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自称日本人の異世界放浪記  作者: sayi
第一章 出会い編
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第2話 日常


 日本の福岡県某所ちょっと寂れたお店がある。

 店内は、カウンターに9人座れるぐらいある。

 カウンターの通路の横には座敷がありそこには4人テーブル堀炬燵しきが4つあり、座敷だけでも約20人程は座れる広さ。

 夜は居酒屋として賑わう隠れた名店


 だが今は15時、店内はカウンターに隣接する厨房に男が一人、カウンターの真ん中に一人で座りラーメンを啜る男が一人だけ。


「おいちゃーん!替え玉針金で!」

「はいよ!」


 ドンッ!っとタオルを頭に巻いた初老のいかにも職人風の男が

 小型の調理用ボールをカウンターに座る男の前に出す。


「おっ!わかっとうね!流石!」


 と言う男、黒色のサラリーマンスーツを着ており黒のハット帽子をかぶり眼鏡を着けているが湯気でレンズが曇っているのに目の前に出されたボールをつかみ、中身をスープの入った器に入れスープを絡ませながら麺を啜る!黙々と。


 このやり取りは本日2回目

 店主もチラッと男を見るが直ぐに背を向けて作業をするがその顔は満足顔だ。


 ラーメン(替え玉)を食べ終えスープを飲み干した30代後半で黒髪の男が。


「ふぅーー! うまかー! やっぱおいちゃんのラーメンが福岡1ばい!」


 店主は背を向けたまま


「フン、そう言うのはあんただけばい」

「ふーん。そうね!お勘定おいとくよ」


 男はカウンターの器の横にお金を置き、店の出入り口に向かう


「おいちゃん、ごちそうさん」

「フン、いつでも来るとよか」


 と店主も男に言葉を返す。


 このやり取りは二人にとっていつもの事、サラリーマン風の男はこの店の常連なのだから。

 ラーメンもこの男用に用意したもの。

 このお店は、昼は定食、夜は居酒屋なのだ。

 常連でなければ、店に出さないものを普通は出したりしない。

 しかも準備中にだ。

 その位、店主にとって彼は特別な常連。

 そして彼にとってもこのお店と、店主は特別な存在。




 店を出て出入り口のすぐ側にある灰皿の近くで、煙草に火をつけ一口吸い……


「ふー。ラーメンの後の一服はよかね!やっぱ落ち着くね~」

 

 最後の一口を吸い、フ~っと吐き出しながら


「さぁて! 買い物も用事も終わったしボチボチ帰るとするかね」


 煙草を消し灰皿の中へ捨て歩みだす


 歩き出して数分後、人がいない小さな公園へと入っていく。

 その公園には最低限な設備が整っていて、公衆トイレも完備されている。

 彼は、遊具に目をくれずその公衆トイレへと入っていく目的は個室のトイレだ。

 入って直ぐに鍵は閉めず、扉に背を預け開かないようにし右手首にある時計を操作して「転送【船】」と呟いた。


 個室トイレは扉が開かれ中には誰も居らず何事もなかったかのように静寂に包まれていた。




 所変わり【船】


 そこは十畳ぐらいの広さで箱のような部屋で中央に一人用のソファーと円型のテーブルが有り、ソファー前方に正方形型の窓ガラスがあり窓の外を映していた。

 そこにスーツから甚平へと着替えた彼がソファーの後ろにあるドアから入ってきて真っ先にソファーへと座る。


「はぁ~落ち着くね~! このソファーは人を堕落させる効果があるばい! そして珈琲を飲みながら外の景色を見る! 何度みても飽きん! 地球の丸っとして綺麗なとこが!」

『愚主は元々堕落しているのですが』


 突然室内に女性のような声が響き渡る


 すると彼の目前に5㎝位の透明な球体が現れる。

 この球体は高性能AI【クリシュナ】(おも)にこの【船】を管理していている。すごく優秀で、AIなのに人間味溢れている。日本に行く時の彼の服装に対して『愚主、何故に某探偵漫画に出てくる様な、黒の組織をイメージしたんですか?その年にもなってはずかしくないんですか?』とおちょくる程である。


『大体愚主は、日本に入り浸りすぎです!』


 少し怒気を含みながら彼に近づく。


「えー!良いやん!休日なんやけん」


 そんな彼は、球体から顔を反らす。苦笑いで汗だくである。


 対しクリシュナは、呆れながら


『サボりでしょうに』

「グッ!仕方ないやん。これも見廻り!仕事の内たい!」


 図星である。だが負けじとこう言い放つが……


『愚主……太陽系は管轄外です。そもそも太陽系は、銀河連邦に加入もできない辺境の地で、愚主の管轄は銀河連邦加入国だと言うことをお忘れなく』


 クリシュナは、呆れながら正論をぶつける。


 彼の外見は30代後半、髪色は、黒髪短髪で瞳も黒。

 身長170㎝位で痩せ型、やや猫背でどこからみても、日本人中年の眼鏡おっさんにしか見えない。

 だが、これは地球用の義体。

 仕事用として別に義体がある。

 だが髪色と髪型、瞳の色が違うだけで眼鏡中年である。

 彼は銀河連邦の連邦警察に所属している。

 管轄もしっかり与えられているが、サボりを頻繁に行うので「サボり魔眼鏡」と周りから軽視されている。


「ウグッ!・・・でもさぁ~」


 彼はなお食い下がるが


『でももかかしもありません!!』


 クリシュナが更に怒気を纏い迫る。


「ハイ!すいません!!」


 これには彼も叶わずソファーからのジャンピング土下座。


『……』


 クリシュナは呆れるしかない。言っても仕方ないのだ。

 彼、本来の仕事は、別に有ることはクリシュナも理解している。

 クリシュナは、彼の精神と繋がっており彼をサポートをしながら【船】と言う名の宇宙船と彼の義体と本体の管理をこなしているのだ。


『はぁ~、で?報告の方はどうします?直ぐにでも繋ぎますが?』


 それを聞いたとたん、彼は土下座から直ぐ立ちソファーに座り直し真顔で


「嫌!あのババアに会いたくないし報告はクリシュナがしといて」


 心底嫌そうに言ってのけた。だが――


『愚主。もう繋がっています』


 ――時既に遅し!!

