第26話 覇気
傷ついたレオを回復させレオの体を抱きしめた状態で昔を思い出したのか涙を流していてそれにユリウスが気づくと「何故?」と呟く。
「何故涙を流す?兵など駒に過ぎぬ!」
「やかましいわ!人の心を無くした愚かな人間が!仲間を思って何が悪い!それで良いんじゃ!それが人の心じゃぞ、ユリウス!」
「フン!鬱陶しい!」
ユリウスを馬鹿にするジャックだがそれを真っ向から否定しながらユリウスを諭すシド。
それでも尚ユリウスは呆然としていた。
その時クリシュナがユリウスに語りかける。
『それが愚主が忘れようとしていた仲間に対しての思いですよ。いつの間にかレオ様達は愚主にとってかけがえのないものになったのでは?』
「…」
『いつまで過去を引きずるおつもりですか?いい加減前へと進めユリウス・グレイベン!』
「…わかっとうばい。もう失うわけにはいかん…」
戦況は数で押すハルハンドが有利でノア達やドクトリウム兵とキントレス兵も傷つきながらも戦闘を行っている。
そこにシドを競り押し吹き飛ばしユリウスにとどめを刺そうとするジャック。
「戦場で敵に背をむけるなど剣士失格だ!潔く死ね!」
ジャックがバスターソードを振り下ろす。
「ギャアギャアうるさかったい!このボケが!!」
ユリウスがジャックに顔を向けて睨見つけ叫ぶ。
その瞬間ユリウスの身体から覇気が発生し一気に戦場へと広がる。
ジャックは振り下ろした剣をユリウスに当たる寸前の所で止めてしまう。いや、止まってしまった。
「こ、この覇気は…まさか!?」
ジャックはユリウスの覇気を受け震えが止まらない。それは戦場にいたハルハンド兵など恐怖状態に陥る程に。
「シド!レオを連れて下がれ!コイツは俺が何とかする!」
「ユリウス…」
「ッ!?了解じゃ!」
シドは一瞬戸惑うもユリウスの指示を受けレオを連れて後方へと下がる。
そこでキッドから神聖魔法で治療を受けていたドクトリウム辺境伯爵とディランにも指示を出す。
「リチャードのおっさんとディラン!ここはもうよか他を頼むばい!」
「おっさんか…ガハハハ!この儂をおっさん呼ばわりか面白い!心得た!後は任せたユリウスよ」
「へ〜。ドクトリウム辺境伯をおっさん呼ばわりか肝が据わってるじゃねぇか!後は任せた!」
「ユリウス殿!!」
そこにユリウスの後ろで戦闘していたエルネシアが声をかける。
「姫さんどいてろ!ここからは本気を出す。アンタを守りながらだと邪魔にしかならん!」
「ユリウス殿…分かった!健闘を祈る!」
邪魔と言われ己の力不足を実感したがここは戦場、悔いいる場ではない。ユリウスの指示を受けゼフ達と共に他の戦場へと向かう。
「何故…貴様のようなやつが皇帝陛下と同じ【覇王覇気】が使える!?」
「あぁ。これか…これはどうやら俺の父親の血筋が原因やね!」
「何?それは皇帝陛下の血筋か?」
「違うわ!本当…俺にとって苦手な人の血が流れてるもんやな…」
心底嫌な表情で応えるがジャックはそれどころではない。自分の仕える人物だけが使える覇気だと思っていたのが目の前の弱そうな人間から放たれた。
ジャックにとって信じれない事実だったがここは戦場、気を引き締めなければならない。相手は覇王覇気を使う相手で気をぬけない。
ユリウスはジャックを睨めつけながら集中する。魔力を使った魔法の身体強化だけでなく気を使った闘気を身体に纏身体強化の上乗せをする。
訓練時この方法を試したが一度も成功したことないが覇気に目覚めた今ならば感覚が研ぎ澄まされ出来ると判断し行った。
結界体内の気と魔力が調和しユリウスの力が増している。ジャックはそんなユリウスの変化にいち早く気づき一気に瞬歩で間合いを詰め斬りかかる。
