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第3話

   

「おーい!」

 無性に嬉しくなって、そちらに駆け寄る。

 私と同じくらいの背格好の男性らしい。彼もこちらに手を振っているのだろうか。右手を高く挙げているのが目に入った。

 さらによく観察しようと、男の方にライトを向けた瞬間。

 突然雷鳴が轟き、稲光(いなびかり)で辺りが明るくなる。

「……見たな?」

 男の呟きは小さかったけれど、私に耳にはハッキリと届いていた。

 照らし出された男の表情は、鬼のように(すさ)まじい形相。掲げた右手には、血塗(ちまみ)れのナイフを握っている。

 雷光のおかげでようやく気づいたが、男の足元にはグッタリと寝転がる人間の姿もあった。顔は見えないけれど髪の長さから判断して、おそらく女性だろう。

 男は彼女の体を跨いで、右手のナイフを向けながら、私の方へと歩み寄る。


「……ひっ!」

 声にならない声が、私の口から漏れた。

 頭では「逃げなければ!」と思うものの、恐怖で体が硬直して、全く足が動かない。

 視界の中で、男の姿がグングン大きくなって……。

 そのナイフが私の体に届く寸前。

 急にザーッと雨が降り出したかと思ったら、私の意識は暗転した。

   

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