第28話 事後処理
そんな思惑を持っているリリムに対してキントレス辺境伯爵は内心嫌で仕方ないが今回の失態で自分の地位は地に落ちかけている。
王族を危機にさらしたのだ下手したら家が取り潰しになりかねないが娘であり長女のリリムが戦場に少ない人間で挑んでいて成果を上げている。
その貢献で家の存続は王太子自ら許可されているが条件がリリムを辺境伯爵にする事だった。こんな屈辱は今までの経験上ない。
だからリリムの思惑も見破っているがそれにのるしか自分が隠居したとき楽ができない。どんなに屈辱だろうとのむことにする。
「い、いいのではないか。魔獄の魔物など手に入りにくいのでな。リリムが決めなさい」
「それならば王家も欲しいな。ユリウス、どうにかならんか?」
王太子もこの話にのっかってくる。王家としても肉は欲しいがリリムと同じ考えだ。
「しょうがなかったい!そうば――」
『愚主。ここからは私が交渉を行います。足手まといは下がっててください』
「いや。交渉は俺にでも…」
『いいえ。愚主に任せると足元を見られますのでしないでください。愚主は黙って王太子殿下とリリム様に通信機を渡しておけばいいのです。それぐらいできますよね?ガキじゃないんだから…ハァ〜』
そんなやり取りを通信機越しに聞いていた者たちは笑いをこらえていた。この2人のやり取りはいつもの事だと思うがエルネシアやドクトリウム辺境伯爵は最初戸惑っていた。
だが徐々に慣れてきている。エルネシアとドクトリウム辺境伯爵は今回の戦いでクリシュナからサポートを受け助けてもらっている。
二人だけじゃなくレオ達も助けられているのでクリシュナには頭が上がらない。クリシュナはユリウスだけに辛辣なだけで後は普通だ。
これが日常だと思い始めている。
それぞれが思っている頃ユリウスは王太子とリリムに通信機を渡し付け方や使い方を教え渡す。
そこで見ていた黙っていられない男フランクが吠える。
「おい。平民!俺や父上の分はないのか?言わずともよこすのが貴様の仕事であろうが!さっさとよこせ!」
「バカか?お前ら親子に信頼というものがあるとでも思っているのか?あるわけないだろが!よく考えて物言え」
『愚主。言っても無駄ですよ。バカは死ななきゃ分からないですから!あっ!死んでも無理ですね。残念!』
クリシュナの声は通信機でしか聞こえないのでフランクには聞こえないが王太子とリリムが装着した瞬間初っ端がこれだ。笑いが出てしまう。
「バカは無視して交渉は宜しく!」
『承知しました』
クリシュナに交渉を任せユリウスはドクトリウム辺境伯爵に情報をはいたか聞くことに。
「リチャードのおっさん情報は?はいたんね」
「いやまだだな。かたくなでな…困ったものだ」
「なら俺がやるばい!1時間で吐かせちゃる」
「ほんとうか?」
「そんかわり、俺のは残酷よ?良か?」
「それで構わぬ。ユリウスの好きなようにしてくれ」
それを聞いていたフランクが黙っていられない。
「その仕事は私の仕事のはずです!必ず情報はかせます!」
「1日かけて無理だったのだ。ここはユリウスに任せよ。ユリウスが無理ならフランク卿がやればいいそれだけの話だ」
「閣下が言われるのであれば…」
フランクはドクトリウム辺境伯爵に渋々了承する。フランクですら無理だったのだ平民にできるはずがないと思う。
しかも1時間で情報を抜き取ると言い出した。
到底できるとは思えない。
ユリウスが着替えに行き待つこと5分、白衣の中に白色のエプロンを着てやって来た。
「さぁ、行こうかね」
ユリウスに促され城の地下に行くことに。
行く人間はドクトリウム辺境伯爵、キントレス辺境伯爵、フランク、リリム、エルネシア、王太子とその護衛2名となる。