それを神速でかわすユリウス。
「神速か!?」
「我流刀剣術・乱舞五月雨」
ユリウスが技を出し手数を増やして攻撃をするが一撃が重く受けるジャックは余裕がなくなりつつある。
「一撃が重いか!クッ!鬱陶しいわっ!!」
ジャックが痺れを切らし叫ぶと覇気が飛びユリウスは後退する。その間態勢を取り直しユリウスに斬りかかるため魔力を高める。
「それは気を使っているのか?面白い技を使うものだ。それでは私も本気を出そう!」
高めた魔力を放出しさらに身体強化し素早くユリウスに接近し振り下ろしそれを避ける。
振り下ろした剣が地面に刺さり直ぐに抜く。
それを見逃さず直ぐ様斬りつけるユリウス。
「アンタも神速をつかえるとわな」
「フン。剣士なら当たり前だ!そこから技を磨いて使いこなして二流!極めて実戦で使いこなし相手に負けないこそ一流!」
「ほ〜う。俺の上司は剣を抜く前に勝敗が分かるがな!」
「ほう。そんな剣士が居るなら一度殺り合いたいものだ!」
力は均衡していたが慣れない闘気と魔法の複合で身体の消耗が激しい為次の一撃にかけるため後退し集中する。
だがこれでもジャックを倒すには今の自分では足りないと判断したユリウスは月光で自分の掌を切り血を月光にたらす。
「契約に基づき我が血と我が声に応えよ。目覚めんかい月光!」
瞬間禍々しい波動が月光から放たれこれにはジャックも「魔刀か?」と身構える
「久しぶりやね月光。早速ばってん力場してもらうばい!」
「おうおう!久しぶりの起床にいきなりかよバカ主!ずいぶん見ねえ内に弱くなったと思ったら義体か?にしては体内に魔素があるが?」
「話は後で幾らでもしちゃぁたい!今はあいつば
何とかせんといかん!」
「ずいぶん強そうなやつだなぁ!それにあの剣も中々のもんだが問題ねぇ!この俺様にバカ主の今の力上乗せしてみろ!対応してあんな剣斬ってやるぜ!」
「頼んだばい!」
この月光長い年月を経て妖刀と化しておりユリウスが主になってからは魔素を使った魔術を使い敵を斬ってきたこともあるため順応性高い。
月光を使う代償として生命力を持っていかれるがそもそも生体強化して寿命が伸び生命力が強いユリウスにはなんてことはない。
だが今は義体の状態いくらアストラル体が強かろうが今の状態では代償はあるが今はそんな事言ってられない。
本気を出さなければこっちが死ぬ。今できる最大限の力を持って対応せねばいけないしこの先もっと強い相手がいる。
その為にもこの場を乗り切り己を鍛えねばならない。剣王だろうと勝って見せなければ何が零だ!とユリウスは考えていた。
ユリウスの闘気と魔法の力を吸収し月光の持つ妖刀の力が合わさりものすごい力の波動を放つがジャックは自分の持つ魔剣には遠く及ばないと思っていた。
ジャックは魔剣を集めるのが趣味で色んな魔剣を持っている。中でもこの魔剣は【魔鉱石】と【ミスリル鉱石】の配合で出来ていて数ある魔剣の中でもこれが2番目に使いやすかった。
例え相手が得体のしれない魔刀であろうが見た所ただの鉄だ負けるわけがないと思案する。
「これが今の俺が出来る最大の一撃ばい!」
「良かろう。受けて立つ!そしてその後死ね!」
上段の構えをしさらに集中し闘気や魔力を高めそれを月光が吸収し己の力へと変換し最高点に達した時、瞬歩で間合いを詰め振り下ろす。
「我流刀剣術・天落とし」
それを受け止めようとした時ジャックが持つ危険察知が警報を鳴らすが最高の技を受けそれを跳ね返してこそ最高の剣士であり自分は剣王だ。
相手はそこそこできるようだがまだまだだと、こんなもの跳ね返してくると言わんばかりに危険察知を無視して真っ向から受け止める。
ガキーーン!!
