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自称日本人の異世界放浪記  作者: sayi
第一章 出会い編
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第9話 レオナルドの過去


「さぁ~中に入るぞ」

「あ、あぁ…」


 2人は家に入っていく。

 玄関をくぐり広い土間が有り、左に板張りの囲炉裏がある居間になっておりその右隣に畳が引かれた広間がある。土間の奥には2階に続く階段がある。


 囲炉裏がある居間の奥にはキッチンがありそこだけは最新式のキッチンとなっている。広間の奥にトイレ、風呂があり縁側とつながっている。広間からでも縁側にでれる仕様になっている。


 2階は4部屋あり中々大きい家なのだが上司達が泊まったりする時があるのでこれぐらいの大きさとなる。というか作らされた。


 この家の動力は船から無限に近いエネルギーが供給されており気にせず電気やガスが使用できる。トイレや風呂から出る排泄は船に転送され処理される仕組みとなっている。


「靴は脱いで上がってくれ」

「あぁ、変わった家だな…だが落ち着く匂いだ」

 

 2人は靴を脱ぎ囲炉裏がある居間に入りユリウスは囲炉裏に収納から取り出した炭を置き、燃えやすい小枝を取り出す。


 ライターで小枝に火をつけ炭の間に置く。1本では炭に火が付かないので何本かの小枝を取り出し火をつけては置いていく。


 その間レオナルドは囲炉裏の近くに座り只ユリウスのやっていることを眺めていた。


 炭に火がつき始めたことで小枝出すの辞めユリウスはキッチンに向かおうとするが思いとどまり囲炉裏の上に天井からつるした自在鉤(じざいかぎ)に収納から出したヤカンを掛け中に湖で取った水を収納から入れる


 ユリウスはレオナルドにコーヒーパックとカップを渡す。


「水が沸騰したらコーヒーを淹れて楽にしててくれ俺は夕飯を作ってくる。淹れ方は分かるか?」

「あぁ、淹れ方は休憩の時に見たからわかる。色々とすまんな」

「気にすんな!じゃあ行ってくる」


 ユリウスはキッチンに移動し中央の流し台の横のテーブルに緑玉から白菜、えのき、豆腐、シイタケ、春菊、白ネギ等の野菜を取り出していく。米も忘れたりはしない。


 白玉から調味料を出し、赤玉から調理用の包丁一式と解体用ナイフを取り出し流し台の横のテーブルに置いて行く。


 流し台に紫玉からホーンデビルラビットの死体を出し解体用ナイフで血抜きをし解体をしていく。そのときホーンデビルラビットから5cm大の石が出てきた。


 ホーンデビルラビットの魔石

 Bランクの魔石売れば結構な値段がする。

 魔道具の原料としても使える。


 こんな物があったのかとユリウスは思い何かに使えるかもしれないと紫玉に収納する。


 引き続き、1mあるホーンデビルラビットの肉を切り分け皮は紫玉に収納する。


 肉の半分を赤玉から取り出したミンサーでミンチにしていき流し台の下の棚から調理用のボールを取り出しミンチ入れ、味噌、白ネギをみじん切りにしたものとホーンデビルラビットの軟骨を小さく切刻んだ物を合わせ混ぜていく。


 それを棚から取り出した手鍋に水を入れガスコンロで沸騰したお湯に2cm大の丸状にして団子を作りお湯に入れていく。なんちゃってつくねだ。


 レオナルドは沸騰したお湯をコーヒーパック淹れカップに入れたコーヒーを飲んでいたのだがユリウスの様子が気になりキッチンに移動したがユリウスが凄く集中して作業をしていたものだから声はかけなかった。


