第23話 ドクトリウム辺境伯爵
エルネシアはこんなに強いのかと思っていた。
見た目は武芸者に見えず魔力もそこまでないので強くないと思っていた。
ユリウスはマーノに魔力のコントロールを教わっており相手を欺くため魔力を最小限に抑え込んでいるためエルネシアにそう思われても仕方ない。
「何という速さだ…」
「姫様が一方的に…」
「い、インチキだ!姫様が負けるわけがない!」
「よせフランク!正真正銘の実力だ。しかも全然本気を出されていない形でだ!」
剣を収め肩を竦め言うエルネシア。
実際ユリウスは本気を出していない使ったのは身体強化と瞬歩、隠密だけだ。
エルネシアはもしかしたら…と思う。それぐらいユリウスの実力はある。本気を出さずにエルネシアを一方的に降したのだ。本気を出せばそれこそ剣王と同格なのではと思ってしまう。
「ユリウス殿の実力は分かった。明日ウラス砦にともに行って欲しい。残した部下とも合流したいしドクトリウム辺境伯にも話しておきたい!」
「えぇ。構いませんよ」
「それでデッケンと話したいのだが…」
「お好きにどうぞ」
「じゃあ、私が案内する」
シノが名乗りを上げエルネシア一行をデッケン達が捕らわれている馬房へと案内する。
そこには「殺してくれ」と言い続けているハルハンド兵と無言で震えているデッケンが居た。
「デッケン…」
エルネシアがそう言うとデッケンはビクッと体をはねらせ声がした方へと向く。
声の主がエルネシアと分かると一安心する。
「姫様でしたか…私は、私の知る限りをあの男に話しました。一層のこと殺して下さい。楽になりたいのです!!」
殺してくれと懇願するデッケンに首を横に振るエルネシア。
「ユリウス殿が話した内容は本当か?」
「え、えぇ…どこまで聞いたか知りませんが…本当です!あ、あの男は私たちを見ただけで情報を知っていました…ですが私が話すまで拷問をし続けたのです…それも笑いながら!あの男は化け物です!!私を殺してください!私を楽にしてください!」
「そうか!なら死ね!この裏切り者が!」
フランクが抜剣しデッケンに向けて剣を振りかざそうとした時エルネシアが止める。
「待てフランク!デッケンに話してもらわければならぬ。殺すのは陛下の決断の後だ!」
「しかしコイツは裏切り者です!このまま見過ごすわけには…それに事実かどうか怪しいですし…」
「それでもだ!今はその証言を信じるしかあるまい。それが事実なら大変なことが起きる!兄上が殺されればあの【ライナック】兄上が王太子になってしまう!それだけは避けねばならん!」
「あのライナック王子殿下ですか…あの乱暴な性格ですあの方が次期王になればこの国は終わりでしょうな…」
「ライナック王子殿下は非道を行うで有名ですからね…」
「それは…そもそもその情報が誤っていた場合どうするおつもりですか!?」
エルネシアは身体をゼフ達に向け苦笑いしながら応える。
「その時は私の見る目がなかったとして、私が責任を取ろう!」
「姫様…」
「そんな…」
「そんな事信じなければ良いのです!どうせ下賤な平民とこの裏切り者のデタラメです!無視しましょう!」
「それで本当になったらどう責任を取る?フランクの実家もただでは済まさんぞ!」
「それは…」
エルネシアに言われ本当に事実であればこの国が大変なことが起きる。その責任をフランクは取れない。もし、万が一本当であればフランクの実家も…
そんな事を思考したフランクは今頃事の重大性を知り言葉が出なくなる。
「今日はこの辺にしておこう!明日も早い、ユリウス殿が用意してくれた家に行こう。何でも風呂があるらしいぞ!」
そう言いながらエルネシア一行はユリウスが用意した家に向かい一夜を過ごす。
次の日ユリウスはこの日も日の出前に起き日課の田畑を整え次の種植や田植えなどの準備をする。その際イザベラも起きており手伝っている。
日の出を迎え暫くして畑仕事を終え朝食の準備する為家に帰る途中でエルネシアが泊まる一軒家の前を通る。
すると家の前で汗を流しながら剣の素振りをするエルネシアと出会う。
「おはようございます。姫様」
