、と叫んで立ち上がり、ティセは泉の向こう側へ歩いていった。


 リュイは、秋桜の群れに見え隠れするふたりの様子を静かに眺めていた。草の上に座り込むフェネと同じ目の高さになったティセが、なにか囁いている。遠目にも、とても穏やかで優しげな顔つきでいるのが分かる。ほどなくして、フェネはティセに抱きついた。また泣いている。リュイの隣で流した静かな涙とは違う、感情に突き上げられたような泣きかただった。ティセは微笑んだままフェネをふわりと包み込み、ときおり、頭の上で束ねられた黒髪を優しく撫でていた。

「本当に、兄妹のようだ……」

 感心して、口のなかでつぶやいた。そして、次は頭のなかでつぶやいた。

 ……僕とセレイより、ずっと……本当の兄妹のよう…………

 リュイは左の手のひらをじっと見つめた。誓いを立てたときに合わせた、妹の小さな手の感触を思い浮かべる。

 ……セレイ……

 やるせなさに目を細め、叶わない望みを断つように、左手を握り締める。





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