表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メタルコア~亡霊の目を持つ傭兵  作者: 黒鋼ユウト
10/10

第9話:残響

 戦闘が終わっても、空気の重さは消えなかった。


 崩れた機体の残骸が、風にさらされて軋む音を立てる。

 焦げた金属の臭いと微細な煙が、戦場の名残を物語っていた。


 レイヴンのメタルコアは、静かにライフルを下ろして敵の残骸に近づいていく。


『制御コアのスキャンを開始。損傷はあるものの、情報層の一部にアクセス可能です』


 アイリスの報告に続き、カイロスの通信が入る。


「見事だったな。正直、あれほど連携してくるとは思わなかった。あれ、絶対普通の量産AIじゃねえよ」


「……動きが人間に近すぎた。読みづらかった」


『制御プロトコル内に、非企業規格の暗号群を確認。指令系統が二重に構成されており、通常の無人機とは異なります』


「外部からのリアルタイム制御って可能性は?」


『現時点では断定できません。ただし、指令ログには一部“上書き痕”が存在します』


 レイヴンは、敵機の頭部──センサー群が破壊された部分を見下ろした。

 その表面に、薄く“印”のようなものが焼きついていた。


「……エンブレムか?」


 だが、すぐに砂が吹きかけて痕跡は掻き消えた。


 そのとき、運搬トラック側の通信が開いた。


『護衛各機へ。ルート変更提案──この先十五キロ地点に、建設中の企業前哨施設が存在。現時刻をもって一時避難および補給を推奨』


 カイロスが言う。


「企業基地か。損傷チェックとログ整理にはちょうどいい」


「了承。移動する」


 レイヴンたちは、残骸から一歩引いて再び進路を取った。


 数分後、道路は舗装の切れ目から未整備区域に入り、草の根すら見えない赤茶けた地表へと変わっていく。


 そこに──風に半ば埋もれた、古い施設跡が見えた。

 壁は朽ち、出入口は崩落している。


 だが、施設の隅に並べられた骨組みのような影。


『敵機残骸、複数確認。先程と同型のもの。いずれも機能停止状態』


「……あの連中、ここで展開されてたってことか?」


 レイヴンの言葉に、アイリスが応じる。


『この地点は、ティエル物流の登録ルートにも企業データベースにも存在していません』


 レイヴンは短く息を吐いた。


「じゃあ、誰がここに“置いた”んだ」


 誰が、何のために。


 その疑問は、静かに風に流されていった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