「おはよう!ユリウス殿!貴殿は朝が早いのだな!」
「えぇ。そうしないと皆の食事で使う食材が手に入りませんので、こうやって田畑を耕しているのですよ!」
「何と!?ここで食べた野菜はユリウス殿が作ったものだったか…」
「それでは私は朝食を作りますのでこの辺で」
「あぁ!足止めして悪かった!」
そう言い残し家に帰り起きていたクロエと毎回来るシノとともに朝食を作り出す。
調理を終え朝食の準備をしているとエルネシア達一行が家にやってきて居間に入り切らないので広間を使い待ってもらう。
フランクが「王族、貴族を持たせるとは…これだから平民は」と言って居たが気にしない。イチイチ気にしていたら気が滅入るばかりだ。
魚の在庫がない為ホーンデビルラビットの肉を使った野菜炒めを朝食にして食事をする。
エルネシア達一行は終始美味いと言いながらご飯のおかわりをして満足していた。フランクも文句を言いながらおかわりもしていた。
食事も終え今日の行動をレオ達に説明し各々が準備に取り掛かるなかシノとイザベラが不満を募らさせていた。
「ユリウス様、私もついて行く!」
「そうです!主、私が留守番など…」
ウラス砦に連れていくのはレオ、シド、クロエ、マーノ、キッド、ノワールの4人と2匹だ。
そこにシノ達は含まれておらず不満が出る。
「今日はドクトリウム辺境伯爵に説明するだけやけん大事にならん。問題は明日やけんそれに備えとって!」
「でも…」
「ですが…」
尚も言い続ける2人をなだめ準備に取り掛かる。
準備をし終え家の前の広場でユリウス達5人と2匹、エルネシア達一行の4人とデッケン達捕虜6人が集結しマーノが転移魔法を唱える。
ユリウス達一行がマーノの転移魔法で飛んだのはウラス砦に隣接する【城塞都市ベイン】の大きく立派な領主が住む城門前だった。
城門に付くと門番の他に3人が居てエルネシアを見るやいなや走ってこちらに来る。一人頭の後ろに二本の角がありと腰にトカゲのような尻尾が出ている騎士が居た。その騎士がエルネシアに話しかける。
「姫様!ご無事で何より」
「「姫様!」」
「ディラン、ダイン、ペティー心配をかけたな」
「そうですよ!砦の兵士の協力を得て捜索していたのですから」
「「そうです!」」
「悪いな。色々と話すことがあるが先ずはドクトリウム辺境伯に話をしなければ…」
「そちらの方々は?それにコイツらは昨日の賊では?デッケンも様子がおかしいようですし…」
ディランと呼ばれた男は鋭い目線でユリウス達を見た後、賊やデッケンを見るその目はユリウス達を見た時より鋭く冷徹に見える。
「そちらの方々は我々を助けてくれたユリウス殿達だ!賊は…ハルハンドの兵だった。そしてデッケンもハルハンドの手先だったのだ」
「ハルハンドの!?…やはりデッケンは敵でしたか…」
「「デッケン!貴様!」」
今にも斬りかかる勢いでデッケンに詰め寄るダインとペティーと呼ばれた者たちだがエルネシアに止められる。
「よせ!今はそれどころではない!辺境伯に話さなければならぬ!ユリウス殿達も行こう!」
「いや。私は冒険者ギルドに用がありますので。マーノさん後よろしくね!」
「ハァッ、私!?…仕方ないわね…」
突然名前を呼ばれ驚くマーノだった。マーノは貴族と余り関わりを持とうとはしないがユリウスに言われ渋々了承する。
「本当は来てもらいたいのだが…仕方ない。こちらの話がついたらギルドに伝令をよこすのでそれに従って頂きたい!それとこの街は初めてだろうから道案内をつけよう!」
「いえ、大体は把握…」
「まぁ、そう遠慮するな!ディラン、すまんが頼めぬか?」
「はい!任せてください!」
ディランが前に出て任せろという顔をしているが内心、話を聞きたくてしょうがないがユリウス達に聞けば良いと思案し道案内を了承する。
道中人気がなかったのでディランが話を聞いてきた。いつ人が現れるかも分からないので要所だけを話すユリウス。
それを聞いたディランは王太子殿下も狙われているとは思っておらず驚き自分を同行すると意気込んでいる。
「良いのか?死ぬかもしれんぞ」