こんなに多くになるとは思わずそもそもリリムとエルネシア、王太子は来るはずではなかったのだが見るのも務めと言いついてきた形になる。
ユリウスが到着するとギブソン・デザイヤーとゲイリー・デン・ビッツヘルンは手足を鎖に繋がれており身動きが最底辺のことしか出来ず部屋は向かい合わせだった。
ゲイリーの手足には魔力を封じる枷がされており魔法が発動できない状態だ。
ユリウス達の姿を見るやいなや王太子やエルネシアを見つけ醜い笑顔を取ってつけたようにして弁明をしようとする。
「これはこれは、ラインハルト王太子殿下にエルネシア王女殿下ではありませんかこんなむさ苦しいところに来るとはいけませんぞ!」
「なぁに、罪人の尋問に来たまでなのだ」
「兄上の言う通りだ。罪人である貴殿達の情報が欲しくてな」
二人がそう言うとゲイリーは余裕のある表情でやれやれと言った感じで首を横に振り両手を上げる。
「違いますぞ。私はギルレア公国の兵が突如として現れ何用かと伺いに行った次第です。そこでいきなり戦闘が始まり誤解をされた大賢者殿と戦うことになったのです。決して――」
「ぎゃーーーー!」
ゲイリーが弁明しているときいきなり叫び声があたり一面響き渡る。その声がした方に目線を送るとギブソンが左手をノコギリで斬られているところだった。
一同は驚愕する尋問のはずがこれでは拷問だこれでは死んでしまう。そう一同が思ったとき左手が斬り落とされ藻掻き苦しむギブソン。
誰かがやり過ぎだと言おうとしたときギブソンの傷はまたたくまに癒え左手もつながる。傷は癒えたが痛みはあるようでユリウスを睨みつけていた。
ユリウスは返り血を浴びながら笑顔でギブソンに近づき話す。
「これくらいで音を上げてもらっては困るよ!その反抗的な目がいつまで続くか見ものだね!」
満面の笑みで言うユリウスにエルネシアは耐えれず聞いてしまう。
「ユリウス殿いくら何でもやり過ぎだ!」
この場のドクトリウム辺境伯爵と王太子以外は同感だと頷いている。
それ対して笑みを引っ込め真顔でエルネシア達に振り向き応える。
「やり過ぎ?違うね。コイツらは敵なんよ。敵に情なんかいらんばい!」
「だが…」
「コイツらは確実にシュナイゼル王国の内情をハルハンドに渡しているしその他にも色々やっているとよ!その証拠に奥の扉開けてみ?」
エルネシアはユリウスに促され奥の扉を開けてみるとそこには十数人の人が牢屋に入れられていた。
「これは?全員罪人なのだろうか?」
「いいや。ここの領外から連れてこられた違法奴隷たちばい!しかも亜人ばかりのね!」
「なっ!?」
これには全員驚愕するばかりだ。この国では奴隷制度はあるがそれはきちんとした法があって成り立つもの違法奴隷等御法度だ。
「父上!!」
これにはリリムも父であるキントレス辺境伯爵を疑わざるを得ない。何しろ城に囚われているのだ。城主である者が知らないわけがない。
「し、知らない!い、い、違法奴隷等私は知らない!」
「では何故、何故ここに居るのですか!?」
本当に知らないのかキントレス辺境伯爵は焦りながら応えるが尚も言い寄るリリムの迫力は凄いものである。
「わ、私が知っているのはざ、罪人をギルレア公国に送り鉱山奴隷にするとしか聞いてない!それ以外は知らん!」
「本当ですか?」
「ほ、本当だ!」
しらを切っている様子がないキントレス辺境伯爵にホッとするリリム。
そこでエルネシアは疑問に思ったことを口にする。
「キントレス卿それは誰からの要請だ?」
「は、ハーゲン宰相閣下です…」
エルネシアの疑問に応えづらそうに言うキントレス辺境伯爵。その言葉に全員がゲイリーに視線を向ける。