 邪魔にならないようにキッチンの片隅で見守っていること2時間ものすごくいい匂いをするものだからレオナルドは物凄く腹をすかせていた。


「何だそこにいたのか?」


 調理を一通り終わらせ包丁一式を研ぎながらユリウスがやっとレオナルドに気づき話し出す。


「すごい集中力だな。見ていて飽きなかったぞ」

『愚主は料理バカですから』

「うるさかったい!」

「何?」

「いや何でもない!気にするな!」

「そ、そうか…で?何を作ってたんだ?」

「なんちゃって水炊き」

「ナンチャッテミズタキ?」

「いわゆる鍋だよ!本当は鳥を使いたかったが、ないからホーンデビルラビットの肉を使った鍋になる」


 そう言うとガスコンロの上にある鍋の取っ手を布巾で持ち歩き囲炉裏の上にある自在鉤にヤカンと入れ替え鍋をかける。ヤカンは収納して置く。


 ユリウスはまたキッチンに戻り棚から茶碗や呑水(とんすい)を2人分用意し箸やフォーク、スプーンも用意しだす。


 ここでレオナルドはユリウスに声を掛ける。


「何か手伝うことはないか?」

「う〜ん…じゃあこの呑水と箸、フォーク、スプーン持っていって」

「分かった」


 レオナルドは言われたものを囲炉裏の居間へと持っていく。ユリウスは茶碗に炊飯ジャーで炊いた米をよそい始めこれも持っていくように言う。


「この白い粒がいっぱい入ったものは何だ?」

「あぁ~米だよ!米を炊いたやつ」

「米か…【ジャシアーノ皇国】で食されてるのは聞くが実物は初めてだな!」

「ジャシアーノ皇国か…いつか行ってみたいものだ」

「ジャシアーノ皇国には確か刀剣聖【ソウジ・オキタ】っていう【七英傑】が居たはず」

「ソウジ・オキタ!?」

『あの沖田総司か調べる必要がありますね』

(だな!頼むばい!)


 ユリウスはレオナルドに早く茶碗を広間に持っていくように促す。レオナルドは知り合いか?と聞きたがった深くは聞かないことにした。


 ユリウスはキッチンの冷蔵庫からキンキンに冷えた2本のビンを取り出し棚からグラス2つと栓抜きを出し、栓抜きでビンのフタを取り栓抜きをしまう。


 グラスとビンを持ちレオナルドの待つ広間へと移動する。

 腰掛けていたレオナルドにグラスとビンを渡しユリウスは囲炉裏を挟んでレオナルドの正面に座る。


「このビンも高価なものだな…で?瓶の中身は何だ?ほのかにアルコールの匂いがするが…」

「それはビールだ…エールよりラガーだなぁ」

「ラガーか!貴族や大店の商人、高ランクの冒険者ぐらいしか飲めない高価な酒だな」

「まぁ飲んでみろ。酒好きなら堪らないはずだ」


 2人はグラスにビールを注ぎ飲み始める。

 レオナルドは若干緊張しながらも一口飲み目を目開き驚きながらもゴクゴクっと飲みグラスを空にする。


「美味い!のどごしが最高だな!ヒンヤリと冷えているのもいい!ビールだったか?これは最高に良い酒だ」

「分かったから飯も食え!」


 ユリウスは白玉の収納からオタマを取り出しレオナルドに渡して鍋の中身を呑水によそうように促す。


 レオナルドは鍋の具材を呑水によそった。

 それを呑水事口に運びまずスープからすする。

 一口すすりまた目を目開く。驚くほどのおいしさだ。スープの味は鶏ガラがベースなのだろう。


 ホーンデビルラビットの肉の出汁も合わさっても臭さがない。よほど丁寧に血抜きをしているのだろ、とにかくスープと出汁が合っていた。


 レオナルドはフォークを使って具材を食べる。

 これまた美味い。具材にもスープが染み込みいい味を出している。


 その光景を見てユリウスは微笑むがあるものを思い出しキッチンに移動し冷蔵庫からポン酢が入った容器と刻んだネギが入ったタッパー、もみじおろしのは入ったはタッパーを持って広間へと戻る。


「ユリウス!この団子コリコリしていて上手いな!癖になりそうだ!」

「つくねな…鶏肉使ってないからなんちゃってつくねだがな」

「そうか、なんちゃってつくねか…今度鶏肉のつくねを作ってくれ。比べてみたい!」

「機会があればな」


 それからレオナルドはユリウスにポン酢とネギもみじおろしを呑水に入れて鍋の具材をすくいつけて食べ「これも美味いな」と言いながら白米も食べユリウスと話しながら食べたり飲んだりを繰り返していた。


