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傷と痛み  作者: 石木 喬
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 ふと体のどこかに傷を見つけることがある。

 長い人生の間には忘れてしまった傷も多い。

 古傷が痛むとその傷をめぐる記憶が呼び覚まされる。

 日常的な軽傷もあれば、命に係わる重傷もある。

 傷ひとつなく人生を終える人などいないのではないだろうか。

 傷にも様々な種類がある。

 擦り傷、切り傷、打ち傷、火傷などは日常的な部類に入るだろう。

 咬み傷、刺し傷、突き傷となると自分ひとりではできにくいから人間関係の臭いがしてくる。

 挽き傷というのは今ではあまり耳にしなくなったが、ノコギリを使っていた昭和の時代にはよくあった。金づちで釘を打たずに指を打ったというのは記憶に新しいが、これは相当痛いが傷とは言えない。メンコなどと言う遊びが無くなると、思わず力が入って台まで叩いて血豆を作ったのも今は昔の物語。

 外傷という言葉はよく耳にするが内傷という言葉はあまり聞かない。西洋医学にはそのような使い方はないらしい。それならなぜあえて外傷というのかと訝しくなるのだが、東洋医学においては精神的な要因による身体の不調のことを言うらしい。西洋医療中心の近年の医療現場では忙しいあまりになかなか心のケアまで行き届かないというのが現状のようだ。

 傷は痛みを伴う。

 まれに例外もある。

 痛みを伴わずにいつの間にか傷ついている現象をかまいたちなどと言って物の怪の仕業でもあるかのような昔語りを祖父から聞いた。冬の日の冷たい風が吹くとき、気がつくと手の甲などに深い傷ができていることがある。今思うと乾燥した肌がひび割れを起こしただけなのかもしれないのだが、鎌を持ったイタチが風に乗ってやってきてスパッとやって風と共に去っていったのだろうと本気で考えていた幼い日を思い出す。

 戯れに傷と痛みの組み合わせを収集してみるとなかなか興味深いものだった。

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