第22話 狙い
「魔結晶…」
「姫様これは…」
「嘘でしょ…?」
「嘘だ!姫様平民の言う事等聞く必要ありません!信憑性にかけます!おい平民!証拠はあるのか?ゲイリー殿がそんことをするわけがない!」
魔結晶とは魔素が大量に集まり結晶化した物で主に魔力回復に使われる。かなり貴重な物で通常は魔力ポーションで回復する。
だが魔力ポーションは魔結晶に劣り大規模の戦闘時魔結晶の方が回復力が早い。
ユリウスは、一通り話した後タバコを吸い出す。
煙を吐き出し首を横に振る。
「いいや。証拠は無い!捕虜とデッケンから聞いただけだ」
フランクは立ち上がりユリウスの元に近づきその胸ぐらをつかみ殴り飛ばし激昂しながら話す。
「ふざけるな!我が領が襲われる?戯言を!この平民風情が!賊から聞いただと?そんなの信用に値しない!裏切り者の事など信用出来るか!!」
もう一度ユリウスを殴ろうと右手を振りかざす。
それをレオが止める。
「それ以上動くな!死ぬぞ!」
「何を!!ッ!?」
レオに言われ首をレオに向けようとした時首が少し切れ痛みが走る。
フランクの首や手足等に糸が巻き付けてあった。
尚レオも短剣をフランクの背中に当てておりこれ以上フランクが動けば刺すつもりだ。
エルネシア一行以外の皆が臨戦体制にはいっている。
そんな事が分からないフランクは尚も怒声を上げる。
「こんな事をしてただで済むと思うなよ!平民が貴族に逆らうと言うことがどういう意味を持つか思い知らせてやる!早く拘束を解け!」
「ここは魔獄の森の中だ。お前がどうなろうと自己責任だ!」
「そうじゃな。それにワシらなど貴族などどうでも良いからのう。喧嘩を売るなら買うぞ?」
「ユリウスさんを殴るなんて許されません!貴方が何を言おうと拘束は解きません!何なら締め付けましょうか?」
そ言うとクロエの操る糸が締め付けられる。
「グッ!」
「貴族って昔から変わらないわね。傲慢でやけにプライドだけは高い。それだけの人間がここで偉そうにしないでくれるかしら?」
「命の恩人にこんな態度かい?ずいぶん見ないうちにシュナイゼルは傲慢になったものだよ…」
「許さない!よくもユリウス様を!」
「おい待て!姉貴!」
バルの静止を無視し戦斧をフランクに向かい振りかざすシノ。
キーン!
「くっ!!物凄い力だ!だが止めて頂きたい!」
それを双剣で受け止めるエルネシア。
「命の恩人に対してこの様な態度をして申し訳ない!部下がやったことは上に立つものとして私の責任!いかな処罰も受ける!だが今は兄上の事が先決、詳細を聞かせて頂きたい!」
「姫様この様な下賤な――」
「黙れフランク!関係のない方たちがこうやって助けてくれているのだ!無碍にできん!」
「関係なくもないんですよ。それがね」
倒れたユリウスが起き上がりながらエルネシアに話しかける。ユリウスの側では2匹が心配そうに付き従っている。
そんな2匹を撫でながら傷を再生魔法で治す。
話の続きをする為皆を止める様に指示を出す。
「皆、俺の為にそんな事しなくて良いこんなバカどうでも良い!俺が仕えてる方は敵が多くてな…こんなの慣れてる」
「仕えるだと!?貴様どこの間者だ!もしやハルハンドの患者だな!!それなら納得できる!そんな誤った情報を我々に与え混乱させるつもりだな!」
「こんな自己中心な考えを持つ貴族を持つとは…姫様も苦労しますね」
「面目ない!」
ユリウスは座りながらタバコを吸う。
「姫様!コイツらはハルハンドの手先です!信用してはいけません!」
「いい加減黙らんかフランク!話が進まない!それにユリウス殿は異世界人だ!何故かは分からないがユリウス殿は信用できる!」
「異世界人!?こんな奴を信用するのですか!?」
「あぁ!だから黙っていろ!ユリウス殿頼む」
と言いながらエルネシアはフランクを元の位置に座らせ自分も座る。
「俺の調べによると王太子殿下がキントレスに訪れるのは3日後。事を起こすならその当たりかと」
「兄上の動向も分かるのか?」
「えぇ。この事に関係する者が今の所分かっているだけで数人。その者達には監視をつけているので証拠は今後取るとして…」
そこで話を区切りタバコの火を灰皿で消す。
「ハルハンドの兵は俺一人で何とかしますよ」
「「「「「「「「なっ!?」」」」」」」」
この場に居る全員が絶句する。
一人で5000の兵を何とかすると言い出すのだ、無理もない。
「ユリウス殿それは無茶だ!ウラス砦のドクトリウム辺境伯に要請しキントレス辺境伯爵領に向かおう!あそこには常備兵が5000は居る!事を話せばあの方は理解してくれる!」
「それは無理です。ウラス砦も同時に攻撃を仕掛けるつもりですから…まぁここは小競り合い程度ですがね…そもそもこんな何処の馬の骨かもわからない者の事を信じられるわけがありませんから…そこのバカのように…」
フッと苦笑いをするユリウス。