「父上がそんな事するはずがありません!何かの間違いです!証拠はあるのかキントレス卿!」
「さ、宰相閣下から書状があります」
「その現物はあるのか?」
そんなものないと言った表情で自慢気に話すゲイリー。
「あ、ありますぞ!厳重に保管してありますので!」
「そんなのなかばい!全部この執事が処分しとるやけん、ね!」
「ギャーーー!」
そう言いながらギブソンの両目を切りつける。
あまりにも非道で目を背ける一同だがドクトリウム辺境伯爵と王太子だけは顔色変えずユリウスの行いに向き合っていた。
フランクは耐えれず2人にどうして平気なのか聞いてしまう。
「どうしてお二方共平然としていられるのですか!これはあまりにも非道です!止めるべきです!」
これに対して王太子は威厳のある顔でフランクに言い聞かせる。
「平然か…これでも王族だ。こう言うのはしっかりと目に収めるのが王族の務め、そもそもコイツらは敵だ!手段は選んでられん!」
「王太子殿下の言う通りですな。儂も敵兵に容赦などせん!儂でも同じようにではないが痛めつけ情報を吐かせたりする!ユリウスは傷を癒しているのだ良心的に思うがな!」
「そんな…それでも傷を癒そうが関係ありません!こんなの拷問です!」
2人が当たり前なことをいうのに対して負けじとフランクは反論する。
それに対してドクトリウム辺境伯爵はフランクに対して質問をする。
「では卿はどうするのが正解かな?」
「それはじっくり話を聞き時には鞭で打ったりとかです!やりようはあります!」
それに対してドクトリウムはため息をしてフランクを見つめながら応える。
「よいか!卿のやり方では甘すぎる!相手は暗殺者だ!訓練で痛みの態勢など態勢を持つものばかりだ!その方法では情報は吐かんぞ!」
そんな二人のやりとりが行われている中ユリウスは黙々と尋問という名の拷問をしていた。
手足を斬り落としては治し身体を痛めつけては治すを繰り返す中死ぬ寸前の所まで痛めつけられるギブソン。
皆が見守る中それを繰り返すこと20分ぐらいでギブソンの心が折れギブソンの知る情報を話した。
「良し。次はお前だ!」
満面の笑みでゲイリーを見つめるユリウス。
ギブソンが拷問されているのを見て最初は余裕があったが次第にこれが自分にされると思い恐怖し始めユリウスの言葉を聞き失禁する。
「く、く、くるな!私を誰だと思っている!」
「ゲイリー・デン・ビッツヘルンでハルハンドの間者」
「そ、そういう事ではない!わ、私はビッツヘルン侯爵の嫡男だ!そんな高貴な私を平民の分際で触るな!」
「喚くなゴミが!アンタがこの国の人間でも無ければゲイリー・デン・ビッツヘルンでもないくせに!」
「「「「「「なっ!?」」」」」」
ユリウスの言葉にエルネシア達とゲイリーが驚く。
「驚いたねぇ〜そんなスキルがあるだなんて相当邪神に好かれているようだ」
「邪神ではない!あの方こそこの世界の真の最高神様だ!あっ!」
思わず言葉に出してしまったゲイリー。それに対して笑みを深め言い寄る
「ほ〜う!邪神を女神ねぇ〜。やっぱり信者じゃねえか!」
「ち、ち、違う!これは…」
「楽になっちゃいなよ。邪神と呼ばれて苛ついてるくせに!」
「クッ!そうだ!この世界の真の女神はベアトリーチェ様だけだアクアジーネなど邪神に過ぎん!700年前邪王が邪魔しなければこの世界はベアトリーチェ様の物だったのだ!」
ゲイリーの言葉に全員言葉を失う。シュナイゼルや他の国伝わる話と違うからだ。
「ほ〜う。気になる話だ。じゃあ全て話してもらいましょうか!」
それまで自慢気に笑っていたゲイリーだったが拷問器具を手に取り迫りくるユリウスに再び恐怖を思い出し震え上がるのだった。




