君という世界。わたしという闇。
初投稿です。短編となっております。
完全な自己満ですが、お時間がある時にぜひお読みして頂けたら幸いです。
少々マイナスな内容である故、ご注意ください⚠️
「ねえ、どういうつもり?この子は誰?」
わたしの問いは宙を彷徨う。目が合わない彼との間の沈黙。耐えきれずに、家を飛び出すわたし。追いかけてくれたら、「もう絶対しない」って言ってくれたら、許そうと思った。私の前で許しを乞えば、あの女を捨てて私の元へ戻ってくれば、許そうと思った。けれども、いくら待っても、彼の足音が聞こえてくることは無かった。
顔に雨粒を感じ、空を仰ぐ。
―ぽつぽつ
次第に強くなる雨。静かな雨音は次第に激しさを纏い、私をすっぽり覆う。
雨が肌を冷やす。身体を冷やす。心まで冷やす。全てを冷やす。
涙は出なかった。そんな自分に苛立ちさえ覚える。
―帰ろう
わたしは歩き出す。
雨はどんどん激しくなり、そのどす黒さは私の心を掴んで離さなかった。
「君は何も分かっていなかった。わたしのことを何も知らなかった。全て間違っていた。勘違いしないでよ。わたしは誰のものにもなるつもりは無いよ。分かるでしょ、これはただのゲーム。信じるのはただ自分だけ。だから別にね、なんとも思ってないんだよ」
口には出せない。思ってもいないそんな強がりの言葉。ただ、わたしの胸を彷徨い、行き場を無くす。全ては君のせい。君だけの、せい。
その日を境に、何度も、何度も夢をみた。自分を自分だと認識できず、ただ彷徨うだけの真っ黒な夢。不思議と苦しくは無かった。心地良ささえ感じた。夢から覚めたくなかった。
現実の世界は、嫌いだ。みんながわたしを見てくる。君を思い出す。君から擦り付けられた痛みを思い出す。その痛みは、苦しくて、苦しくて、わたしを中から壊してゆく。
わたしの暗くて寂しい世界。そんな世界に光を灯してくれたのが君だった。君はわたしのどす黒い世界に何の躊躇も無く、入り込んだ。怖がるわたしの手を取り、笑い方を教えてくれた。次第に心が惹かれ、気づくと君に夢中になっていた。こんなにも簡単に人を愛せる自分を見つけた。躊躇い、困惑するわたしに、人を愛しても良いのだ、と教えてくれたのも君だった。わたしにとっての世界は、君だった。君だけだった。君しか、いなかった。
しかし、君はわたしをこんなにも簡単に裏切る。まるで君の世界の全てがわたしでは無かったように。受け入れられない現実がわたしを蝕む。身体を、心を、わたしを蝕む。
いつしか君の中のわたしは、風化してゆくのだろうか。想像すると、身体が引き裂かれるような憎悪感が、わたしに纏わりつく。わたしという存在が無かったかのように、君はわたしを忘れ、世界も、いつの日か、わたしを忘れる。けれどもきっとそれは、既に決まっていたことだったのだ。
私は君を責めない。なぜなら、わたしはまだ君を、愛しているから。責めることがどうしても、できない。わたしにとっての君は、全てだから。
だから、だからさ、いつかまた夢の世界で会えたらその時こそわたしを、きちんと愛してくれますか?
―世界を見渡す。わたしと世界が切り離される。味わったことのない快感が私を包み込む。
わたしがいなくなった世界は、変わらず動き続けている。わたしを、忘れて。