フランクは何かを言いそうになるがエルネシアに睨まれ何も言えなくなる。
そんな中異を唱える者がいる。
「ユリウス。何も一人でやる必要は無いんじゃないか?」
「そうじゃ。ユリウスが行くならばワシらも行くぞ!」
「その通りですよ。何もかも一人で抱え込まないで下さい!」
「そうね!少しは私たちを信用しなさい!」
レオ達はユリウスに頼って貰いたかった。
それはノアたちも同様で頷いている。
キッド達も悲しいのか頭をユリウスの体にこすりそれをユリウスが撫でる。
「信用しとうとよ。でもこれは俺への依頼の一つなんよ。皆を巻き込むわけにはいかん!迷惑はかけられんし…」
笑顔で答えるユリウス。
それを受けレオ達は何だそんな事かと思いやれやれと言った表情で応える。
「俺は強くなりユリウスについていくと決めている。それに勝手にしろと言ったのはお前だ!俺は勝手について行く!今の俺の強さが通用するかは分からないがな…」
「前にも言った通りワシも勝手にさせてもらうだけじゃ!それにハルハンドは気に食わんからのう!」
「迷惑だなんて思わないで下さい!もっと私たちを頼ってくれても良いんです!」
「ハァ…呆れたわ。何のためにユリウスに協力したと思ってるのよ。5000だろうが一万だろうが蹴散らしてやるわ!」
「さぁ!戦の準備をしなきゃね!」
「ユリウス様の敵は私の敵!私も戦う!」
「一食の恩って奴だ!俺も戦うぜ!」
「私も微力ながら主にお供します!」
「皆…」
皆にそう言われ言葉が出なくなるユリウス。
そこに追い打ちをかける者が。
「ぼくもたたかうよ!」
「ウン!ノワールモタタカウ」
『愚主。諦めてください!皆様方の意志は硬いようですよ』
2匹に言われると弱いユリウス。
ハァ〜ッと溜息をつき諦めた表情になりタバコを吸い出す。
「ふぅ~。分かったばい…」
仕方なく折れるユリウス。
それを黙って見ていたエルネシア一行だったがフランクが我慢しきれず物申す。
「黙って聞いていればふざけよってその話がもし、仮に事実ならば我がキントレス兵で返り討ちにしてくれるわ!貴様らの力などいらん!」
「たった1000でか?5000に?やっぱりバカだな…」
「な、何を〜!我が兵は精鋭ばかりだ」
「ハルハンドは【剣王】ってやつが出てくるみたいだぞ?それぐらい強いのか、お前の兵士は?」
「「「「なっ!?」」」」
エルネシア達は剣王の言葉聞き驚愕する。
それもそのはず剣王はハルハンドで皇帝を除き3番目に強いとされている人物。過去エルネシアはこの剣王と戦ったことがある。
結果は明白でエルネシアは手も足も出せずに負けていた時、7英傑の一人に助けられている。
「け、剣王が…無茶だ!剣王は強い!ユリウス殿がどれぐらい強いか知らないが剣王は別格だ!」
「そんなものやってみないと分からんでしょ。なんとかしますよ」
「何とかって言われてもな…勝てるのか?」
「えぇ勝ちますよ!どんな相手でものね」
「そうか…では手合わせを頼みたい!」
「「「姫様!」」」
「ユリウス殿の力がどれほどの物か確かめてみたい」
そう言うとエルネシアは止める部下を手で制止し手ほどきを願う。確かめてみたい、このユリウスが剣王に勝てるかどうかを。
「良いでしょ。ついでに姫様達が泊まる家を設置するんです。外に出ましょう」
ユリウスは外に向かうレオ達とエルネシア一行も後を追うようについて行く。ユリウスが家の側にエルネシア達が泊まる一軒家を設置する。
それをエルネシア一行が驚きながら見ていた。家が入るくらいのアイテムボックスを持って居るのかと思っていたが実際はブレスレットの異空間収納に入っているのだが。
ブレスレットの異空間収納は魔法の収納に比べて容量はかなりあり無限に近いし船と繋がっておりクリシュナが作ったものはこれに転送されている。
気を取り直しシドが審判を務めユリウスとエルネシアが距離を取り構えを取る。ユリウスは中腰になり抜刀の構え、エルネシアは双剣を抜剣し構える
いつでも良いぞとシドに両者頷き合図が来るのを待つ。
「始め!」
合図を聞きエルネシアは間合いを詰めるため慎重に動こうとした瞬間ユリウスが消え一瞬にしてエルネシアの間合いに移動した。
エルネシアは双剣をクロスし防御の姿勢を取った直後ユリウスが抜刀しエルネシアの双剣に当たる。
キーン!
エルネシアはその衝撃で身体が後退してしまう。
「クッ!瞬歩か!」
抜刀した刀で袈裟斬りをユリウスが行うがエルネシアは距離を取りそれをかわす。
態勢を取り直し今度はこっちの番だと言わんばかりに構えを取るとその場にユリウスがおらず気配が分からない。
すると背後から首にいつの間にか剣先が当てられていた。
「勝負ありですね」
「ハァ、ハァ…いつの間に…参った!」
剣を持ったまま両手を上げるエルネシア。
「そこまでじゃ!勝者ユリウス!」
シドが宣言すると試合は終わるのだった。




