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自称日本人の異世界放浪記  作者: sayi
第一章 出会い編
26/33

第25話 剣王


 そもそも用心深いユリウスはフランクにもキントレス辺境伯爵にだけでなくシュナイゼル王国中に偵察機が監視している。


 勿論他の国にも偵察機で情報収集を行っている。その情報はクリシュナが管理しており通信機を渡されている人なら知る事が出来る。


 現時点で通信機を持っているのはレオ達魔獄の森、ユリウスの家付近に住む者達全員。そしてフランクを除くエルネシア一行とドクトリウム辺境伯、その執事のユータスと嫡男のマルクスの3人。


 昨晩フランクがキントレス辺境伯爵に通信晶で連絡しているのを見計らい皆に通信機を渡していた。通信機をつけその後はクリシュナが事を説明し使い方も習い何とか使えている。

 

 合図がなかったのも通信機を使い脳内でやりとりを行っていたからだ。


 ラインハルト王太子に合う時も近くにゲイリーがいない時を見計らって接触し説明し納得してもらい呼び捨てさせるぐらいにラインハルト王太子に信頼されている。


 エルネシアがラインハルト王太子にユリウスがアクアジーネの使徒であることを伝えているのが大きい。


「本当に余計な事ばっかその執事に話しよってからに!事が大変なことになったばい!」

「素がでてるわよ!」

「おっと失敬!」


 剣を向けられたまま余裕で話すユリウスとマーノ。ユリウス達を囲む兵たちはキントレス辺境伯爵が取り囲まれた時から動揺している。


 今もどうしていいのか判断をどうしたらいいか迷っている。そこでラインハルト王太子が兵達に向かって命令を出す。


「今直ぐその剣を治めよ!でユリウスよ、何故そこの執事だけ取り押さえているのだ?」

「それは…ソイツがハルハンドの手先だからですよ、王太子殿下!」

「何!?」


 ユリウスの話を聞き驚くラインハルト王太子と護衛、そしてキントレス親子。

 特にキントレス辺境伯は事実が受け止められない。それが事実ならキントレス辺境伯はとんでもないことをしでかしたかもしれない。


 それを受け入れず執事に問いかけるキントレス辺境伯。


「嘘であろう!ゼラス!嘘だと言え!」

「…」

「何とか言え!!」

「そんな事ありませんぞ。そんな平民の事など信じてはいけません」

「であろうな!平民の言葉――」

「本名ギブソン・テザイヤー。ハルハンドの偵察兵であり暗殺部隊の一人。昨晩剣王に暗殺失敗やこちらの策を報告しハルハンドの作戦を変更している、そうだろ?ギブソンさん!」

「クッ!?」


 疑問をゼラス改めギブソンに質問するとディランの拘束をぬけダイン、ペティーを突き飛ばすと懐にある短剣を取り出し王太子に向かい刺そうとする。


「死ねーー!ラインハルトーーー!」


 勢い良く刺そうとしたギブソンであったが…


「させるかよっと!」

「グハッ!」


 ユリウスが間に入りギブソンの首に手刀をいれる。失神させないくらいの力で無力化させ手足を強く拘束する。



 すると今度は歯に詰め込んだ毒で死ぬことを選ぼうとして自殺を選ぶギブソン。直ぐに苦しみ始めるがユリウスが再生魔法で治してしまう。


「そう簡単に死ねると思うなよ」

「クッ!」

「兵よ。この間者を縛り牢屋に入れよ!」

「ハッ!」


 ユリウスがギブソンに不敵な笑みで言うと死ねないことに驚愕と共に戦慄した。

 ラインハルト王太子が兵に指示を出し連れ出されていく。


 キントレス親子は今だ事実を受け入れず何かの間違いだと呟くが次に入ってきた人物によって最悪の事態になる。


「父上大変です!ルグルズ平原に6000のギルレア公国の兵と思わしき者達が突如現れました!現れた瞬間林に向かって火魔法を放ち出てきた我が兵が銃の攻撃を受け負傷しております!」


