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90 花魁ソリウイロ

「私はソリウイロでござんす」

「三日月でございます」

「三日月よ、あんたさんの出方次第では、なんでも教えてあげましょうよ」

「よろしくお願いいたします」


 その目の威圧感にニニンドが逃げ腰になると、ソリウイロはブルフログのことだけではなく、その男と深い仲だという女のことも知っている。その女に魂を掴まれている男のことも知っているという。


「ブルフログとその女、魂をつかまれている男のことをぜひ教えてください」

「教えてやらないこともない。ただ私は、他の女とは違って、簡単な女ではないからね、覚悟しなされ」

「はい。承知いたしました」


 ソリウイロは情報をひとつくれるのに、お金ではなく、ハグとか、キスを要求するのだった。そういうわけで、情報の数だけ、ニニンドはハグやキスをさせたり、また踊ったりしなければならなかった。


 その様子を隣りの部屋から覗いていたリクイは、三回も吐いた。リクイはこういうふうに女が迫る場面も、男女がキスする場面も見たことがなかったのだ。


 ブルフログの本名はことクマシン・アオルべと言い、ソリウイロともうひとりのスノピオニという元太夫の三人が、オルべという貧しい村の出身なのだった。


 最初に都にやってきたのはブルフログで、夜旭町の遊女になったソリウイロと同郷ということもあり、親しい仲になった。


 その五年後に、スノピオニが村から売られてきたのだ。そのスノピオニのもとには、ソリウイロの手引きで大金持ちの殿方が通うようになり、彼が惜しみなく大金をばら撒いたので、この世界から引退できた。


「ブルフログの行く場所を考えるとしたら、どこだろうか。オルベ村には帰るはずがないから、ここか、スノピオニのところだろうよ。ここにはいないということは、あちらだろう」

「では、スノピオニさんの居場所はどこですか」


「それはそなた次第だが、よいのか」

「はい」

 ソリウイロはニニンドの顔を両手で挟んで、顔中にキスをした。部屋の隅で見ていたリクイはもうこれ以上はさせたくはないと思い、もう少しで飛び出して行ってやめさせようとしたが、また吐いた。


 ニニンドが顔についた紅を手で拭こうとすると、ソリウイロがその手を口にくわえた。リクイはニニンドがかわいそうになり、口を抑えながら肩を丸めて震えていた。


「スノピオニが引っ越したばかりの頃に、たった一度だけ招かれた。さぞその屋敷を、自慢したかったんだろうよ。その屋敷ときたら、宮廷にも勝るほどの金ぴかの大御殿で、度肝を抜かれましたよ」

「その屋敷はどこですか」


「三日月さまよ、これ以上のことを知りたければ、あなたもそれなりの覚悟が必要でございますよ」

 とソリウイロが妖艶な横目で睨んだ。

 

 三日にわたる遊女たちとの駆け引きで、ニニンドはすっかり疲れていた。燃えた薪が灰になり、それが水をかぶったような状態で、もう力がなかった。


「さてさて、ここではなんですから、それでは私の部屋に移るとしましょうか」

 ソリウイロが立ち上がってニニンドの手を強く引っ張ったので、彼の頭が揺れた時、リクイが駆け寄った。


「ニニンド、さあ帰ろう」

 とその腕をつかんで抱きかかえた。

 

 ニニンドと言ったのか?

 ソリウイロが怪訝な表情をした。


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