「それは困るがそうやすやすと死にはしないさ!これでもドラゴンと人のハーフでね!丈夫さだけは取り柄なんだぜ!」
と話しながら冒険者ギルドに着き冒険者登録を行う。その際銀貨1枚が必要だった。手持ちが無いため取り貯めていた魔石を売ることに。
この世界の貨幣価値は日本と比べると。
小銅貨1枚10ラル=10円
銅貨1枚100ラル=100円
大銅貨1枚1000ラル=1000円
銀貨1枚一万ラル=1万円
金貨1枚10万ラル=10万円
白金貨1枚100万ラル=100万円
売る際魔石をギルドが鑑定した所魔獄の森の物だと判明し受付は賑わうことになる。結果としてホーンデビルラビット10とジャイアント・ファングボア5、クラッシャー・ベアー2を白金貨5枚と金貨7枚、銀貨5枚で合計575万ラルとなった。
結構な大金をもらったが騎士のディランがいる為誰も近寄れず、登録はユリウス、シド、クロエそしてキッドとノワールはユリウスの従魔として登録した。
ランクは最低のFからだが魔獄の森の魔物を倒す実力者のためギルドマスターが判断するのだが本日ギルドマスターが不在のため後日となった。
レオは行方知れずとなっており生きていたことに驚かれていた。登録はそのままで活動可能となった。
事が思ったより早く終わったのでギルドの中にある酒場で待とうとしたのだがキッドとノワールが街を見たいと言い出し街を散策することに。
レオとクロエがギルドに残り伝令を待つ事になりユリウス達はディランの案内の元散策する事になった。
いろんな屋台が並んでおり串焼きを食べたのだが…
「味が塩だけとはのう…ユリウスの味が恋しいわい…」
「う〜ん…やっぱりユリウスにいちゃんのがいちばんだね」
「ウーン…オイシクナイ…」
「おいおい!これも美味いだろ!贅沢言うなよ!」
ディランがシド達に言うがシド達はユリウスの料理を食べている為物足りない。
ユリウスが収納魔法から特製の塩缶を出しシド達とディランの串焼きに振りかける。
「ユリウス特製の塩じゃ。これだけでも少しはマシになったのう!」
「やっぱりユリウスにいちゃんだね!」
「ウン!」
「塩だけでこうも変わるとは…美味いな」
そんなやり取りをしながらギルドに戻りレオやクロエにも串焼きを渡す。
食しながら待って居ると伝令がやってきて領主の城まで行くことに。
領主の城に着くとメイドに案内されながら応接室らしき所へと案内される。
そこには中央にテーブルがありそれを囲うように3人席のソファーが2つあり、奥に誕生席の様に1人席のソファーがある。
片方の3人席にはエルネシアが座り、もう片方にはマーノが座っている。ゼフ達はエルネシアの後方で立っている。
奥の一人席にはガタイの良い茶髪で短髪、立派な髭を生やしたいかにも軍人と言うような50代を超えた男性が座っていた。
ユリウスが入った瞬間物凄い殺気を向けられ反射的にユリウスも殺気を返してしまった。
その男性の後方に立つ2人の人物が汗を描きながらその男性を守るように態勢を整えるがその男性が手で静止する。
「良い。ユータス、マルクス動くでない!それよりも…儂の殺気をものともせずそれを上回る殺気で返してくるとは…面白い!」
「ドクトリウム卿。信じて貰えるか?」
「姫殿下が手も足もでないとは納得できますな!一見凡夫の様に見せていますがそうではない!儂が殺気を放った瞬間に瞬時に殺気を飛ばしいつでも反撃出るよう態勢が出来る歴戦の戦士でしょうなぁ!」
名前:リチャード・デン・ドクトリウム
種族:人族
性別:男性
年齢:56歳
職業:剛獣剣豪
スキル:【剣術】【剛獣化】【危険察知】【気配察知】【豪腕】【剛体】【体力増強】【身体強化】【迅速】【体術】etc.
称号:猛獣将軍
加護:無し
詳細:ウラス砦を守護するドクトリウム辺境伯爵。剛獣化すると大猩猩となり戦場を蹂躙する様から猛獣将軍と呼ばれている。周りから脳筋と思われがちだが政治にも精通しており、かなりのやりて。ゼファードとマルコスの父。ユリウスの事は平民だからと無碍に思っておらず逆に利用できるのではと思っている。