「なっ!?」
ユリウスの一撃を受け魔剣と右手を斬り落とされるジャック。
ジャックは侮っていた。こんな剣士に負けるはずがないと…だが現実は違った素直に危険察知を信じ避けるべきだったのだ。
現に魔剣は真っ二つに折れ右腕も斬り落とされる始末だ。ここでやっとジャックはユリウスが自分と同等の力を持っていることに認めざるを得ない。
ユリウスは幼い頃から刀の訓練をしていたし15歳から環境が変わり今の上司達に地獄のような訓練を受けていた。
いくら義体とはいえ用心深いユリウスは地球用の義体であっても本体ほどではなくとも生体強化なしでそれのランク1に相当するくらいには鍛えている。
そこに魔力と魔法の未知である力が合わさりまだ未熟であるものの覇気に目覚めて力が倍増した今のユリウスはジャックに匹敵する程の力を覚醒させた。
力を使いそこに月光の代償もありその場で膝をつくユリウス。
ジャックも利き手を斬り落とされたが左手で折れたバスターソードでユリウスにとどめを刺そうとする。ここでとどめを刺さなければ今後我が国にとって脅威になるやもしれない。
ましてや覇王覇気など皇帝陛下以外が持っていてはいかんと考え折れた剣をユリウスの首に振り下ろす。
ガンッ!
「それを許すとでも思ったか剣王よ」
そこにシドがユリウスを守るように間に入りジャックの剣を受け止める。
するとジャックの首に糸が絡みつく。
「チッ!」
それを折れた剣に魔力をまとい切り難を逃れるが追い打ちをかけるように魔法と剣撃がジャックに襲い来る。
それを避け呼吸を整え構えを取り周りを見る。
そこにはシドに加えクロエ、マーノ、ノアが構えていた。
「まさか破壊五武将の3人が居るとはな…それに破壊王の武器まで居るとは…」
「これで形勢逆転じゃ!」
「久しいですね。剣王!ユリウスさんは殺させませんよ!」
「こっちはあらかた片付いたわ。後は手負いのアンタだけ!ユリウスを格下と油断したアンタの落ち度ね!」
「アタイの事まで覚えてくれてるは嬉しいがその子は殺らせないよ!」
「チッ!厄介な!」
その時上空から戦斧を持ったシノがジャックめがけて振り下ろすそれを片手で受け止めるジャック。
「クッ!貴様あの時の小娘か…ずいぶん力をつけたものだ」
「煩い!お前もガキだった癖に!見た目は変わらない!」
「私は聖人だからな!あの時から年はとらなくなったのだ」
「どうでも良い!死ね!」
「これしきで殺れると思うなよ小娘が!」
ここで剣王覇気を飛ばしシノがのその余波で飛ばされる。
何とか態勢を整え追撃しようとするのをノアが止める。
「よしな!いくら手負いでもシノでも敵う相手じゃないよ!」
「でも…」
「大丈夫さ!こっちはアイツと同等の奴が3人もいる!負けるわけないさね」
シド、クロエ、マーノの3人が追撃をしようとした時3人に魔法が飛んでくる。
「「将軍閣下!」」
ジャックの下に騎士と魔法師がやって来る。
「余計な真似を!」
「閣下ここは引きましょう!」
「そうですその状態では満足に戦えません!早くその右腕を直さなければ!今閣下に死ねられたら困ります」
「クッ!仕方ないか…」
ジャックがいい終えると魔法師が転移魔法を放とうとする。
それを逃すマーノではなく直ぐ様妨害をするのだがそれをユリウスが止める。
「よせんねマーノ!」
「っ!でも…」
「今は良い!次に会ったとき俺が殺る!」
状態が悪くても不敵な笑みをジャックに向ける。
それを受けジャックは右手を拾いこちらも不敵な笑みを浮かべながらそれに応える。
「鑑定で知っているが改めて名を聞こう!」
「俺はユリウス・グレイベンばい!アンタは?」
「そうか…ではそれに応えよう!我が名はジャック・グレ・ディカルディア!剣王にして皇帝陛下に仕える剣なり!貴公の名、覚えておこう!次は最高の剣で貴公を殺す!」
「分かった!ジャック!今度は最高の状態で戦おうや!今より強くなって最高の状態でジャックを倒す!覚えとけ!」
「承知した」
2人が語り合っていると魔法が発動しジャックは部下とともに消えるのだった。




