41 ご褒美
「サララさん、いや、サララ、今、ほしいものは何ですか」
サララが臭いに気がついたので、ニニンドは急いで話題を変えた。
「国王がお礼とお詫びに、何でもくださるそうです」
「ほしいものは何かと言われたら、答えは決まっているけれど、高いから」
「いいですよ、何でも言ってみて」
「きっぱり言うと、ほしいのはラクダ。でも、旋風のようなかっこいいラクダではなくて、がっしりとしていて荷物がたくさん運べるラクダ」
「そのラクダで、何をするんですか」
「わたしの夢はシルクロードの商人になること。西に東に、大勢のキャラバンを率いて旅をする」
「すごい夢だなぁ」
「夢ではない。今は砂漠の案内人で、シルクロードを旅している。なりたいのは、キャラバンの親方だ」
「そういうことが、できるんですか」
「できるさ。できると思えば、できるのだ」
「では、ラクダは何頭がいいですか」
ニニンドはラクダの値段というものを知らないようだとサララは思った。まっ、いいか。
「では、三頭」
えっ、姉さん、何を言っているの、とリクイが目を丸くしておののいた。三頭って、すごい値段ですよ。
「それだけですか」
「それだけ。一度には面倒を見切れないから、少しずつ増やしていきたい」
「了解。では、リクイは」
「ぼくは」
リクイが迷っていると、はっきり言いなさいとサララが横腹を突いた。
「いただけるのなら、ほしいものは鳩小屋です。小屋を作る板がほしいです。今、伝書鳩を育てているんです。まだ少ししかいませんけど」
「おもしろいなぁ。板だけでいいのですか。じゃ、鳩はどうします?」
「鳩もいただけるんですか」
「十羽か百羽、どうですか」
こいつは鳥の値段も知らないようだとサララは思った。
「では六羽、お願いします」
「了解。いいなぁ。ふたりには夢があって。私も、いろんなところを旅してみたい。伝書鳩も飛ばしてみたい」
「あんたなら、その気になれば、何でもできるでしょうが」
「考えてみたことがなかったから。サララ、どうして私が役者だと思ったのですか」
「なんとなく。今は自慢の顔に傷がついたから、山賊のほうが似合っているけど」
サララがぷっと吹きだした。
「私は、前はほんものの山賊だったんだ」
ええっ。
「本当ですか」
リクイの口はあきっぱなしになったが、
「なんておもしろい話なんだろ」
とサララは手を叩いて喜んだ。
ニニンドはこういう境遇のなったのは最近のことで、山賊の次には芸人をやって踊っていたと言ったら、やっぱりそっち系だっただろとサララがリクイを得意げに見た。
「それがなんで宮廷なんかに? 国中から王子の肖像画が取り外されて、みんな跡継ぎは誰なんだろうって噂しているけど、次の王子はニニンド、あんたなの?」
「王子じゃないって言ってるだろ。私の息子が王子になるかもしれないけれど」
「あんたには、もう妃がいるわけ?」
「いいや」
それは将来の話で、そこにはいろいろと事情があるのだとニニンドが言った。
「私はなるべく早く、ここを出るつもりなんだ」
「それはかしこい」
とサララが初めて褒めた。
「サララには婚約者がいるんだよね」
「まあ、なんと言うか。リキタは嘘はつかないんだけど、それは本当のことではなくてさ」
サララがちょっと困った。
「サララ姉さんはジェット兄さんが好きなのに、会えば喧嘩ばかりしていたんです。でも、ぼくはふたりが好き合っているのを知っているから、心の声を言ったんです」
「好きなら、どうして、喧嘩をするんですか」
「それはするでしょう。ニニンドは恋をしたりされたりしたことがないんですか」
とリクイが言った。
「ないわけがないだろ。こういう私だから」
「またか。そういう私って、どういう意味なんだよ。自分がかっこいいと思っているわけ?」
とサララが皮肉な笑いを浮かべた。




