第2話:出撃準備
格納庫内で新たなメタルコアが静かに待機していた。
その機体は銀と黒を基調とした中量級。右腕には汎用ライフル、左腕には内蔵型ブレード。肩部には多目的ロケットポッドと補助弾倉ユニットが搭載されている。
レイヴンはコックピットに収まり、神経接続の完了を確認していた。
『各システム、起動確認。神経リンク率、基準値クリア。レイヴン、体調データも安定しています』
アイリスの声が、以前と変わらぬ調子で響いた。
「武装構成を確認する」
『右腕:汎用ライフルユニット、左腕:内蔵式ブレード、肩部左:多目的ロケットポッド、肩部右:補助弾倉ユニットを搭載。重量増加に伴い、ブースト効率は約8%低下しています』
「許容範囲だ」
『補足します。被弾耐性について──現在のメタルコア機は標準で“ECS”を搭載しています』
戦術モニターに、青白い光のフィールドが展開されるイメージ図が表示された。
『ECSは微弱なエネルギーフィールドと粒子緩衝膜を併用することで、衝撃を拡散し、機体構造への直接的損傷を軽減します。連続被弾時には飽和し、約6秒間で再構築されます。なお、内部エネルギーを消費しますので、ご注意ください』
「ECSか……時間を稼げる程度だな」
通信チャンネルが切り替わり、ヴァルドの声が割り込んできた。
「過信するなよ。無敵じゃない。カーテンが張られていても、避けるべき弾はある」
「分かっている」
「お前の“視える目”──それがあるなら、使え。だが……使いすぎるな」
その言葉に、レイヴンはほんのわずか、目を細めた。
力の代償。それを、知っているのか。
──今は、問わない。
機体はすでに出撃準備を整え、レイヴンは次の戦場を静かに待っていた。