 クリシュナは、既に繋いでいて自身の球体の頭上に50㎝の正方形のスクリーンを出現させる。


 そこに映るのが、四十代位の着物を着て青髪長髪、翡翠色の瞳。

 眼は、つりあがり日本人の様な顔で物凄く美人である!美魔女!

 今は額に青筋を立てて口元に扇子を広げて彼を見る女性。


『ゴホン!ババアは許します!ですが、嫌!とは何です?私は貴殿の上司です!直属の!報告位するのが常識でしょうに』


 その声は、静かだが確かに怒気を少し含んでいる

 だが、彼は、どこ吹く風で真顔に


「それは、すいませんね。無事に用事は済ませていますし直接報告をする必要がないでしょうから、クリシュナより報告で十分だと判断しただけです」


 淡々と彼女に報告をする。

 その眼は冷淡で彼女を視ていた。

 それにも関わらず彼女は、先程の怒気を引っ込め慈愛のある表情で彼を見つめながら。

 

『相変わらず変わらないわね、○○』

 

 親しみ込めて本名で呼んだ。


「おい、その名は死んだ名だ!それで呼ぶなと何べん言えば分かるだ?」


 だが、彼にとっては地雷だった。

 物凄く怒気を含みながら宿敵を視るような眼で彼女を睨み付ける。


『っ!そうよね。ごめんなさい【ユリウス・グレイベン】殿。』


 モニター越しでも分かる気迫に一瞬驚くが、直ぐに慈愛があり、だが何処か哀しげな表情で、謝罪をする


「いいえ、こちらこそ申し訳ございません。

【華京院・ジン・百合花(かきょういん・ジン・ゆりか)】様」


 先程の怒気はどこえやら、直ぐ様に真顔になり謝罪し頭を深く下げる。彼【ユリウス・グレイベン】は、目前のスクリーンに映し出された人物【華京院・ジン・百合花】の直属の部下。

 

 神流樹・ゼン・百合花は、銀河連邦上層部の中でも強大な権力を保持していて周りから【冷徹智将】呼ばれ畏怖の対象である。部下であっるユリウスがこの様な態度をしては許されないのだ。普通ならば。


『頭を上げてちょうだい。ユウ殿』

「百合花様!だから――」

『ユウ殿!これは個人回線です。これぐらい許して頂戴な』

「っく……分かったよババア。」

『ハイ!お仕事の話は御仕舞い。で?日本は楽しかったですか?』


パチン!と百合花が口元に当てていた扇子を閉じ懐に入れ、満面の笑みで問いかける。


「まぁ~連邦に居るよりかは、楽ですよ」

『そう。良かったわ。このまま太陽系付近の管轄にしようかしら』

『百合花様――』

「それこそ嫌だね。今の管轄が俺としてはちょうど良いんだ。動きやすいからな。それにババアとしてもこの状態を望んでるんじゃねえの?」

『愚主……』

『ええ。私の立場的にはね。でも、個人としてはユウ殿に汚れ仕事は卒業してほしいのよ』

「へぇ~。だが断るよ。暇見つけて遊びに行くのが良いんだよ。気持ちだけ受けとく」

『そう。分かったわ。それでは、気を付けて帰ってきなさい。……クリシュナ頼んだわよ』

『了解しました、百合花様……』

『あんまりクリシュナに苦労を掛けては駄目ですよ!ユウちゃん!』


 そう言い残し、ユリウスの言葉も聴かずクリシュナの頭上に映し出していたスクリーンは消え、通信が終了したことを示していた。


「ッ!このくそババア!馴れ馴れしく呼ぶんじゃって……くそ!切りやがった!あのババア~帰ったら覚えてろ~」

『愚主……』

「うん?どげんしたん?哀しげな声ばだして。さっきの話なら気にせんで良かと!クリシュナの気にする事やなかとよ!」


 何でもない様に笑顔で話すユリウス。クリシュナに対して日頃から大変苦労を掛けている事は、理解しているのでユリウスなりの配慮である。


『いいえ、先程の「あのババア~」と言った時に珈琲がこぼれましたよ。ズボンに!』

「ナァッ?!マジやん!!」

『愚主、その年でお漏らしとは恥ずかしいですね。今どの様な気分です?その年でお漏らしした気分は?』

「この~!ポンコツAIが!煽るんやなか!……人の気も知らんくせに」

『何か?』

「何でもなか!着替えてくる!フン」


 そう言いユリウスは、足早に部屋をでていった。


 クリシュナは、テーブル付近から自身の球体を窓の近くまで浮いて移動する。


 窓付近に着くと、球体は一瞬に形を変える。

 クリシュナのいた場所には、身長150㎝程、17歳ぐらいの女の子が白のワンピースを着て立っていて、窓に右手を近づけ触れるか触れないか位で止め窓の外に移る地球を観つめる



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