 凛々しい騎士姿をした女性が報告してキントレス辺境伯爵はまさか本当になるとは思っておらず焦る。


「り、り、リリムそれは本当な、なのか?」

「事実です!ゲイリー宮廷魔法師殿はその軍に合流しております!今はここに向かって進軍中です」

「そ、そんなの嘘だ!」

「フ、フランク何処にいくのだ!」

「じ、城壁に向かうのです!この目で確かめなければ!」


 フランクは向けられていた剣を払い除け城壁へと向かおうとした時マーノがフランクの前に現れ阻止する。


「どけ!今直ぐ確認せねば…」

「今から飛ぶから安心なさい。あなたが受け入れなかった事実を受け入れることね!」


 マーノがそう言うと応接室にいた全員城壁の上へと飛ぶ。

 飛んだ瞬間見た景色は今まさに軍が侵攻している風景だった。


 それを見たフランクとキントレス辺境伯爵は絶望していた。


「そんな…」

「まさか…本当に…」

「アンタがベラベラ喋ったおかけで兵を増強してやってきたわけなんだが奴らマーノの魔法に警戒して結界の準備もしてる!さぁどう切り抜ける?キントレス辺境伯爵」

「父上、フランクこの事を事前に知らなかったのですか?」

「い、いや…私は知ら…」


 責任放棄の為否定しようとしたがエルネシアが憤慨し怒声を浴びせる。


「今更知らんでは通らんぞ、キントレス卿!散々平民云々と言って信じようとせず挙げ句の果てには我々の策を台無しにして相手を強化させてどうするつもりだ!フランク一昨日言ったなお前に責任が取れるのかと」

「そ、それは…」

「それをお前は父親に報告し我々を邪魔した!ならばハルハンドの軍と戦え!」

「…」

「えっ!?ハルハンド?邪魔をした?姫殿下どう言うことですか?」


 状況がつかめないリリム・デン・キントレスにエルネシアは状況を説明する。


「そんな…父上達は知っていながらそのようなことを…分かりました!キントレス軍の指揮をすることを許可していただけますか?」

「リリム殿どうするつもりなのだ?」

「戦います!6000の兵にどれだけ対抗できるか分かりませんが死ぬ気でトゥエンテと王族の方々を守ります!」

「分かった許可しよう!ドクトリウム卿と協力する様に!」

「ハッ」


 リリムはエルネシアに最敬礼をし軍の編成をしにいく。それを見ていたキントレス辺境伯爵とフランクはこんな絶望的な状況で勝てるわけがないと思っている。


「む、無理ですぞ!こんなの勝てませぬ!大賢者殿の転移で逃げましょうぞ!」

「そ、そうです!こ、こんなのか、勝てるわけがありません」

「ハァ〜呆れて物が言えないな!このような状況で民を置いて逃げ出すわけにはいかん!そうですよねラインハルト兄上?」

「そうだ!ここで逃げ出せば王族としてあるまじき行為だ!ユリウス、策があるのだろう?」

「ありますよ。当初の予定通りマーノの大規模魔法を一発当てます」


 それを聞きキントレス辺境伯爵は「それは対策されていると貴様が言ったはずだ」と反論するがそれを冷めた目で見つめそれに応える。


「その対策を無効にするんだよ!戦わないだったら黙ってみてろ!マーノさん頼んだ」

「分かったわよ。敵を殲滅せよ【メテオ】」


 マーノが唱えると大量の魔力と共に敵の真上に無数の隕石の魔法が放たれる。

 それに対応するため障壁をハルハンドが展開するが…


「分解」


 ユリウスが敵の障壁を無効化する。

 突如障壁が消滅し混乱に陥る敵兵達。

 その間にマーノが放った魔法が敵に当たる。


 かなり大規模な魔法で城壁に居ても衝撃波がくる。それにも負けずドクトリウム辺境伯爵は自分の陣に向かう。


 マーノは流石に大規模な魔法を放ったので自分が持っている魔結晶で魔力を回復する。


 その間ユリウスはフランクを除いたエルネシア達一行、マーノ、キッド、ノワールと共に敵後方に転移する。


 するとベインと森で待機していた者達が転移装置を使い転送されてくる。


 このときの為にユリウスが事前にルグルズ平原に大人数で転送出来る転移装置を設置している。


 到着早々レオがユリウスに状況を聞く。


「上手くいったか?」

「さぁな。クリシュナ」

『はい、愚主。敵は障壁で防げると思って油断していたのでしょう。マーノ様の一撃で2000の兵が戦闘不能と成りました。ですがさすがの剣王といいますか…立て直しが早く今にもドクトリウム兵と接敵しますが後方に少ないとは言え伏兵が現れ多少混乱してます』

