最後の日常
リビングでは兄貴を除く家族がみんな朝食を食べていた。
お袋は朝食の際、家族がみんなで食べるのを理想としていた。だがその理想の所為で俺は家を出るまで、まだ45分もある…
その先の流れはわかっている…悠里が俺に学校までの自転車での送迎をお願いしてくる。だがそれを断れないのが俺の日常だ。朝食を食べている俺を悠里が上目遣いで見てくる。
「キョウ兄ちゃん〜あのねー」
「飯食って15分後に出るぞ」 妹はまたも拗ねる
「お兄ちゃんはわかってないよ‼︎
妹のお願い事は最後まで聞いてから判断してよ‼︎声まで作った頑張りを返してよ‼︎」
「とりあえず学校までチャリを貸せば良いんだろ?」
「まぁ…そうなんだけどさ…」
悠里はブツブツ言いながら朝食を食べ終わる。
そして悠里と一緒に家を出る。
悠里は俺の自転車に乗り、俺は走る。
「ねぇお兄ちゃん…二人乗りにしようよ、私、お兄ちゃんの背中にもたれながら学校にいきたいよ‼︎」
俺は走りながら答える。
「毎日…同じ事…を言うなよ…俺は走りたくて…走ってるん…だから」
悠里の気持ちはわかってる。
二人乗りしたいって気持ちも嘘では無いだろうが、俺が走ってるのが申し訳ないんだろう。
悠里の学校まで三キロ
俺の学校は悠里の進学校とは真逆に八キロある。
毎日三キロ走り八キロ自転車での通学。否が応でも俺の身体は引き締まっていた。実際走るのも嫌いでは無いのだから、悠里の送迎を断る理由は無かった。
悠里を送りに行くと、いつも噂になる。校門前でヒソヒソと会話する声が聞こえる。
「あれ悠里先輩の彼氏かな?」
「えー⁉︎知らないの?あれお兄さんよ‼︎」
「嘘っ⁉︎」
「悠里先輩は毎日お兄さんに送ってもらうのよ‼︎」
「ブラコンなのかしら」
「分かってないわね‼︎完璧な悠里先輩だからこそ寧ろそこがいいのよ‼︎」
そんな噂話に俺はため息をつく…
「悠里…お前毎朝こんなヒソヒソ話聞いていて疲れないのか?」
「あら?兄さん私は結構気に入っているわよ」
既に悠里にはスイッチが入っていた。
「はぁ……まぁ悠里がいいなら構わないが、夕方迎えに来るからな」
「うん‼︎待ってる‼︎」
「……キャラ崩すなよ」
悠里はふふふと笑う。
俺はそんな悠里と別れて自分の学校へ向かった。