 ユリウスは誰かと一緒に食事をとるのは久しぶりと言うか上司達と後輩と食べる以外で他人と食べるのは何年ぶりだろうかと思う。


 ユリウスの手料理をレオナルドが食べ素直に美味いと言って食べてくれることがユリウスにとって嬉しく思う。


 料理の師匠に教わったことを守り作り続けた甲斐がある。ユリウスは何だか師匠を褒められているようで誇らしく思う。それぐらい師匠を尊敬している。


 何だか良いもんだなぁと思うユリウスだったが転移装置を設置すれば街に送ることができる。

 それまでの関係だと思いなおす。


 そんなことを思っていると、レオナルドがいきなり真剣な表情になりユリウスに話しかける。


「俺は孤児院出身でな10歳の洗礼の儀で雷戦士という珍しい職業(ジョブ)についたのが分かったんだが、同じ孤児院の幼馴染が【聖騎士】の職業で【聖グラナルド教国】に連れて行かれてな…その時お互い強くなっていつか会おうって約束したんだ」

「そっか」

「そこから必死に魔法の勉強をしたし剣や身体の鍛錬もした。強くなるために!で、15歳で成人して故郷の近くの迷宮都市ウィンベルで冒険者ギルドで冒険者になった。その方が手っ取り早いし孤児院に金を送れると思ったんだ。」

「恩返しの為か?」

「あぁ、そうだ。それから暫くはソロでやってたんだが【陽光の剣】って言う当時Cランクのパーティーに誘われたんだ」

「新人からしたらCランクでも嬉しいだろうな〜」

「その通りだ。陽光の剣にしてみれば俺の珍しい職業につられたんだろな〜。俺が入った後、1年で陽光の剣がBランクに上がってな。そこから皆変わっちまった。表面では良い人を気取り、裏では他人を見下すようになっていった。それでも俺は仲間を信じた!またあの気さくな奴らに戻ってくれるって…」

「立場が人を変えるなんてザラだから」


 レオナルドは3本目になるビールをグラスにそそぎ入れ一口飲み一息つく。


「そこから2年でオレはCランクに上がりBランクも間近と噂されるようになっていったんだ」

「3年でCランクに成るなんて早い方じゃないのか?」

「あぁ。それが気に食わなかっただと思う。今日ウィンベルの近くの森の調査依頼があって森に入って暫くして取り押さえさられ転移石で魔獄の森に飛ばされた」

「裏切られたわけか。その冒険者ギルドもグルかもな」

「あぁ……」


 レオナルドは嫌な記憶を思い出したのか苦虫を噛み潰したような表情になりそれを飲み込むようにビールをあおるように飲み話を続ける。


「飛ばされる前に散々言われた。仲間と思ってないとか目障りだとか鬱陶しい、お前が居なくても俺たちはAランクになるだとか色々言われたよ」

「散々だな。その転移石っていうのは気軽に手に入るのか?」 

「いや【大賢者マーノ】様や【魔法国セル】で作られた物やダンジョンから極稀に出る物がオークションや闇市で手に入れることはできるが高価な物だ」

「飛ばされる場所はランダムか?」

「いや。事前に飛ばされる場所を登録する必要がある。恐らく魔獄行きの転移石を偶然手に入れたんだろ」

「迷宮内で殺せば後は楽だろに何で高価な物を買ってまでする必要があったんだ」

「奴らにもメンツがあるからな。邪推されるのを嫌ったんだろ!それに飛ばされる前に奴らが言っていた俺が強くなるために修行に行くって言えば信じるだろうとな…俺が強くなることに固執していたのを他の冒険者達も知っていたからな」

「フン!くだらんプライドたい!そんな物捨ててしまえば良かとに!そもそも自分たちでAランクに上がれるならレオナルドをパーティーから抜けさせれば良かったやろうに!これだから欲塗れの人間は好かん!!」


 レオナルドは突然豹変したユリウスを見て驚くがこれが素なのだと感じた。そして自分の為に怒ってくることに対して嬉しく思う。


 自分のことを信じて貰うには自分のことを話して信じて貰わなければと思い意を決して話して良かったと改めて思うと笑みがこぼれてしまうレオナルドであった。

 


 

 




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