「分かったばい!それじゃ行くかね、皆命大事にして戦うように!」


 ユリウスの号令と共にレオ達やブラック・ブラッティータイガー20数体が走り出し敵の後方から奇襲をかける。


 エルネシア一行もそれと同時に戦闘に加わり敵と戦う。さすがの精鋭なことはある敵兵も強くドクトリウム兵が次々に倒れていくが直ぐに立ち直る。


 ユリウスが再生魔法で味方兵を治しているから戦闘を続行できる。それに虚を突かれすきを作りそこを見逃さずドクトリウム兵がハルハンド兵を倒していく。


 ユリウスから離れた場所ではマーノがゲイリーらしき魔法師と魔法の応酬をしている。


 突如現れたブラック・ブラッティータイガー達、1体に対して集団で対応せざる得ないハルハンド兵だがそこにノアやシノ、バルと言ったシドの一族が戦闘に加わっている。


 ただでさえ苦戦する魔物達なのにそこにノア達が加わるといくら精鋭と言えど陣形を崩し始める。


 倒しても起き上がってくるドクトリウム兵に嫌気を出しているとそこに編成をしなおしたリリム率いるキントレス兵600が到着する。


 剛獣化したドクトリウム辺境伯爵が次々と兵を倒していき兵を減らす中エルネシアも負けじと敵兵を倒していた。


 その時バスターソードを持った2mある身長をした紺色の肩まである髪をした男がエルネシアの前に現れる。


「まさか我々の策がここまで無に帰すとは貴様にはここで死んでもらうぞ。エルネシア・フォン・シュナイゼル!」


 バスターソードをエルネシアに振りかざした瞬間、ユリウスが間に入りバスターソードを刀で受ける。


「ほう、これを受け止めるか…職業が刀剣士とあるがただの刀剣士ではあるまい…さては貴様だな?我々の策を潰してくれたのはっ!」


 尚も攻撃が迫る攻撃を身体強化した身体で対応するユリウス。鑑定を試みてみるがスキルなど不明だった。


「ジャック・グレ・ディカルディア…アンタが剣王か…」

「ほう、鑑定が出来るか…貴様隠蔽を持っているな」


 鍔迫り合いをしながら話す2人だがユリウスに余裕はない。自分より格上の人間で本気の殺し合い、本気を出しても勝てるかどうかと思考していると覇気が飛んでくる。


 ユリウスは後方に下がり覇気を受けても涼しい顔をしながら刀を収め抜刀の構えをする。


「ほう、私の【剣王覇気】を受けて尚そんな顔をするか…面白い!」


 余裕を見せる剣王ジャック。その表情を崩すため瞬歩を使うユリウス。


「氷刀抜刀!」


 水魔法の系統の上位である氷魔法を刀に付与して纏い瞬歩で間合いを詰めて一気に抜刀する。


 それを表情を変えずバスターソードで受け流すジャック。


「瞬歩か…そこそこやるようだな」


 一撃が効かず後退するユリウスだったがそれをバスターソードを上段の構えをしたジャックが瞬歩を使い間合いを詰め振り下ろす。


「瞬歩が使えるのは貴様だけではない!死ね!」


 ユリウスは冷静に考えこの攻撃を受け再生で治し反撃しようと考えていた。


「ユリウス!!」


 ザシュッ!


「なっ!?」


 攻撃を受けようとしたユリウスを飛ばしレオがジャックの攻撃を受けていた。傷は深く血を大量に流していた。


「「ユリウス殿!」」


 そこにドクトリウム辺境伯爵とディランが駆けつけジャックと戦闘を行う。


 ユリウスは焦りながら再生魔法をレオにかける。直ぐ様傷は癒えたが直ぐに戦闘を行える状態ではない。


「どうしてこんな真似ばするとや!!」

「命…大事に…と言ったのは…ユリウスだ…いくら再生魔法が使えても…心配になるさ…仲間だろ?」

「っ!?」


 ユリウスは自分は回復できるからどうとでもなると思っていた。まだ魔力に余裕があるし皆が無事であればそれでいいと思っていた。


 レオに諭されユリウスは己を恥じるばかりだった。自分を犠牲にしてもユリウスを助けようとしたレオの気持ちを考えていなかった。


 ドクトリウム辺境伯爵とディランが吹き飛ばされジャックがユリウスに近づく。そこに杖を持ったシドがジャックと相対する。


「チッ!【破壊王の右腕】か!この老害が!」

「お主も変わらんのう、剣王や!」


 シドとジャックの力は同等、均衡状態を保ち戦い合うのだった。




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