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124 サララの思い

  サララは最初に出会った頃のニニンドを思い出す。

 すべすべの肌をしたちょっと生意気な男子。でも、わたしのほうももっと生意気な女子だったけれど。


 今のニニンドは、もうあの頃のニニンドではない。過ぎてしまった時間は儚く、美しく、そして悲しい。あそこに帰りたいわけではないけれど、あの頃のニニンドも、とても愛しい。


 ニニンドがこう言ってくれた。

 この国では、代々、妃のことは公表しない。それがサララの自由にとってよければ、そのままでいい。でも、サララが男子と同じく、公表されることを望むのなら、それもいい。自分は伝統にはとらわれない。

  ニニ、あなたはどうしてそんなに優しいの、とサララは涙ぐむ。

 

 そんなニニンドを好きになるのは難しくない。でも、たくさんの女性が彼を好きだ。その中で、なぜわたしを好きになってくれたのだろうとサララは不思議でならなかった。時には、腹が立った。

 でも誘拐された時、ニニンドが助けに来てくれると信じて疑わなかったし、彼はすぐに来てくれた。どんなことをしても、助けてくれたと思う。心からありがとう。

 

 サララはもう余計なことは考えないと決めた。余計なことって、ほんとうに、余計なことだ。マイナスにしか、ならない。


 いつだったか、サララはニニンドの肩に頭を乗せ、幸せに包まれて、夕日を眺めていたことがある。静かで穏やかで、何もかもが満たされていて、この瞬間が永遠に続いてほしいと思った。でも、それは、今は、少しの時間でよいのだと思った。わたし達は生きているから、動かなければならない。


「そんなにがんばって大丈夫なの?」

 とサララは訊いてみたことがある。

 ニニンドはこう言ってくれた。その日か、その週か、その月に、サララに会うことができるという約束があれば、それを支えに前に進むことができるのだと。


ひとつの国を担わっていくなどということは、自分には重すぎるとニニンドが言っていた。彼は栄華を極めたいとも、金の宮殿に住みたいとも思ってはいない。使命はひとつ、人々の生命を大事にすること。そのためには産業を発展させなければならない。戦争が起きた時、交渉に使えるのは 産業だから。

 国を守るのは大変すぎる。でも、私には、サララがいるからね。


 ニニンドはやさしい言葉を言ってくれる。それがかえってこわいと思うこともある。でも、そのことは口には出さない。わたしは強く、このメンタルの強さが自分の魅力だとわかっているから。

 本当は強くはないのだけれど、わたしは強い人を演じることができる。 それが強い人ということなのかな。

 わたしはこの強さを磨いて、輝かせていくのだ。わたしは、ニニンドの辛さや悲しみを包んであげたいという気持ちに溢れている。


 でも、どんな熱い愛でも、やがては冷めるということは聞いて知っている。このわたしの心に揺るぎが起きる日なんかがくるのだろうか。いいえ、そうはさせたくない。わたしはこの愛を意識して、大切に守り育ていくのだ。


 ニニンドはわたしのことを、希望の灯のように思っている気がする。

「わたしはあなたの灯なんかではない。重すぎるから、やめて」 

 と言ってしまうのは簡単だが、わたしは言わない。わたしはニニンドの希望でいるのだ。それは、わたしが彼の希望でいたいから。


 誰にでもうまくいっている時と、何をやってもうまくいかない時がある。そういうつもりでしたことではなくても、人から誤解され、非難され、寒い闇の中を歩いていかなければならないことがあるだろう。

 でも、わたしはどんな時も灯を消さないで、彼の前を歩いていこうとサララは思う。


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